見出し画像

<戦時下の一品> 国策栄養食製器

 こちらの品は、本体、箱、レシピ集の栞(演説付き)をまとめて入手いたしました。製造年は特に記載されていませんが「節米報国」(出ました!報国!)「新東亜建設の大理想」といった言葉がレシピ集の説明文に出てきますので、日中戦争がなかなか終わらず、新東亜建設という言葉が出てきた1939(昭和14)年から、節米が特に叫ばれた1940(昭和15)年ころのものとみられます。おそらく、1940年ごろの米不作に合わせたものでしょう。

国策栄養食製器とある段ボール箱
しおりを除く本体、用途別の口金(プラスチック、磁器製)
使い方が一目で解る「栄養の栞」

 お気づきになられたと思いますが、箱は「国策栄養食製器」、しおりは「国策栄養代用食器」、本体は「家庭用製麺器」と、名称がばらばらです。特許番号も箱と本体は同じですがしおりは違うという、まあ、戦前にはよくあったことで気にしてはいけないのでしょう。ここでは箱の名称で統一して説明させていただきます。

一番シンプルで解りやすい名称

 本体は長さ15センチほどの木製の筒で、これに木製のピストン、力をいれやすくする木製の輪がついています。筒の先端はプラスチックでしょうか、軽く回して外すことができ、太麺、細麺、平板の3種類を使い分けることが出来ます。

筒状の本体とピストン
口金をはめた状態の筒
材料を入れて、ピストンで押し出す、ということ。製麺器が一番あっていますね

 さて、栄養の栞を開きますと、「節米報国 代用食必要条件」とか「非常時国策線に副った経済と簡易的な家庭必需品」といった宣伝文句が踊っています。

やはり、報国。しつこい。
研究の際には実習員を派遣してくれると親切です

 肝心のレシピはどうなっているでしょうか。うどんやそばは、まあ、分かりやすいですね。栄養と銘打つのは、野菜の切れ端やイナゴの粉などを混ぜてつくれるからですと。

即席ですから、綿棒も何もいりません、が…
栄養国策米、といいますが、じゃがいもそのままでは…
栄養代用エビフライとありますが、エビなしでエビの味がするそうです

 最後に「本器の使命」と題した説明文の一部をお見せしますが、これは当時の演説に特徴的な、スローガンを羅列してごまかす空虚なものとわかっていただけるでしょう。しかし、この文章を読み、当時の人は盛り上がったのでしょうか。

新東亜建設、堅忍持久、国策…いや、民間の商品でしょ…

 この調子で、国策だ、報国だ、に囲まれていると、どんな感じでしょう。体験したくはありませんが。

追記・1941(昭和16)年6月の「大丸のカタログ」に本商品が載っていました。停止価格とあるので、1939年には作られていて、少なくとも1941年まで現役だったことが判明しました。そこそこ、売れたんでしょうね。綿棒で伸ばすとか必要ないですから。ちなみに、カタログには「製麺器」となっていました。

関連記事 主婦之友の節米レシピ集

ここまで記事を読んでいただき、感謝します。責任を持って、正しい情報の提供を続けていきます。あなた様からサポートをしていただけますと、さらにこの発信を充実し、出版なども継続できます。よろしくお願いいたします。