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「セプテーニグループって良くも悪くもまだ思春期だなと思うんですよ。」                   社外取締役 朝倉祐介氏に聞いた、企業としてのステージアップに向けて取り組むべきこととは【前編】


こんにちは。セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループの様々な取り組みや、そこから生まれる社会への提供価値、また、企業の強みや今後のビジョンなど、多面的にご紹介しているのが『統合報告書』です。

今回は、社外取締役の朝倉祐介さんに、2019年版統合報告書をご覧いただきながら、今後ステークホルダーの皆様に当社への理解をより深めていただくためには、何を打ち出し、どのように取り組んでいくべきか、その方向性についてお伺いしてきました。


朝倉さん×呉さん

【プロフィール】

■朝倉祐介氏(写真右)
競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。シニフィアン代表取締役。
2017年より株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役に就任。
■インタビュアー:セプテーニ・ホールディングス 経営企画部 次長 呉 鼎(写真左)
2010年セプテーニに新卒入社と同時に子会社に配属。2011年セプテーニ・ホールディングスに転籍。経営企画課で投資・アライアンス、中期経営計画策定等を担当。2017年からIR課も管掌、現在は経営企画部責任者として様々なステークホルダーと関わりながらグループの企業価値向上に向け奮闘中。


本日はよろしくお願いします。
まず最初に、朝倉さんのご経歴やどういった経緯で当社の社外取締役になられたのかについて教えていただけますか。


もともと僕は競馬の騎手になろうとしていて、オーストラリアで騎手になるためのトレーニングを受けていたんですけども、体格が大きくなりすぎたので諦めて、しばらく競走馬の調教の仕事なんかをしていました。

その後、方針転換をして大学に入学し、大学在籍中にスタートアップの世界に興味関心を持って、友人たちと会社を立ち上げたりしました。
大学卒業後は、3年半程マッキンゼー·アンド·カンパニーで経営コンサルティング業務に従事していましたが、そこから学生時代の仲間たちと設立した会社に戻りました。
後にその会社を売却するのですが、その売却先がミクシィでした。
売却にともなってミクシィに入社し、2年後に代表に就任しました。当時主力事業だったSNS事業は、かなり飽和気味というか、衰退状況だったので、そこから大きな事業の転換をし、立て直しを図りました。

その後ミクシィを離れて2年程アメリカのスタンフォード大学で研究員をして、日本に帰ってきて2017年にシニフィアンという会社を創りました。セプテーニグループの社外取締役に就任したのは、シニフィアン設立以降の話ですね。

シニフィアンは、「未来世代に引き継ぐ新産業の創出」テーマに活動をしている会社です。上場が見えている段階のレイターステージのスタートアップにリスクマネーと経営的な知見を提供して上場後もその成長を支えることをコンセプトにしたグロースキャピタルの運営などを行っています。

シニフィアン

セプテーニグループとの接点は、スタートアップをやっていた時、ないしはミクシィ在籍時のころに代表の佐藤さんとお会いした機会にさかのぼります。僕も当時は駆け出しの経営者でもあったので、ある種経営者の先輩でもある佐藤さんにアドバイスをもらったりしていて、以降も個人的なお付き合いがありました。

その後セプテーニグループが大きくガバナンス体制強化のため社外取締役を増やすというタイミングでお声がけいただきました。


ありがとうございます。
確かにちょうど朝倉さんが就任された時くらいから、ガバナンスをより強固にしていこうという流れになっていましたね。

今回統合報告書をベースにいくつかお伺いしたいのですが、朝倉さんが考える統合報告書の意味合いと、当社の統合報告書2019年版に対するフィードバックをいただけますでしょうか。

一般論としての統合報告書の意義でいうと、まずコンテンツの部分においては、定量的な財務情報だけではなくて、定性的な情報だとか、あるいはBSに載らないような見えない資産というものをちゃんと表していこうという物だと思います。

よく「ヒト・モノ・カネ」っていうじゃないですか。僕は事業においてこの順番で重要なものだと思っているのですが、「財務情報」は主にカネの観点から見た会社の実態にまつわる情報ですよね。ヒトやモノ、カネを組み合わせて事業を推進した経緯や結果、会社の状況を、指標としてカネで表し、定量的にわかりやすい表現するのが財務情報の意義だと捉えています。

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一方で、カネという指標で会社の状況や可能性を伝えるには限界があります。ヒト・モノといった、結果を生み出していく過程の、その会社特有の原動力となるようなものは、旧来の情報では十分に表すことができません。「実は財務的な情報には表れていないけれどもこういった魅力があるんだよ」ということを会社から積極的に打ち出すことに、統合報告書の意味があると思います。

日本人は良く言えば奥ゆかしいところがあって、不言実行じゃないですけれども、自分たちのことを身の丈以上に大きく見せるのではなく、背中で語るじゃないけれども「結果で語ればいいじゃないか」というような考えの人も多いんじゃないかと思います。

それもある種の美学かもしれませんが、会社として成長していく上で、株主含め、様々な方々のサポートを得て成長していこうとするのであれば、積極的に「自分たちはこんなことを実現しようと考えており、こんな潜在的な可能性がある」といったことを打ち出していく必要があるのだと思いますよね。

セプテーニグループの場合は、マーケティングの会社ですから、マーケティングで世の中にわかりやすく、また時にはおもしろく、様々な情報を届けることに取り組んでいますよね。尚且つ会社のカルチャーとしてもそういった特色があるじゃないですか。

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なので、あまり「『統合報告書』とはこういったものだ」といった先入観や型にとらわれず、自分たちらしい打ち出し方をしていくのがいいんじゃないかと思います。その方が、株主や顧客の方に対してもセプテーニグループの可能性を理解していただくうえで説得力を持つ材料になるんじゃないかなと思いますね。

また、内容だけでなく、誰に届けるのかも重要です。財務情報の場合、メインは株主・投資家の方々だとは思うんですよ。
でも統合報告書って、必ずしも株主の方だけではなくて、顧客や社員や社員の家族、また、セプテーニグループに興味をもち参画したいと思っている方々に対してもセプテーニならではのおもしろさ、魅力を伝える媒体だと思うんですよね。
ですので、どうやったら自分たちならではのおもしろさを届けることができるのかを考えていけばいいんじゃないかなと思います。

なるほど。

セプテーニグループって社歴が長い会社ではあるんだけれども、良くも悪くもまだ思春期だと思うんですよ。(笑)
統合報告書を見ていても、セプテーニグループならではの組織風土や強み、おもしろさについては大変よく書かれている、つまり自己に関する言及はよくされている。自分たちが目の前で手掛けている事業やサービス(アプリケーション)に捉われず、事業の幅を拡張しながら、「世界を元気に」するといった大きなミッションを掲げているのが、セプテーニグループの特長なんじゃないかと思うんですよね。

<価値創造モデル図>

統合報告書_価値創造モデル


何か仕組化したものを横展開するというよりは、ある種いい意味での労働集約性があって、一人ひとりが能力を高めながら毎回毎回お客様にちゃんと向き合って課題を解決していくような事業にセプテーニグループは取り組んでいます。だからこそ、より強固な組織をどうやって作っていくかということに注意が向くのは事業特性上、自然な流れだと思います。一方で、もっと事業を通じて語れる内容が増えてきたらいいなとも思います。

「セプテーニグループの価値創造モデル」という図で言えば、「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」や「事業を通じて人と産業をエンパワーする」といった壮大な未来像や、セプテーニグループの強み(OS)といった現状説明だけでなく、その間にあたる事業領域(アプリケーション)について、より具体的に表現することが次のステップなんじゃないかと思います。これは統合報告書の内容にとどまらず、セプテーニグループが会社として今後取り組んでいかなければいけない課題かもしれません。

これはある意味で、セプテーニグループのおもしろい点でもあります。こんなに社歴が長い会社であるにも拘らず、事業の可能性を限定せず、若さを失わずにインターネットの世界で戦っている。
先程、「思春期っぽい」と言いましたが、まだまだ成長の余地があることの裏返しだとも思います。
僕も社外取締役の一人として、会社の成長に寄与しなければいけないなと思っています。

とてもプラクティカルで具体的なフィードバックをありがとうございました。前回、社外取締役の石川さんにインタビューした際も、「事業・企業」の観点では自分たちの言葉で十分深ぼれていて、今足らないのは「産業視点」だというアドバイスをいただいたので、そのあたりは今後取り組んでいきたいと思います!

先程「ヒト・モノ・カネ」の順で重要だというお話がありましたが、当社でも最も重要な要素は人的資産だと発信しています。
一方で、価値創造モデルの中でもっと財務的な強みとそれに至る価値創造プロセスをもっと書くべきだという意見も社内でありました。
2020年版を作るにあたり、この価値創造モデルをどう改善したらいいでしょうか。


元も子もないことを言うと、何か結果を出すしかないと思います。
外部の方は「会社の強みを発揮した結果、何ができるのか」を気にしており、見ているのですから。

ただ結果といっても、なにもいきなり財務情報に落とし込まれるようなお金に関する話だけではないとも思います。起業家精神溢れる人材が集まっていて、非常にモチベーション高く活躍しているといったことも述べられていますが、そうであれば、きっと結果として何かが生まれているはずですよね。
例えば、強みである人材を通じて、こんな事業が生まれたとか、既存事業でこんな変化が生まれたとか、数字に落ちる手前の取り組みを噛み砕いて提示できるといいんじゃないでしょうか。

朝倉さん


ただ、見せ方を工夫しようにも、そもそも何かしらの結果(材料)がないと書けません。そうした材料を収集するためにも、例えば、『統合報告書』で描きたいストーリー(完成図)を先に考えた上で「こうしたストーリーを実現するためにはこうした要素が足りないのでもっと取り組んでいきましょう」といったことを、ステークホルダーに近い位置にいるIR担当の皆さんが能動的に事業部側にフィードバックする役割を担うといった動き方もあるかもしれないですね。

示す結果がないままに「俺たちの組織こんなにすごいぜ。俺たちこんなにイケてるぜ」って自分たちで言い続けるのってサムイじゃないですか。(笑)
きっと自分たちには大きな可能性があるという手応えや確信はあるのだと思うんですよね。そうした確信を形にして伝えることも『統合報告書』の役割だと思いますから、外部から見えやすい結果と、自分たちの可能性の間部分を言語化してブリッジできるといいですよね。

そのためにも、先述したように、アプリケーション(事業領域)のところで、もう一段階踏み込んだ説明やアピールができたらいいと思います。一個一個は地味な話であっても、成功体験の蓄積が見えてくれば、社外の方がセプテーニグループの強みを判断する上での材料になるはずです。

ありがとうございます。<後編に続く>


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#朝倉祐介 #シニフィアン #セプテーニ・ホールディングス #統合報告書 #アントレプレナーシップ