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「セプテーニグループって良くも悪くもまだ思春期だなと思うんですよ。」                   社外取締役 朝倉祐介氏に聞いた、企業としてのステージアップに向けて取り組むべきこととは【後編】


こんにちは。セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループの様々な取り組みや、そこから生まれる社会への提供価値、また、企業の強みや今後のビジョンなど、多面的にご紹介しているのが『統合報告書』です。

今回は、社外取締役の朝倉祐介さんに、2019年版統合報告書をご覧いただきながら、今後ステークホルダーの皆様に当社への理解をより深めていただくためには、何を打ち出し、どのように取り組んでいくべきか、その方向性についてお伺したインタビューの後編をお届けします。(※前編はこちら


朝倉さん×呉さん

【プロフィール】

■朝倉祐介氏(写真右)
競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。シニフィアン代表取締役。
2017年より株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役に就任。
■インタビュアー:セプテーニ・ホールディングス 経営企画部 次長 呉 鼎(写真左)
2010年セプテーニに新卒入社と同時に子会社に配属。2011年セプテーニ・ホールディングスに転籍。経営企画課で投資・アライアンス、中期経営計画策定等を担当。2017年からIR課も管掌、現在は経営企画部責任者として様々なステークホルダーと関わりながらグループの企業価値向上に向け奮闘中。


ガバナンスの部分についてお聞きしたいのですが、朝倉さんは当社を含めこれまで様々な場所でガバナンス改革をされてきましたが、当社のガバナンスは今どのようなステージなのでしょうか。

<ガバナンス改革の変遷>

ガバナンスの変遷

もちろん、まだまだ取り組まなければならないことは多々あると思います。
長期に渡り経営と執行が一体化していたところから分離することになったけれど、会社の規模も事業の幅も広がりつつある状況で、やっぱり新しいやり方に変えるのにはどうしても時間はかかるものだと思います。

一方で着実に、ポジティブに進化している部分もあります。例えば、役員会での各事業責任者のレポーティング。
最近では、単に足元の状況報告だけでなく、各会社の方向性の中で、今はどういう状態まで進捗しているのかといった状況かといった全体感と連携した説明が加わるようになりました。議論のレベルのテーマ設定や抽象度の度合い等の塩梅が整いつつあると思います。状況把握の質の改善は、取締役会での議論のレベル向上に直結すると感じます。

現段階では、取締役会に出席している事業責任者の方々が、経営と執行の分離を前提とした議論のトーンに慣れてきたという状況なんじゃないかと思います。こうした議論のトーンや精度が会社全体で共有されるようになればよいと思います。

また他のポジティブな点を挙げると、外部(社外取締役)からのツッコミに対しても、オープンに受け止めていただいていると感じています。社外取締役は外部のステークホルダーを代表する立場でもあり、社外の視点を積極的に持ち込む役割を担わなければなりませんが、健全な議論ができているのではないかと思います。

また、人材については、どうやって人を育てていくか、どうやって人を引き上げて活躍の機会を提供していくかという事に対して、組織的に徹底して考えてらっしゃる会社だなと思いますね。珍しいと思います。

朝倉さんがいままで関わってきた会社と比較しても、セプテーニグループの「ヒト」に対する考え方はユニークだと感じるのですか。

そうですね。非常に意識してらっしゃるんだなと思います。
背景として、一人ひとりの能力が結果に直結しやすい事業に取り組んでいるということが関係あるのかと思います。
また同時に、世の中のネット企業の多くのはまだ若く、創業者が代表を務めていて当面は代わる予定もないといった状況が多いですが、その点、セプテーニグループは、ネット企業としては社歴の長い会社で、既に何回も代替わりの経験・実績もある会社ですから、こうした交代のプロセスをより仕組化してやるためにも、ヒトに対する投資、能力開発や抜擢をしていかなければいけないという意識が非常に高いのだと思いますね。

朝倉さん_後編1

確かに事業体との関係は大きいかもしれませんね。

統合報告書のガバナンス部分について、取締役会での議題を開示したり、役員のスキルマトリックスを作成し、どういった専門性を持った人がどんな議論をしているのかをステークホルダーに発信している企業もあるのですが、朝倉さんから見て他社事例でいいと思う取り組みなどはありますか。

日立製作所さんの「Hitachi IR Day」みたいに、事業部門長が社外の方に対して自社の取り組みを説明するといった取り組みはいいですよね。執行に取り組んでいる方々が、顧客や自分たちの組織に視点が向いてしまうというのは当然のことですが、それ以外のステークホルダー(投資家・株主等)からも評価される対象であるということを意識する機会はあってもいいと思います。そうした意識付けの機会として取締役会を活用するというのはありだと思いますね。

どうしても社内だけに目を向けていると、社内の論理に引っ張られてしまいがちです。
一般論ですが、例えば「社員がこんなことをやりたいと言って頑張っているからやらせたい。」といった意見が出た場合、本来それに対して「会社のリソース配分として正しいのか」といった議論があって然るべきですが、内側だけの視点だと、どうしてもそこに情緒がついてまわり、なし崩し的に実行されてしまうといった事態も起こりがちです。

社外の人に説明する機会を設けると、社内の議論とは全く違う視点からの質問や指摘を受けることで、一度考えをニュートラルにすることができます。また、社外の方から自分たちがどのように見られているのかを理解する機会にもなると思うんです。

セプテーニグループでは、今でも各子会社や事業部の方が定期的に取締役会で事業報告を行い、そこでのフィードバックを受けて議論することもあるのですが、同様に、社内だけでなく社外の視点から自分たちを客観視できる機会があればよいでしょうね。

それはいい案ですね。IR Dayはやってみたいです。

あと統合報告書のCSRパートについて、当社としてはCSRもESGも今後強化しつつ、将来的にこの部分を財務的な価値に転換していきたいですし、そのプロセスを言語化していきたいと考えているのですが、今後よりコンテンツをリッチにするために、こういう視点を入れた方がいいなど、アドバイスあればお伺いしてもいいでしょうか。

これもまた一般論になりますが、CSRの取り組みに注力するのはいいと思いますが、「CSRをやってます」と言いたいがためのアリバイ作りのような「CSR」には違和感を覚えます。
事業と切り離された、取ってつけたようなCSRではなく、「自分たちの事業運営の過程や延長線上で世の中にこんないいことが起こっているんですよ」ということを伝えられるといいですよね。

<セプテーニグループのCSR活動における重点テーマと取り組み事項>

CSR_重点テーマ_2

例えばセプテーニグループのCSRでは、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)として女性活躍推進への取り組みが説明されていますが、これは女性を雇わなければいけないから採用しているわけではなく、普通に考えたら人類の約半分は女性なわけで、その人たち(女性)にも響くデジタルマーケティングの実現を目指す以上、多様な社員や働き方を必然的に推進していかなければいけないということの表れだと思います。より成果を上げるための取り組みであり、事業成長に向けて取り組んだ結果、何かポジティブなことが副次的に起きているというように、事業とCSRの繋がりがより見えるように語れるといいですよね。

そもそも大前提として、企業や事業というのは、世の中に何かしらいいインパクトを与えるために運営していて、その結果として報酬を得ていてるわけじゃないですか。
その「結果」を定量的に測れるものが今はお金なので、どうしても財務のところに目がいくけれど、本来お金をたくさん稼ぐことが事業の目的ではないですよね。

その目的というのが、セプテーニグループの場合は「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」とか「事業を通じて人と産業をエンパワーする」といったミッションや社会への提供価値を掲げているわけですが、そうした世界観の実現を目指して事業を行い、正当な報酬をもらっている以上、セプテーニグループは事業を通じて、何かしらの社会的責務・役割を果たしているはずだと思うんですよ。

<セプテーニグループの企業理念・行動規範・価値創造モデル

企業理念

ミッションや事業、組織の強みといった文脈の中で、セプテーニグループが果たしているCSRを説明できるといいですよね。
「世界を元気にしている」とは、具体的にどういうことなのかをもう少しかみ砕いてみるとか。要は、「世界を元気に」って言っているけど「みなさん今日世界を元気にしましたか?」「一年通じてどんなふうに世界を元気にしたんですか」ということをちゃんと言語化するということです。

「こうした世界観を実現するためには、例えばOS(セプテーニグループの強み)部分の強化が必要で、その強化の過程でCSRとしてこんな取り組みをしています。」といったように、事業の延長線上、あるいはそのプロセスにおいて、こんなポジティブな取り組みを行っている、社会的に良いインパクトが起こっているということを説明できると、より説得力が増すんじゃないでしょうか。

なるほど。CSRにおいても事業を通じて語るということですね。

あと、人材に関する指標についてアドバイスいただきたいのですが、
OS部分に「当事者意識が高く起業家精神あふれる人材」というのを置きながら、Appendix部分(P35)にそれに適するような指標の記載がない点も社外取締役の石川さんからご指摘いただきました。

もちろん人材投資もしているし、育成の仕組みなんかもあるのですが、それらをどういった見せ方ができると、よりいい人材が揃っている(=OSが強い)という理解が得られやすいと思いますか。

Appendix部分での指標の開示は、注力度合いを示すうえで象徴的ではあるでしょうね。本質的には、統合報告書の中での語り口なんじゃないかと思います。

人については、OS、アプリケーション、ミッション・ビジョン・バリューなど各分野において人にまつわる言及が埋め込まれており、結構強く伝わってくるのですが、具体的なヒトに関する取り組みについては、確かにもっと主張してもいいのかもしれませんね。

働きやすさだとか自己実現のしやすさ、能力開発・キャリア形成のしやすさみたいな要素の指標化を考えているのかもしれませんが、そうした要素がセプテーニグループの成長において大事だと考えるのであれば、数ページを割いて、そこに紐づくような指標のグラフなどを載せ、人が能力を開花させやすい環境だということを見せてもいいんじゃないでしょうか。
セプテーニグループの場合は若手の登用率とかでもいいかもしれませんね。

朝倉さん_後編2


最後に、今後の統合報告書に期待するものあれば教えてください。

今まで話したことではありますが、思春期からの卒業、事業を通じて語れるようなステージに向かうことが次のテーマなんじゃないかと思います。セプテーニグループが取り組むデジタルマーケティングの市場全体が、どういった方向に変わっていくのか、成長分野はどこかということは、簡単には見通せませんし、未来予測しにくい市場ではあります。ただその中でも、セプテーニグループが目指していく方向性を打ち出し、今の事業と結びつけて語れるといいですね。

とてもいいインサイトをいただきありがとうございました。
いただいたアドバイスを参考に、企業としてさらなるステージアップを目指していきます。


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#朝倉祐介 #シニフィアン #セプテーニ・ホールディングス #統合報告書 #アントレプレナーシップ