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<戦時下の一品> チョキンアソビ

 こちら、おそらく日中戦争当時に作られたとみられる玩具「チョキンアソビ」です。これでそろっているかどうかは不明ですが、ふつうならこうしたおもちゃのお金を使ってやるのは「買い物ごっこ」とかだと思うのですが、誰が何と言おうと、これは「チョキンアソビ」なのです!

紙幣8枚と表題「チョキンアソビ」

 まず、このおもちゃの表題、郵便局の絵があり、少女はパンパンの「貯金袋」を持っています。もしかすると、郵便局が販促、というか貯金促進のためにつくったノベルティーグッズかもしれません。

空に飛行機、背後に郵便局、手には貯金袋

 お金はすべてお札で「少国民銀行」などと入っているのは現代の同様の玩具の「子ども銀行」を連想させます。そして、ほとんど標語が入ったお札ばかりで、これでは買い物ごっこに転用というのも気が引けるーという寸法でしょう。では、横幅8・5センチ、縦5・2センチの円紙幣から。

戦車の絵に標語がふたつも

 一番高額の5円札は、戦車の絵のそばに「勝ち抜く力は貯金から」、お札の上部に「むだをはぶいて国防献金いたしましょう」とあります。

3円札。「弾丸も貯金から」
2円札。控えめに「国債をかいましょう」
1円札。「兵は戦線・銃後は貯金」と語呂もよし。

 少額紙幣3種類は、いずれも横5・3センチ、縦3・2センチです。円札の3分の1サイズですが、いずれも標語は欠かしていません。

5銭札。「国債を買いましょう」

 下の3銭札は、この小さいお札に「兵隊さんよ、ありがとう」「兵隊さんにまけゆよう貯金しましょう」と、2つの標語をねじ込んでいます。

3銭札。ごく小さい字で標語を詰め込んであります。
2銭札。「よい子のあそびは貯金あそび」と、これは宣伝か。

 この中に、4円、4銭がないのは、やはり「死」につながるから避けたのでしょう。本来なら、貯金通帳や国債もほしいところですが、セットになっていたかどうかは不明です。
 子どもにもここまで繰り返し伝えることで、戦争への協力意識が擦り込まれたことでしょう。決して「アソビ」ではなかったのではないか、と感じてなりません。また、大人を相手に遊ぶことも想定されていたのではないでしょうか。こうした裏を勘ぐることなく、子どもには気楽に遊んでいてもらいたいものです。

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