限りなく静かに叫ぶ

 世界はなかなかにジレンマに満ちている。
 
 どこまでも身勝手な僕の正義感とやらに基づいた話なのだけれど、誰かを思いやることは、思いやることだけで完結している。
 
 僕は、声高に何かを主張したり、唾を飛ばしながら自分の正義を押し付けたりすることを嫌悪する。「違和感を感じる」とキーを叩いたのだが、逃げ腰を感じたので「嫌悪」という言葉をここでは愛することにする。

 差別、ハラスメント、コンプライアンス、いじめ、人種、ええっと…せとら。
 全員ではなくとも多くの人がそれぞれに色々に考えてると思うのだ。それぞれのいろいろの正義に照らし合わせて、時には倫理とは何ぞや、などと訳も分からなくなるほどに考えていると思うのだ。

 そして「私はこう思います」とか「僕もそう思います」とか「私は違うと思います」とか言ったり言わなかったりするのだけれど、「言わなかったり」に注目することができないのだ。だって言ってないのだから。

 もちろん何の言うべき思いがないから言わないということもあるだろうけれど、「主張することこそが自分の正義を裏切ってしまう場合」というものも確実に存在する。
 なのに主張しないことが主張なのだから一般的に世界にはその主張は反映されない。大切な一票なのにな…。

 そしておそらく僕が今日何を主張したいのかすら多くの人に届くことはないのだろう。それが僕の望むことであり望まないことである。
 
 世界に満ちたジレンマの割と大きな部分を引き受けたつもりになって、そろそろバーボンに抱かれる時間。
 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?