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The Entrepreneur #1 プロノバ・岡島悦子氏 ~新時代のマネジメントに挑むあなたに伝えたいこと~


セプテーニグループは「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」というミッションを掲げています。

 この社内イベント”The Entrepreneur”は、社外で活躍されるアントレプレナーからの学びを通じ、セプテーニグループに所属するひとりひとりがそれぞれの「アントレプレナーシップ」について考えられる場をつくりたい、と企画されました。

 今回は、本イベントの様子をイベントレポートとしてお伝えいたします。

 記念すべき一回目にお呼びしたアントレプレナーは、株式会社プロノバ代表取締役社長 岡島悦子さんです。

 セプテーニ・ホールディングスの社外取締役でもある岡島さんが考えるアントレプレナーシップとは?

 前半は、岡島さんより「リーダーシップとマネジメント」をテーマに講演いただき、後半には参加社員とともに、テーマに沿った内容でミニワークショップを実施しました。

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岡島 悦子 氏
株式会社プロノバ 代表取締役社長
三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
2002年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画、2005年より代表取締役。
2007年、プロノバ設立、代表取締役就任。
2014年よりアステラス製薬株式会社 社外取締役(退任)、株式会社丸井グループ 社外取締役。
2015年よりランサーズ株式会社 社外取締役、株式会社セプテーニ・ホールディングス 社外取締役。
2016年より株式会社リンクアンドモチベーション 社外取締役。
2018年より株式会社ヤプリ、株式会社FiNC Technologies、株式会社ユーグレナ 社外取締役。
2019年より株式会社マネーフォワード 社外取締役。
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。成長ステージに合致した経営チーム組成のための「経営チーム診断/強化コンサルティングサービス」を提供。


1.リーダーシップの型が変わった?


 これまでの「リーダーシップ」といえば、自ら先頭に立ち、ビジョンという旗を振り、その方向にメンバーを引っ張っていくものでした。これらは「カリスマ型リーダーシップ」と言われ、環境変化に応じて戦略の変更を決定し、推し進めるために人と組織を動かす能力、すなわち「変革能力」が重要と考えられてきました。

 ところが未来のことが予測しにくいVUCA時代の今、ビジョンをつくることすら困難である中で、これからのリーダーシップに求められる能力が変わりつつあります。

 確実にシンギュラリティが近づいてきている中で、変化はもはやコントロールできるものではありません。まずリーダーは、「正確性よりも納得性を伴った大きな方向性のみを決め(メイクセンス理論)、具体的に何を目指すべきかというビジョンは、メンバーや顧客とともにつくっていくべきである」というスタンスを持つことが重要となってきたのです。

 今、世界では以下のようなことが言われています。

・2050年までに日本の100歳以上の人口が100万人を突破
・2007年に日本で生まれた子供の半分は107年以上生きる
・2016年に50歳未満のわたしたちは100年以上生きる


 さらに2011年度のアメリカの小学校入学者のうち65%は今存在しない職業に就く(※ 1)と言われ、そして現在日本企業にある仕事のうち49%はAI化する(※ 2)とも。
(※ 1)2011/8 デューク大学Cathy Davidson N.Y.TIMES記事より
(※ 2)2016年 野村総研試算

 もはや環境の変化により、ワークスタイルが変わることは必至。そして、同じように我々も変化していかなければいけないのです。もし去年と同じことを今もやっているという人がいたら、それは「後退」していると同じことだと思ってください。

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2.意思決定の場数をとにかく増やす

 一方で、みなさんのような若い人にチャンスが多くなるということも事実です。

 恐らく年功序列は早々になくなり、意欲と能力が高い人にどんどんチャンスが与えられるような時代へ変化していきます。みなさんにとっては、未曾有の大チャンス時代と捉えたほうがいい。

 今後はデジタル革命の主戦場。経営の意思決定に対するテクノロジーの影響度はとても大きくなります。経営の複雑度が増し、不確定な状況下での意思決定の必要性は高まり、非連続に成長し続けなければならない。そのために、企業は10年後の会社を引っ張っていく経営トップの候補を戦略的に輩出していく必要があるのです。

 その中でみなさんがすべきことは何か。「意思決定の場数をたくさん踏むこと」です。

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3.入社後も価値を高め続けるために


 昨今、様々な企業で課題となっていますが、優秀な人材が入社したにもかかわらず、自部署のことだけを考える間にどんどん視野が狭くなり、尖っていた部分が丸くなってしまう、そしてそうした社員が管理職に上がっていくと、「うちの会社って、こういうところが駄目だよね」とダメ出しするような人材になることがあります。

 こういった社員の問題点は、ダメ出しだけをして提案をしないこと。完全なる他責型人材になってしまっているところが問題なのです。そうならないために、優秀な人材をどんどん役職に抜擢し、早期段階で後継者育成(=Succession Planning)をしていくことが重要になってきます。

 さらには、人材価値にも課題が出てきています。これまでは社歴が長くなれば社内での市場価値が高まり、比例して社外での市場価値も高まるモデルだったかと思いますが、デジタルシフトのような様々な変化が進む中で、社内と社外の市場価値は比例しないようになってきています。

 そうなる中でみなさんは何をやっていかなければいけないかというと、「イノベーション」です。正確には「イノベーションを担うリーダーシップ」を身につける必要があるのです。

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4.イノベーションを担うリーダーシップとは?


 イノベーションにも色々な種類があり、みなさんが良くご存知なのは、生産性を上げていくために改善を繰り返す「持続的イノベーション」だと思いますが、これだけだと新しい収益の柱は生まれない。新しい収益の柱を生むために何が必要かというと、ビジネスモデルや産業構造を変えるような「破壊的イノベーション」。この「破壊的イノベーション」がないと、企業は非連続の成長ができないのです。

 「持続的イノベーション」に必要とされるものは、課題を因数分解して特定し、論理性や合理性が高い答えを導き出し、実行にうつすことでした。それに対し「破壊的イノベーション」で必要とされるものは、「直感」や「ひらめき」、「おもしろさ」。こういったものです。

 問題は、この「直感」や「ひらめき」は教えられるスキルではない、ということ。ただし、センスかと問われるとそうでもない。経験や意思決定の場数を踏む中で身につくことがあるのです。ということは、やはり数をこなさなければいけないですよね。

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5.「カリスマ型リーダーシップ」から「羊飼い型リーダーシップ」へ


 ここで先程のリーダーシップの話に戻ると、まさに今、上意下達の「カリスマ型リーダーシップ」から、異能なメンバーを背後から指揮する「羊飼い型リーダーシップ」へ変わってきています。これからのイノベーションは、多様な機能を持つ、もっとも優秀な人たちがフロントで顧客と対峙し、新しい価値を共創することで生まれてきます。そして、ここでのリーダーの役割は「徹底的な環境整備」と「納得性のある方向性」を決めること。優秀で、異能なメンバーたちがイノベーションを起こしやすい環境をつくることこそが、リーダーの仕事です。

 このときに一番難しいとされるのは、「クリエイティブ・アブレーション」と言われる創造的な摩擦を起こすことです。ただの仲良しクラブではなく、プロとしてリスペクトし合えるしっかりとした「ヒト」同士の信頼関係のもと、「コト」について思いっきり意見をぶつけ合う。そうやって創造的に摩擦を起こすことで、異能なメンバー同士の「天才の一片」のコラボレーションや組織イノベーションが起きるのです。

 さらにもう一つ難しいのは「イノベーション・リーダーのパラドックス」と言われるもの。組織の中で、先程のクリエイティブ・アブレーションを繰り返していくと、あまりにメンバーが喧々諤々とやり合うことでアイディアが広がり過ぎてしまい、なかなか次へ進んでいけないということが起きてきます。どこかでリーダーが、その対話を切って、粗くても良いのでアイディアを形にして顧客に見せ、世の中へプロトタイプとして提供し、仮説検証していくという判断をしなければいけない。

 そのため、リーダーの中では「開放」と「収束」を行き来しなければいけない。どこまで集団で動き、どこから個人に任せるのか。学習と成果をどのタイミングで切り替えるのか。どこまではトップダウンで指示し、どこからは現場主義で動くのか。この判断タイミングがもっとも難しい部分であり、その能力こそがリーダーを形づくる大きな要素となります。

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6.変革を起こしていく人材へ、そして変化の先頭へ


2025年には、全てのセプテーニグループのメンバーが、「自分の頭で答えのない世界で挑戦し、強みを活かして変革を起こしていく人材」になっていてほしい。

そのために求められる10の資質は以下と言われています。

1.変化抽出力
2.素直さ、のびしろ
3.自己効力感
4.タグの自己認識と流通
5.課題設定力、先見性
6.多様性受容力
7.越境力、領域をつなぐ力
8.共感力、チャーミングさ
9.機会提供力、コーチング力
10.意思決定力、実行力

 この中でも特に必要といわれているのは「自己効力感」。なぜかというと、今後、上司も含め、社内の誰もがやったことのないことにチャレンジするしかない、という局面が多くなるはずだから。そんな局面に出会ったときに、根拠がなくても「私にならできるかも」という、未来の自分への自信を持てるようになって欲しいのです。

 改めて、今日みなさんに覚えておいてもらえると嬉しいのは、以下3つ。
「ポジションが人をつくる」
「修羅場は成長の母である」
「なるべく早く多くの打席にたつ」

 そして、みなさんぜひ生涯に渡って「変身しつづける覚悟」を持ってください。変身しつづける力を身につけることを意識し、ぜひ変化の先頭に立ってください。

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7.ミニワークショップ


 後半には、セプテーニグループにてコーポレートデザインを担当するサインコサイン代表・加来のファシリテーションのもと、「明日につながるリーダーシップを考える」というテーマでミニワークショップを実施しました。

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 以下の設問を通し、前半の講演内容と自分の業務を照らし合わせた内容を社員同士で共有しあい、さらに理解を深めます。

Q.今の自分の業務における相反する「ジレンマ」を考えてみよう。
Q.「できていないけど、やるべきこと」をどうすれば実行できるのか?なるべく「コントロール可能な資源を超越」して考えてみよう。

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自分の役割はもちろん、所属する部署や会社を超え、セプテーニグループを横断した形で意見し合うことで、思わぬひらめきが生まれ、そこからまた実務につながりそうなヒントを得るなど、各所で小さなクリエイティブ・アブレーションが起こっていました。

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編集後記


 “The Entrepreneur #1”には、セプテーニグループの様々な会社から、役職、役割を問わず、多くの社員が参加しました。

 リーダーシップという概念を構造化し、体系的にお話いただいたことで、新たな気付きや多くのヒントを得た社員も多かったように思います。

 参加した社員からは、これからの様々な変化を受け止めていく覚悟と、リーダーシップとイノベーションに恐れずに本気で向き合っていこうという熱意が感じられる声が多く上がっていました。

 “The Entrepreneur”では、今後も社外の様々なアントレプレナーをお招きし、展開していく予定です。

文・藤森夕紀
写真・岡田一芳


この記事は2019年3月7日に株式会社セプテーニのWantedlyに掲載された内容を転載したものです。


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