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読書記録 2023年10~12月に読んだ本

 こんにちは、せ→る→です。
 本日は2023年10〜12月に読んだ本の感想を書いていこうと思います。あらすじ程度のネタバレあり。あくまで私個人の感想です。


「五つの季節に探偵は」逸木裕

 五つの連作短編ミステリ。

 第一話「イミテーション・ガールズ」では、探偵の父を持つ主人公・みどりが同級生から担任のことを調べてほしいと依頼を受ける。みどり自身は探偵ではないのだが、同級生から懇願され、みどりは一人で担任の調査を行うことになる。
 第二話では大学生のみどり、第三話以降は探偵事務所で働くみどりが登場します。

 面白かったです!(第四話以外は)
 探偵まがいのことをしていくうちに、だんだんと探偵というものにハマっていってしまうみどりに、ちょっとした不気味さを覚えます。ですが、誰かを傷つけるとわかっていても、真相を暴かずにはいられない彼女が私は割と好きでした。

 私がみどりを好きな部分はもう一つあって、いじめを受けている同級生が「代わりに標的になって」とみどりにお願いするシーンがあるのですが、そこでみどりはこんなセリフを言います。

自分を犠牲にしてまで人を助けるのは、無理

51ページ

 これを面と向かって言える潔さというか物怖じしない感じがとても好きでした。いじめが登場する作品で、助けた子が標的にされるパターンはよく見るのですが、自分はそこまでの善意を持っていない、自分はそこまで強くない、とちゃんと自分のことを理解しているみどりはすごいなと思います。

 いじめではなくとも、仕事を押しつけられるとか代わりにシフトに入るとか、自分だけが無理をしてまでやることなのか?と、すぐに考えられるマインドって大事だなと思います。自分がやらなきゃ!みんなを手伝ってあげなきゃ!という気持ちもすごいなとは思いますけどね。
 私は初めてバイトをしたとき、断りづらくてシフトを連日入れてしまい、めちゃくちゃ疲れたことあるので(苦笑)自分ファーストでいいと思います。

 逸木さんの「星空の16進数」という作品の中にも、みどりが登場するらしいのでまた読みたいと思います。

「京都府警あやかし課の事件簿」天花寺さやか

 web小説投稿サイトのエブリスタで連載していた作品の書籍版。舞台は京都。あやかしに関する事件を取り締まる「あやかし課」を描く。

 主人公は新人の古賀大(こがまさる)。名前は男の子っぽいですが、頭に簪を付けた女の子です。先輩の坂本塔太郎(さかもととうたろう)をはじめ、頼もしい仲間とともに事件を解決していきます。

 キャラ文芸ってほんとあやかし系多いですよね(笑)みんなあやかし大好きかよって。最近あまりあやかし系読んでいなかったので、気分転換に読んでみようかなぁと手に取ってみました。
 京都弁や実際に存在する場所、神さまなどが登場するので、京都好きや京都出身の人はより楽しいのではないかなと思います。

 結構シリーズが長いので、続きを読むかは…微妙なところですね(笑)

「嘘つきなふたり」武田綾乃

 武田さんの作品は「愛されなくても別に」「青い春を数えて」「世界が青くなったら」を読んできましたが、どれも大好きです。「嘘つきなふたり」も期待を裏切らない作品でした。

 朝日光(あさひひかり)はある日、小学生のときに転校した同級生の長谷川琴葉(はせがわことは)と再会する。流れのまま連絡先を交換して遊ぶことになった二人。
 そのとき、光の携帯に当時担任だった中山大輔(なかやまだいすけ)が亡くなったという知らせが入り、琴葉は中山を殺したのは自分だと告白する。

 琴葉の発言を嘘だと信じながら、光は彼女と一緒に逃避行のため、京都に行くことになる…というお話。

 旅行をしながら、二人が離れていた期間のことが明らかになっていきます。親が決めた将来のルートにそって勉強だけをしてきた光と、あることがきっかけで母を失った琴葉。
 性格も育った環境もまるっきり違う二人を描いているのがすごく好きでした。自分がコンプレックスに思っていることを相手はなんとも感じていないなど価値観の違いがあるし、お互いにちょっとイラッとくることもあるのに、どこか二人はお互いを求めている感じがなんとも良いのです。

 私も一番仲が良いと思っている友達とは、価値観が全然合いません(笑)でも一緒にいて楽しいしすごく楽なんですよね。

 また、旅行先のドミトリーで出会う堂場心音(どうばここね)と今井千春(いまいちはる)とのやりとりも好きです。私は人との出会いを描いている作品が好きなんだなぁと思いました。
 そのとき数時間、数日だけの関わりかもしれないけど、とっても貴重で大事な時間。何年か経って名前や顔をたとえ忘れても「そういえばあのときこんな話したな」とふとしたときに思い出すような一期一会が好き。

「マスク越しのおはよう」山本悦子

 コロナ禍の中学生たちの物語。五人の生徒視点で描かれていて、一話の「マスク歴三年」が好きです。

 主人公は荒川千里子(あらかわちりこ)。四年生の頃から風邪じゃなくてもマスクをつけるようになり、先生からもマスク依存症の子と言われる。今までは自分だけがマスクをしていたがために注目されていたのが、コロナが流行り、みんなもマスクをすることに「夢みたい!」と喜びます。

なんか、ホッとした。(中略)
マスクってすごい。魔法のアイテムみたい。

6ページ

 千里子がマスクをつけたときの気持ちが上記の部分です。めっちゃわかる!と思いました。私もマスク好きです。顔を覆っていることで、謎の安心感があるというか。自分らしくいられるというか。
 千里子のように一年中つけていたわけではないですが、インフルが流行りだす11月ごろから新年度になるまではマスクをつけていることが多かったです。

 でも卒業式とか面接とか、そういう場面だと絶対、外してくださいって言われることが多くてすごく嫌だなって思ってました(笑)良いじゃん別にマスクしてたって。

 三話の「風に吹かれて」はあんまり好きじゃなかったですが…(笑)全体を通して面白く読めました。

「病弱探偵」岡崎琢磨

 病弱な貫地谷マイ(かんじやまい)と健康な山名井ゲンキ(やまないげんき)、幼なじみ二人が日常の謎を解いていくライトミステリ。面白かったです!6編収録されています。

 1話の「夏風邪と《消えた万引き》の謎」と5話の「インフルエンザと《借りさせられた図書》の謎」この二つが特に好きです。

 1話は、ゲンキの先輩である清原サヤ(きよはらさや)が本屋で万引きを目撃し、その証拠写真を撮ったのにも関わらず、店主に確認すると、店の在庫は合っているという不思議な謎。
 ゲンキは夏風邪で休んでいるマイにその出来事を話し、マイが謎を解決する、という展開。情報集めや真相を伝える役目をゲンキが担い、マイが謎を解くというバディの構図が個人的には良きです。二人のやりとりも軽い感じで、明るい気持ちで読めました。

 5話は、図書室にある本が五人の生徒によって途切れることなく借りられているという謎。しかもその五人は借りていないと証言している。

 謎を解くだけでなく、風邪や病気に関する知識もサラッと書かれているので「へー!」と勉強になりました。私は滅多に風邪を引かないのですが、最近体調を崩して熱も出たので、謎解きパートだけでなく病気に関する部分も楽しく読めて、面白かったです。

「やわらかい砂のうえ」寺地はるな

 主人公・万智子(まちこ)は、税理士事務所で税理士の補助の仕事をしていた。あるとき、『クチュリエ―ル・セルクル』という会社に書類を届けにいき、オーナーである了子(りょうこ)から、アルバイトという形で仕事の手伝いをしてほしいと頼まれる。
 了子を通じてできた新しい人との出会いを通し、万智子が成長していく物語。

 とっても好き。寺地さんの作品、ほんと好き(n回目)。

 この作品の色々な方の感想を読むと、万智子が面倒くさい、と書かれているものが多いです。でも私はそこまで面倒くさいと感じませんでした。たぶん似ているところがあるから。
 誰かの発言に対して、今のはどういう意図で言ったんだろう?とか。この返しで良かったのかな?とか。延々と頭の中で反省会(?)しているところがすごく共感でした。

 特に一番好きだったのが、料理できる?と聞かれて答えに悩む姿。なにをもって『できる』と表現するのか、ずっと考えている万智子にわかるなぁと思いました。
 例えば、炒めて塩コショウ振って完成するようなものは料理と呼べるのか?と。どこから作ったら料理と呼べるんでしょうか(笑)

 作中では万智子がこのセリフを恋人から言われてるのですが、その恋人は料理をしないのだという。万智子は、自分ができないのになぜそれを相手に要求するの?と、これまたモヤモヤしていくのです。
 私も異性から料理する?と聞かれたことありますが、それ聞いてどうすんの?とは思いましたね(笑)

 こういうちょっとしたことに引っかかりを覚えるところが万智子が面倒くさいと言われる所以なのでしょうが、それを言うと私も面倒くさい人間ということになりますね…!

 万智子に共感するところがたくさんあるからこそ、彼女が成長していく様子にすごく元気をもらえるというか、読んでいて面白いなと感じます。
 読後感も爽やかでとっても好きでした。

「天秤の護り人」安澄加奈

 面白かったです!医療ものはあまり読まないので新鮮でした。今作は医療従事者の中でも薬剤師たちのお話です。

 病院薬剤師として働く五十嵐善(いがらしぜん)は、幼いころから未来で起こる事故や事件が視えるという不思議な力を持っていた。どんなにその未来を回避しようと奮闘しても、絶対にそれは起こってしまう。善は先輩の武原朝希(たけはらあさき)と一緒に、苦しむ人たちのために行動する…

 善が持つ未来視の力を超能力と捉えて読んでも面白いのですが、作中で医学的に解説しているシーンが私は特に好きでした。実際にそういう人がいるのかはわかりませんが、いてもおかしくないのだと思うと、人間って面白いなと感じます。

 それに、未来視の力を使って回避するお話は今まで見てきましたが、絶対に起こってしまうという展開も胸が苦しくなりますが、面白かったです。
 どんなに先回りして行動しても回避できず、悩み苦しむ善。たとえ一番にその現場に居合わせても彼は医者ではないため、直接の処置ができないのです。
 幼いころから何度も人が苦しむ声を誰よりも早く聞き、それで助けられた人もいるけれど、助けられなかった人もたくさんいる。どんな場面に遭遇しても、助けることを決して諦めない善がとてもかっこよかったです。

 こういうお仕事小説はやっぱり良いですね。頑張っている人を見るのはすごく元気をもらえます。
 また、ミステリ要素もあるので後半にいくにつれてハラハラしました。

 善と朝希の先輩後輩の関係性もものすごく好きです。楽しかった!

「カビンくんとドンマちゃん」加藤路瑛

 小説を読めない期間が続いてしまったとき、手に取った一冊。本作のイラストを担当している中村至宏さんのイラストが元々好きで、中村さんのX(Twitter)を見て、この本の存在を知りました。

 本作は、刺激に敏感な感覚過敏と刺激に鈍感な感覚鈍麻について書かれています。
 カビンくんとドンマちゃんという二人のキャラクターのショートストーリーをまじえながら、感覚過敏や感覚鈍麻の人が感じている世界のことを解説していて、とてもわかりやすいし面白かったです。

 私は感覚過敏とまではいきませんが、刺激には敏感な方です。特に音と匂い。大きな音とか甲高い音が苦手。香水の匂いとか制汗スプレーの臭いが苦手。なのでライブや電車も苦手です。
 11月に文学フリマに行きましたが、東京の電車は人が多くて色々な匂いが充満していました。もうキツすぎる(笑)あちこちから香水の匂いがして地獄でした。

 本作の中でカビンくんが、ニオイのしない世界で暮らしたいと言っているシーンがあって、わかる〜と思いました。無香料の商品が安心します。

 それから、この本を読んでびっくりしたのが、著者の加藤さんが高校3年生だということ。12歳で起業したそうです。ひぇ〜!!!すごいや。私が12歳のときなんて外で走り回ってましたもん(笑)

「サエズリ図書館のワルツさん」紅玉いづき

 2012年に刊行された本の文庫版。
 紙の本が貴重になった世界のお話で、本は中古車よりも高価なものになっている。

「出会おうとしないと、もう会えないもんなんだ。本は」

316ページ

 そんな近未来の物語。

 最初は独特な文章に違和感がすごかったのですが、読み進めるとそれほど気にならなくなり、とても楽しく読めました。独特な文章だなと感じたところは、登場人物を作中で「さん」付けしていること。一人称の作品であれば自然なことですが、この作品は三人称です。
 〇〇さんは~した。みたいな。初めて読んだ文体(?)だったので慣れるまで大変でした。

 本にまつわる小説はやっぱり良いですね(n回目)。タイトルにもなっているワルツさんの本への想いがとにかくすごい。どこまでも本を愛していて、本が盗まれようものならどこまでも連れ戻しに行く。

 本が、一時でいい、ちょっとでもいい。不安と恐怖を紛らわせる、救いになればいいなって思います。
 だって、もともと、そういうものでしょう?
 本を読んで、ここではないどこかに行くってこと。遠くまで飛ぶってこと。

135ページ

 それにしても、表紙がとても可愛い。

「安吾先輩は解読したい」三川三

 旧校舎で暗号屋を営む宇徳安吾(うとくあんご)。鳥羽華子(とばはなこ)は、風紀委員の仕事として安吾を旧校舎から退去させるために奮闘するが…?
 web小説投稿サイトカクヨムで連載されていた作品の書籍版です。

 うーん、個人的には微妙でした(笑)謎解きは面白いんですけど、飄々としている男子と優等生な女子のコンビって学園ものだと多い気がするので、なんだかどこかで読んだことあるなぁって印象を受けちゃいました。

「その日、朱音は空を飛んだ」武田綾乃

 はぁ…もう武田さんのファンです。もうダメです。めちゃくちゃ面白かったです。

 川崎朱音(かわさきあかね)が屋上から自殺する場面から物語は始まる。その後、朱音の幼馴染・高野純佳(こうのすみか)やクラスメイトの夏川莉苑(なつかわりおん)、彼氏の中澤博(なかざわひろし)など6人の生徒視点でそれぞれ描かれていく。

 いじめ?家庭の問題?悩み?
 自殺すると周りは必ずと言っていいほどこれらのことを考えます。私だって自殺のニュースを見たら、いじめかなぁと漠然と思ってしまうので。

 6人の生徒たちの学校生活を通して、朱音という人物像がどんどん浮かび上がっていきます。正直私は苦手なタイプ。どの子もめちゃくちゃリアルに描かれていて恐ろしいほどです。ゾクゾクします。

 私が特に好きだったのは莉苑と、朱音のクラスメイトである桐ケ谷美月(きりがやみづき)。莉苑は誰よりも冷静で誰よりも怖い(笑)でもそこがすんごく私は好きです。どうすれば自分に得があり、多くの人にもメリットあるかを瞬時に考えられるその判断力と行動力。たまらん。
 美月視点の章はないのですが、とっても欠かせない人物です。周りが自分のことをどう思っているかをたぶん一番理解しているんじゃないかなと思います。話し方にちょっと棘があるけど、すごく良かった。

 女の子特有のあのドロドロ感やばいね(語彙力)。クラスのカーストの話だったり、グループ内の立ち位置の話だったり、陰口とか。いや、リアルすぎるんよ!
 基本私は爽やかな作品が大好きですが、こういった闇深い作品も楽しいですね。自殺シーンから始まる作品とは思えないほど、どこか爽快感も感じてしまうラストがたまらなかったです。

 超面白かった。刺さりまくりです。

「夜明けのすべて」瀬尾まいこ

 良い~すっごく良かったです!

 来年映画が公開されると知って、原作を読んでみました。とても好き。上手く言葉にできないけどとても好き。

 PMSの藤沢美紗とパニック障害の山添孝俊、友だちでも恋人でもないただの会社の同僚、二人の視点が交互に描かれる。

「PMSとパニック障害って、しんどさも苦しさもそれに伴うものもあまりに違うのになと。ふと思っただけです」
「そっか。病気にもランクがあったんだね。PMSはまだまだってとこかな」

54ページ

 上記の二人の会話がすごく印象に残りました。
 しんどさってテストの点数みたいにわかりやすい数字で表せないじゃないですか。人によってしんどさの許容量も違うし、なにをしんどいと思うのかも違う。だけど人と比べて自分の方が辛いとか思ってしまう気持ち、すごくわかる。

 私は特に忙しさを人と比べる人が苦手です。大学のとき、「私は兼サーしてるから忙しいんだよね」「バイトが忙しくて課題してる時間ない」とか言っている人によく「あなたは暇でしょ?」「時間あっていいね」的なことを言われていました。
 普通にうざかったですね(言葉が悪い)

 ちょっと話がそれました。
 似ているけれどどこか違う二人、違うけれどどこか似てる二人。距離が近すぎないからこそ、二人が自分らしくいられる姿がとても好きでした。会話に思わず笑ったり、変なことしてるなぁと思ったり。

 あっという間に読み終わってしまいました。もっと読みたかった。

「黒蝶貝のピアス」砂村かいり

 元アイドルで現在はデザイン会社の社長である菜里子(なりこ)とアイドル時代の彼女に憧れて芸能界を目指し、のちに転職して菜里子の会社に就職する環(たまき)、二人の視点を交互に描いていく。

 たぶん好きだろうなぁと思って読み始めたら、はい。好きでした(笑)なにが好きって作風ですね。メイン二人はあんまり好きにはなれませんでしたが、こういうやわらかい感じの作品、文体?すごく好みです。

 家族、友だち、恋人、同僚、色々な人との距離のはかり方がテーマにあるのかな?と個人的に感じました。前に進めたと思ったらまた傷ついて立ち止まって悩んで。その繰り返し。
 ところどころ共感できる部分があって「あ~わかる!」と思いました。

臨機応変とは、なんて都合のいい言葉なんだろう?

80ページ

 上記は特に好きだった一文です。小学生のときに先生たちが臨機応変を多用していたんですよね。そのときから臨機応変という言葉が苦手でした。
 状況に応じて判断し、行動する。でもそれが誰かにとって迷惑な行為だったら?誰かを特別扱いすることにならない?誰かの仕事を増やしてない?それで失敗したら?怒られないかな?って色々思ってしまうんです。

 だから私は臨機応変という言葉がずっと苦手です。

 この作品の中で唯一好きだなって感じたキャラクターは、環の恋人の亨輔(きょうすけ)。なにも考えていないようで以外とちゃんとしているところがすごく良いなって思いました。環のこと好きなんだな、大事にしてるんだなって伝わってきてなんかすごく嬉しくなりました。

 初読み作家さんの作品でした。砂村さんは、web小説投稿サイトカクヨムのコンテストで二作同時に特別賞を受賞し、デビューした作家さんです。web小説からのデビューはやはりラノベ系が多いと思うので、こういった文芸作品書かれる方がもっと出てきたら嬉しいなと思いました。
 砂村さんの他作品もまた読んでみたいです。

「シタマチ・レイクサイド・ロード」濱野京子

 湯浅希和子(ゆあさきわこ)は、友だちの坂本楓香(さかもとふうか)に誘われて文芸部に所属している。読書は好きだが創作欲のない希和子は、自ら作品を生み出す仲間や創作意欲の強い新入部員にだんだん引け目を感じていく。
 自分がやりたいこと、夢中になれることはなんだろうと悩む姿が描かれる。

 一年生に村岡絵茉(むらおかえま)という子が登場するのですが、私はとっても苦手なタイプ……はっきり言って嫌い(笑)
 先輩のことを敬えとは思わないけど、生意気な態度とか陰口とかすんごくイライラしました。こんな後輩絶対イヤです。

 児童書なのでスラスラ読めました。好みかと聞かれると……そうでもなかったです。

「君の地球が平になりますように」斜線堂有紀

 五つの歪な愛の物語。斜線堂有紀さんのお名前は知っていましたが、読むのは初です。地獄のような恋愛、と言われていたので、どちらかというと爽やか恋愛好きの私は読むのを躊躇していました(笑)

 なのですが!読み始めたらまあ面白い。超面白い。

 全編面白かったです。共感はしないですが、気持ちは理解できるんです。
 表題作では陰謀論にハマった彼氏に彼女がすごく合わせた生活(水道水は毒があるから白湯しか飲まない、みたいな)を送るのですが…自分だけが彼のことをわかってあげられるという優越感に浸る感じ、感じたことはありませんがわかるなぁと思いました。

 地下アイドルの子、結婚したくない彼氏を持つ子、ホストに貢ぐ子…いや…しんど…と思いながらも、読んでいると楽しくなっちゃうんですよね。しんどいって主人公たちもわかっているはずなのに、やめられない感じ。この歪んだ愛がたまらんのです。

 今作よりも前に発売された「愛じゃないならこれは何」も恋愛×地獄を描いた作品みたいなので、また読みたいと思います。

 以上、2023年10~12月に読んだ本の紹介と感想でした。この三ヶ月は読書したくない時間があってあまりたくさん読めなかったです…残念。
 感想には書きませんでしたが、森沢明夫著の「プロだけが知っている小説の書き方」やAKR著のコミックエッセイ「黒猫ろんと暮らしたら」も読みました。

 来年は漫画の感想も一緒に書こうかな、と考え中です。漫画はネットで読むことが多く、あんまり買わないんですけど。

 2023年、微妙な作品にも面白い作品にもたくさん出合えました。また来年も素敵な作品と出合えることを願って。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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