見出し画像

旧姓使用で不利益は緩和されるのか?外資系企業で旧姓使用が出来なかった話

今日、家にコロナのワクチンクーポンとAmazonのお届け物が同時に届きました。郵便局の人が「あれ、水落さん?あれ?阿座上?」と悩んでいました。同じ名前なのに名字が違う人物届け物が同時に来たので状況がわからなかったようです。

ワクチンクーポンは戸籍姓である「阿座上」で、Amazonの荷物は旧姓の「水落」で届いたのです。

「あってます。両方、うちのものです。」と言って受け取りましたが、一人一人に確実に配布する必要があるものなのに、半端な「旧姓使用」の拡大により、同一性確認が困難になったという例です。

こちらは仕方なく受け取るとしても、やっぱりダブルネームはそこここで社会に混乱をもたらしていると思いますし、コロナワクチンのような各人の割り当て回数が重要なものがある際に混乱を生むのは安全管理上よくありません。

安全管理に関して、今回は、私がセキュリティ上旧姓を2年間ほぼ全く使用できず、しかも、旧姓使用が認められなかったことを合理的だと思ってしまった話を書きたいと思います。

1. 外資は旧姓使用できそうって思うでしょ?

少なくとも私(阿座上)はそう思っていました。三年交代で阿座上が戸籍上水落になっていた時、私は某外資系企業へと転職しました。そして、入社前に「旧姓使用をしたい」と申し出たわけです。

最初の会社からの返事は「できると思います」とのことでした。しかし、後から「システムを米国の本社で管理していて、防犯上、メールアドレスや登録名を戸籍姓以外にすることが出来ない決まりでした。」といわれてしまいました。

日本支社はOK、米国本社がNOを出したわけです。

ここで旧姓使用と夫婦別姓は全然別物だと私は気づきました。生来の姓を結婚後自分の戸籍姓として保つのはOKですが、名前を二つ持つのはセキュリティの問題でアウト、とても合理的だと思います。

同姓か別姓かを選べる海外では、戸籍姓を使用しつつ旧姓を使用する、などという事態は想定されておらず、結婚で姓が変わるにしても変わらないにしても、個人につく氏名は1つです。姓が変わっているのに旧姓を使用する、ということは、あたかも偽名を使うかのように解釈されたのかもしれません。

海外で仕事をする人には割とあるあるのようで、似たような経験をした方の記事を、以下に2つ引用します。

1つ目の記事には、オーストラリアに住む日本人が、旧姓使用により「二人の人間に成りすましている」ことを疑われてしまったという例が書かれています。

2つ目の記事には、アメリカに駐在した日本人の苦労が、4つの観点から語られています。

どちらもとてもいい記事なので、読んでみてください。

しかも、この問題は「夫婦別姓が認められないのが全ての国の中で日本だけ」という状況であるため、いくら日本国内で旧姓使用を広めようが、永遠に解決されることはないのです。

2.仕事で旧姓を使用できないと他の場面で使用できない

2年後に名前を「阿座上」に戻す予定であることや、その際にはビジネスネームを全て「阿座上」に変えたいことなど、すべてをオープンにして主張しましたが、受け入れられませんでした。

そして、仕事で旧姓使用ができないと「いったいどこでできるの?」という感じになってしまいます。病院も納税も全て戸籍姓で、携帯の契約だって旧姓ではできませんでした。個人的な友達に呼んでもらう名前以外、どこでも旧姓は使えません。

公的な身分として「阿座上」がすべて失われてしまう恐怖があり、2018年当時は旧姓併記が認められる書類が他になかったため、パスポートへの旧姓併記は私にとって、死守すべき点でした。

旧姓使用証明書が、会社で旧姓を使っていないため、出ません。そのため、過去の学会の大変お粗末なポスター発表の資料(しかも日本語)を持って、パスポートセンターに行きました。

海外とのやり取りがないということで許可が出ませんでした。なので、海外の教授とメールのやり取りをした文面を近くのコンビニで印刷してきて、見せました。

それでも難色を示されましたが、学会発表を今後行う予定があること、博士進学も行う予定であることなどを根拠に粘り強く交渉し、二時間かけて許可を得ました。

窓口の人は良い方だったのですが、後ろに下がった際に「なんで認めちゃうの?」とその人が怒られているのが聞こえてきました。

3.旧姓使用の限界

海外には旧姓というものがなく、セキュリティを考えてもダブルネームを認めないことには理があると思います。外国の方が合理性があるため、不合理な旧姓使用を日本側から押し付けることは無理でしょう。

グローバルに仕事を続ける限り、旧姓使用の不便は解消されないと思います。

「なんでも海外の真似をする」のをよしとしない人もいますが、海外に合わせられないと日本だけが取り残されてしまいます。すでに日本以外の全ての国で夫婦別姓が認められているので、各国の制度を参考に日本に合った運用を考える方がよっぽど建設的ではないでしょうか。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?