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人材開発と学習:Session6 メンタリングとコーチング

ICFとWABCのコーチング資格を持っている(正確にはもう少し宿題を出したらQualifyされる)ので興味深い。自分が学んだ内容とのギャップが気になった。

<課題教科書>職場のトレーニングと人材開発ハンドブック 25章 非公式学習

非公式学習(informal learning)とは、予定されない即興的な学習のこと。従業員に主導権があり、意図しない場所で起こり、二次的な目的が多く、具体的な内容であることが多い。

副産物としての学習が起こる仕事は非公式学習にあたる。形式としては、プロジェクト、育成的アサイン、仕事から離れた研究、トライアル&エラー、ミーティング、資料化、ナレッジベース、広告や簡易的なメッセージ、がある。

仕事に組み込まれた学習もある。OJT,フィードバック、パフォーマンスサポート、コーチング、メンタリング、実践コミュニティ(団体や勉強会、小集団など)、ネットワーク、シミュレーションゲーム、ケーススタディがある。

業務プロセスやその近くにある学習は、公式な学習コース、チュートリアルやガイドツアー、学習のためのランチ、セミナーやカンファレンス、などがある。

(所感)非公式学習の重要性は一般的に知られているが、どうしたら効果的な非公式学習が行えるのか、について書いてほしかった。あまりそういう研究はまだないのかもしれない。学習については倫理的な問題もあるため研究が進みにくい。

Carliner, S. Ch. 25. Informal learning. In Brown, K. G. (Ed.). (2017). The Cambridge Handbook of Workplace Training and Employee Development. (pp. 585-606) Cambridge: Cambridge University Press.

<課題論文1>コーチングの効果を決める要素の理解

コーチングの効果について、メタ分析した論文。コーチングの成果としては、下記がある。
1.自己効力感(Self-efficacy)
2.モチベーション(Coaching Motivation)
3.ゴール志向(Goal Orientation)
4.信頼(Trust)
5.個人間の魅力(Interpersonal attraction)
6.フィードバック(Feedback intervention)
7.上長的サポート(Supervisory support)
そのうち、1~4はコーチングの成果として得られるという研究が多く、5~7はそれほどでもなかった。

Bozer, G., and Jones, R. J. (2018). Understanding the factors that determine workplace coaching effectiveness: a systematic literature review. European Journal of Work and Organizational Psychology, 27(3), 342-361.

<課題論文2>職場に置ける性の不平等解消に向けた女性だけによるメンタリングの限界

女性のメンタリングプログラムや女性活用のプロジェクトは、女性に力を与えたり、女性のキャリア開発をサポートしたりすることで、変容を促すため重要であるが、性的不平等をもたらす男性中心的な風土を変えることにはつながらない。

(所感)これは男性側の考え方に原因があるので、女性にアプローチしても解決しないだろう。この手の課題解決は、そういう見方をしている時点で詰んでいると思う。あるとしたらバイアスに気づかせるトレーニングをするくらいでは。

Dashper, K. (2019). Challenging the gendered rhetoric of success? The limitations of women-only mentoring for tackling gender inequality in the workplace. Gender, Work & Organization, 26(4), 541-557.

<課題論文3>社会プロセスとしてのコーチング

コーチングは組織文化を変えるのに使える、ということを論じた論文。

エグゼクティブ・コーチングには4つのタイプがある。
・心理学化の道具としてのコーチング
・適合のスペースとしてのコーチング
・管理職の役割の外部化としてのコーチング
・集合の代替としてのコーチング

コーチは2つの軸でスタンスを取る。
・絶対主義vs相対主義:理想的な価値や基準があるかどうか
・多勢順応vs臨界:社会的文脈に合わせるか、その限界にチャレンジするか
この軸の掛け算の結果として、以下4つのポジションがある。
・否定(絶対主義&多勢順応):社会的文脈を無視し、個人にフォーカス
・代替(絶対主義&臨界):他のより優れた文化的・社会的見方を提案
・適合(相対主義&多勢順応):コーチングを既存の社会的文脈に合わせる
・統合と臨界(相対主義&臨界):文脈を尊重しつつも、クライアントが批判的にそれを理解しアクションを取ることを助ける

(所感)細かいところまで読んでいないがよくわからない。恐らく、自分が学んだコーチングがクライアントセントリックだが、この論文で論じられているコーチングはコーチの視点から書かれているからな気がする。コーチングのやり方はクライアント次第なので、こういう分類には意味がないと思う。結果としてはそうなるだろうが。

Shoukry, H., and Cox, E. (2018). Coaching as a social process. Management Learning, 49(4), 413-428.

<授業での学び>

【非公式学習】
・非公式学習の特徴
 ー従業員がよりコントロール
 ー学習を意図しないばで発生
 ー主目的は学習ではない
 ー素材はテクニカルで実践的
・コーチングとメンタリングは仕事に埋め込まれた学習活動
・コーチングは、通常特定の状況における特定のスキルの開発にフォーカスする(所感:これは自分が学んだコーチングと全然違う)
・メンタリングは、長期的関係性の中で知識や経験をシェアし、より上の役割を担うために幅広く人材開発を行うこと
・コーチングもメンタリングも一般的に行われるが、組織内の全メンバーはカバーされないことが多い。

【コーチング】
・コーチングの定義
 ータレントマネジメントにおいて、パフォーマンスとポテンシャルを高めること(所感:この定義はいまいちでは?それだけではないはず)
・コーチングの種類
 ースキルコーチング
 ーパフォーマンスコーチング
 ー人材開発またはライフコーチング
(所感:この分類も微妙では。クライアントの要望がこの分類に当てはまるだけで、やること、使うスキル・マインドセットは同じ)
・学習やコーチングの倫理上の課題
 ーコントロールできてしまう
 ー機密情報を得てしまう
・コーチの種類
 ー外部のコーチ:同僚より効果的で、満足度も高い
 ー内部のコーチ
 ー上長:効果は高いがなかなかできない
 ー自分(Self coach)(所感:なんじゃそりゃ):同僚より良く、外部のコーチと同じくらい効果的(所感:本当か?外部のコーチは相性の問題はあるが、自分でやってるから正当化したいだけでは)
 ー同僚:ないよりマシ
・コーチングの研究はほとんどがクライントにフォーカスし、コーチにフォーカスしたものは少ない。スポンサーとなっている組織に注目したものはもっと少ない。


【メンタリング】時間がなく説明されかったのでスライドにある内容のみ
・アカデミックには40の定義があるらしい(所感:まじか)
・メンタリングの機能
 ー心理的サポート:受容、確認、カウンセリング、友情、ロールモデリング、を含む(所感:ごっちゃにしない方がよいのでは)
 ーキャリア関連のサポート
・メンタリングの便益
 ー昇進や昇給など客観的成果
 ー仕事の満足など主観的成果:こちらの方がメンタリングとの関係性が強い
・公式なメンタリングと非公式なメンタリングがあるが、非公式な方が効果的。
・ジュニアな従業員がシニアな従業員に教えるというリバースメンタリングというものもある。
 ージャック・ウェルチがGEで1999に開発し、インターネットについて教えた

(所感)研究者の定義や境界が曖昧な印象がある。それは定義する際にそれしか見ていないからでは。コーチング、メンタリング、カウンセリング、コンサルティング、あたりを含めて定義すれば決まりそう。もう1つの原因としては、実際に職場で起こるコミュニケーションとしては、これらの要素が混ざるからだと思う。実際コーチングをしていても、純粋にコーチングだけすることはなく、メンタリングを入れることもある。その方がコミュニケーションが自然になるし、価値が高まる。ただ、自分の場合カウンセリングは知識とスキルがないので行わない。このテーマでこのモジュールのEssayを書くので、今回の論文はもうちょっと細かいところまで読みたい。他のオススメ論文にも目を通さねば…。

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