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【全曲紹介と回想文】aiko「夢の中のまっすぐな道」

6thアルバム「夢の中のまっすぐな道」
2005年3月発売。「どうしたって伝えられないから」の発売まで、最も長いタイトルでした。「夢道」と略すことが多いです。初めてカップリング曲の収録がなかったり、おなじみの島田昌典さんに加え、吉俣良さん、根岸孝旨さんがアレンジした曲が収録されたり、新しい試みを感じるアルバム。それはさておき、このアルバムはとても思い出深いのです。なぜかというと僕が初めてaikoのライブを生で見たのはこのアルバムが発売した後のツアー「LLP9」だったからです。大学に通いつつ西新井のサティのギフトコーナーでバイトをしていた頃でした。「夢道」の曲はNHKホールの3階席から初めて肉眼で見た、小さなaikoが歌っていた曲ばかりなのです。

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雪景色をバックにしたジャケットは、初回盤の初期出荷分の一部に余計な線が入っていたとかで回収されていました。線が入ってなくて逆になんか残念だった記憶があります。

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この裏ジャケ好きです。

アルバム発売前の雑誌「H」です。記事によればこの時はまだレコーディング中だった模様。

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本屋さん10軒くらいまわっても置いてなくて、北千住の紀伊国屋書店で注文した「aiko bon」もこの頃です。

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一般発売で電話かけまくって奇跡的に取れたチケット。

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1.青い光
「三国駅」の発売よりも前の元旦に、NEW YEAR CMの曲としてCDTV内でOAされていました。特許訴訟で知られる青色発光ダイオードではなく、空の青さを表していると思われる。1曲目からアルバムの最後を締めくくる曲のような威厳があります。「好きだよー…」の声が聴きどころ。このテイクをアルバムに残すことに決めたのが素晴らしい。初めてのライブではアンコールの1曲目でした。aikoコールの中、青い照明とともにaikoの歌声が再び聴こえてきた時には「ほんとにaiko帰ってきた!」と思いました。

2.恋人同士
左右に揺れたくなるリズミカルな三拍子。ライブではaikoが実際左右にふらふらしながら「こんな感じの曲やから、こうしてねー」と言っていました。言われた通りにしました。歌詞はすごく健気。僕はどうしても、相手は「他の子と一緒に束ねたり」するいけすかないやつなんだろうけどたぶんすごくもてるんだろうなと勝手に像を作りあげてしまいます。だからこそ「手のひらの上にいてね」と思うんじゃないのですかね。「My 2 Decades 2」(LLP20)では弾き語りが聴けます。

3.エナジー
「2人は気付いてた」とクールに始まる、いわゆるロックナンバーってやつです。コーラスワークが心地よくて、特に2番のサビの前のところは「あーあーあーあーあーーあーー」とコーラスの方を歌いたくなります。他の人が近くでもし「エナジー」を歌っていたら、勝手に合わせてしまうでしょう。ご迷惑でしたらしません。アレンジは当時フジテレビのドラマのサントラを手掛けまくっていた吉俣良さん。aikoが別名義で曲を提供したドラマ「プライド」も吉俣良さんの劇伴でした。メイビー。

4.明日もいつも通りに
aikoの得意な「てれれてれれ」リズムの曲です。印象に残る歌詞はなんといっても「出の悪い水道、直し方も解らない」ですね。本来なら森末慎二さんに申し出た方がいいようなことを、恋の歌の詞にしてしまっても違和感が出ないのがaikoマジックです。「明日もいつも通りに」という言葉は控えめな願いですが、今一番切に願いたいことかもしれません。

5.かばん
1週間で出来たらしい15thシングル。自然災害に弱そうな家で歌い踊るPVが可愛い。PVの最後に少しだけ聴こえる曲は「帽子と水着と水平線」のイントロ。
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.1)」

6.恋の涙
とぅててててとぅててててとぅててててとぅてててて。可愛らしいイントロのフレーズとうねるベースが全体を貫く明るいロック調の曲ながら、詞はタイトルから想起される通りの切ないものです。曲調のおかげでからっとした印象に聴こえます。「枯れる程流したら奇跡は起きる?」とありますが、きっと枯れもしないのでしょう。とぅててててとぅてててて。

7.ビードロの夜
大好きな曲です。ベースとギターはアレンジも務める根岸孝旨さん。Dr.StrangeLoveの根岸孝旨さん。Coccoをプロデュースしてた根岸孝旨さん。奥田民生のベーシストとしてドラマ「HR」にも出演した根岸孝旨さんです。慎ましい言葉を連ねた後の「と並べた言葉は嘘」の裏切りがしびれる。骨太な演奏も言い放つような歌声も終始カッコいい曲です。「息づかい」をずっと「ひきつけ」と聞き間違えていたのは不覚。赤ちゃんか。

8.愛のしぐさ
この曲も、アルバムの最後に収録されていてもいいくらいの強さを持っているバラードです。Bメロでドラムが入ってくるところが劇的で、それまで糸のように細く歌っていた声もここからぐっと力強くなり、背景にパッと色がつくような感じがあります。歌詞は大人っぽい印象。別れってこういう感じにお互いがそれとなく気づいて進んでいくのでしょうか。

9.ずっと近くに
「恋人同士」とは違って、ゆったりした三拍子の曲。ジャジーってやつでしょう。アメリカの古い映画に出てくる楽団の生演奏がついたバーで、主人公とヒロインのムードを盛り上げるシーンで演奏されているようなイメージがあります。明確に映画のタイトルを挙げてみろと言われたら困ります。「かーみーにーいのーったーことーそれはー、はぁ~」の「はぁ~」が好きです。こちらも「My 2 Decades 2」(LLP20)で弾き語りが聴けます。

10.Smooch!
大好きな曲です。再生すると「そ~~~」という、一瞬「???」となるような声が聴こえてきます。独特の始まり方はライブでも生かされ、初めて行ったライブではタイミングが合わないと言ってメンバーに(わざと)何度も演奏をやり直させ、いつ始まるのかやきもきさせてくれました。9年の時を経て同じNHKホールで再び「Smooch!」を聴いた時は、普通に中MCをしていたaikoが急に話をぶったぎって「そ~~~」と歌い出し、着席していたお客さんが慌ててバタバタと立ち上がったりしていました。そこのあなたも油断していると、不意に「Smooch!」が始まりますよ。

11.花風
駆逐艦っぽい響きの16thシングル。ちなみにaikoは舌下減感作療法をいちはやく取り入れて花粉症を治療したといいます。
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.1)」

12.三国駅
阪急あっての17thシングル。PVには時任三郎さんが出ている。「24時間一緒にいたい」のaikoと「24時間戦えますか」の時任さん。
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.3)」

13.星物語
締めくくりは再び「てれれてれれ」リズムの名バラードです。歌詞はブックレットの中には載っておらず、いわゆる「ぺろり」部分に手書きの文字で書いてあるのです。電車で出かけて帰りが夜遅くになってしまったら、駅から家までの道でよく「星物語」を聴きます。夜空の下をゆっくり歩いている時にぴったりな曲調なのです。

15thシングル「かばん」

行儀の悪いポーズ。

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1.かばん
収録アルバム:「夢の中のまっすぐな道」
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.1)」

2.猫
猫が上で跳ねているかのような軽快な鍵盤が駆け巡ります。aiko自身は猫アレルギーらしい。「あなたにこの舌をなめてほしい」っていうところは何回聴いてもドキッとしますね。声が低くなるところのギャップもドキッとしますね。「うんと深い」のところは「ぅうんとぅふくあぃ」という感じなので、歌詞を読まずに聴くとなんと言っているか判別しにくく、勝手に色々想像しているとドキッとしますね。

3.テレビゲーム
途中で聴こえる口笛はaikoのもの。「もうそろそろ時間だしね」とありますが、やはり「ゲームは1日1時間」世代なのでしょうか。
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.4)」

4.かばん(instrumental)
イントロでaikoの「ううう~」が聴こえてこなかったらそれはインストなのです。ベースがぶううーんとしてるのがよくわかります。



16thシングル「花風」

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通常盤も写真は同じのようですが、文字の色が違います。

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1.花風
収録アルバム:「夢の中のまっすぐな道」
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.1)」

2.洗面所
このキレイな澄んだ音色はフルートです。aikoでないとタイトルに選ばないような言葉がタイトルになっている曲というのは多々ありますが「洗面所」もその一つ。「赤いランプ」の頃にGBAで遊んでいたaikoですが、この曲はGBA「ファイヤーエンブレム」のCMソングでした。この後に「星のない世界」「嘆きのキス」もゲームのCMソングになるのですが、なぜかどれもしっとりと哀しげなバラード曲。

3.ポニーテール
こちらも「てれれてれれ」系の曲です。どっちかというと「でってでって」ですか。「好き」とか「愛してる」みたいな言葉は一切でてこないのですが、そういう感情を示したい相手へ、それ以上の気持ちを丁寧に伝えています。「頭がおかしくなったって心が空っぽになったってあなたのことだけは忘れないよ」なんて、一時でも誰かに思ったり思われたりしたことがありますか。ららららららら。

4.花風(instrumental)

17thシングル「三国駅」

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表は初回盤・通常版とも同じです。通常版裏ジャケ。

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1.三国駅
収録アルバム:「夢の中のまっすぐな道」
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.3)」

2.ハチミツ
インディーズ時代唯一のシングル「ハチミツ」の再録。「ハチミツ」はインディーズ時代のアルバム「GIRLIE」に収録され、この時に歌詞の一部と間奏が追加されています。正確にはこちらの再録。3バージョンで歌い方がかなり異なる。「三国駅」の「ハチミツ」は冒頭やアウトロでも声が聴け、最も情感の強い印象です。aikoがよく舐めているというマヌカハニーと同じものを一度舐めたことがありますが、あれはほんとに苦い。
収録シングル:「ハチミツ」
収録アルバム:「GIRLIE」

3.小鳥公園
GRAPEVINE やThe autumn stoneもプロデュースしてた根岸孝旨さんのアレンジ。「ビードロの夜」とアルバム収録の座を競ったらしい。骨太な演奏はこの曲でも聴けます。「コウモリ」や「ゴミ箱」といった単語が出てくる曲はなかなかないでしょう。「あと↑ちょっと↑で手がつなーげたのにー」と小刻みに声が裏返るのが心地よいです。迂闊に再現しようとすると上手くいきません。あきらめてaikoの歌を聴こう。

4.三国駅(instrumental)
ピアノだけの部分が長く、PVの印象もあって卒業式感があります。のちに「卒業式」という曲もできるのですが。


※シングルコレクション「aikoの詩。」収録曲についてはリンク先にも記事があります。