視野が狭くなる状況
考え方とか興味とかの視野が狭くなることさえ防げばたいていは楽しくなってくるんじゃないかと最近特に思う。そもそも人類は子孫が増えやすい種なので、ずっと同じ環境にいたら干上がってしまう。
したがって、変化や未知のものを恐れず興味としてとらえられる人間が生き残り、そうでないものは死んでいっただろうから、そうやって淘汰された子孫である我々には遺伝的に変化や未知を好む性質があるはずである。
ポリネシア諸島など太平洋のど真ん中になぜ人間がいるのか考えてみてもらいたい。そうした島々は大陸とつながっていた時代がないのに人がいる。島で独自に人類が進化したとは思えないので、渡ってきたことになる。
海図もない航海技術もあやしい時代だったろうから、そうとう多くの人々が犠牲になったんだろう。もちろん、元いた場所を他の民族に追われたり、病気のまん延や気候変動でやむなく危険な旅をしたのかもしれない。
とはいえ、ほぼ死を覚悟して家族ごと危険な旅に出るというのは人類の強さであり、地球上でここまで繁殖した理由の大きな部分を占めるに違いない。人類は視野が広く、未知のものに恐怖ではなく興味を感じる、そういう性質があるんだと思う。
したがって、人間にとって視野が狭く保守的になる状態というのは不健康なんじゃないか、好ましくないので繰り返さないために過去に陥った視野狭窄の経験をまとめてみた。
肩書や経歴
つい最近までこれでホントに視野が狭かった。自分は博士号を持っているからこんな扱いを受けるべきではないとか、国のカネで海外まで行ったのにとか、自分は本来もっと高いとこにいるはずなのに、と自らみじめになっていた。
もちろん、あまりに不当な扱いというのはあった。しかし、肩書や経歴がその状況から救ってくれることはない。だってそれらは過去の話だからその時起こっている問題に手を貸してはくれない。
酒
おれは不思議とギャンブル依存やセックス依存にはならなかった。カネがなかったしモテなかったからかもしれないけどね。その点、酒は時代とともに安く強力になっている。
一時期やめる決心をして、いまは時々酒を飲んでいるが、おれをアル中のどん底へ導いたストゼロとその仲間たちだけはいまでも一切手を出さない。泥酔してても絶対買わないんだからずいぶん骨身にしみたんだろう。
酒で起こる視野狭窄はホントに抜けづらかった。飲んじゃえばマヒしちゃって判断力が失われるし時間もすぐに経ってしまう。おまけに時々寝るもんだからあっという間に一日が酒でつぶれる。
気が付くと今まで興味のあったことほとんどから興味がうせ、酒のことばっか考えて飲むために働いてるような状態だった。
最終的には飲んでも酔わなくなった。楽しくならないというか。それでやめた。
ネット
いうほど没頭していないがこれにも精神をむしばまれた時期があった。
インターネットのたちの悪いところは、「いちおうは世界とつながっている」ということだと思う。冒頭で述べたとおり、人間は遺伝的に未知のものに触れたいという欲求がある。ガチにずっとひきこもるのは案外不安。
だけどインターネットは世界とつながってることになってるので、その不安をごまかしてくれる。
しかし現実は違う。インターネット上で触れられる情報量は膨大なので自分で選ばねばならない。選択に選択を重ねないと人間の処理能力でどうにかできる情報量にはならない。
その結果、結局自分が知ってるとかもともと好きとかそういった周辺知識しかやってこなくなって気づけばなんら目新しいものはなくなっている。酒と相まって、となると大変だ。
風俗
まあ基本的に女の子大好きなんで軽くはまった時期があった。
基本的に万単位のカネがかかるのにムリして遊んだ時期があった。仕事もうまくいってなかったし家族ともうまくいってなかった。しかし考えてみれば万単位のカネってのは大金だ。
大金なんで他の使い方が相当いくらでもある。しかし視野狭窄に陥ってしまっているとその「ほかの使い道」ってやつを忘れてしまう。お姉ちゃんの口コミを書くことが価値のあることだと勘違いしてしまったりする。
気づけば上等なレンズが買えるくらいのカネを半月で使ったこともあった。
で、「これ、あのレンズ買えるカネじゃん」と気付いてほとんど遊ばなくなった。まあ、いまでもたまにはいいかなと思ってるけど。
すべての視野狭窄に共通したこと
おれがこれまでなんらかの視野狭窄に陥ったときすべてに共通していたのは、そのとき充実していると思えていなかったこと。理由は様々だけどそこに尽きると思う。楽しくなかったと言い換えてもいい。
楽しくないから元気がなくて、未知を探究する気力がない。しかし人間なので未知っぽいなにか刺激が欲しいわけで、そのためには狭い世界に閉じこもって大したこともない刺激で満足することを好むようになる。
こりゃダメだよね。
いまは数々の幸運と周囲の人々の助けのおかげで大変充実している。酒もネットもお姉ちゃんもほどほどでいい。
ただし、油断しちゃあいけないなと肝に銘じてる。充実ってのはほぼ常に新しい刺激なり情報に触れていて、それらが多様であるためマヒしないという、けっこうなエネルギーが求められる状態なんだと思う。
だから今後もきっと楽にはならない。しかしこの充実を手放したいとも思わない。大変だけど人生半分以上過ぎて死ぬことを意識するようになった段階だけど、いいことに気づけたなあと思ってる。
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