専修大学出版局

専修大学開学百周年にあたる1973年、母体にあたる株式会社専大センチュリーが設立、翌7…

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専修大学開学百周年にあたる1973年、母体にあたる株式会社専大センチュリーが設立、翌74年に大学の出版・印刷を担当する部局として設置された。以来、人文社会学(社会学・文学・心理学)、法学、政治、経済、経営などを中心に、約400点の学術書などを刊行。

最近の記事

コミュニケーションの困難 

生きづらさを考える14考察 序 章 コミュニケーションは難しい? コミュニケーションが「なんとなく、苦手」、と思っている人でも、これまで、コミュニケーションを取ったことがない人は一人もいないはずである。家族や友達、学校、部活、バイト、会社、お店、あらゆるところで、来る日も来る日も一日にいろいろな人といろいろな形で取ってきたと思う。しかし、この本を手に取ってくださった方の中には、「(学校や大学での)コミュニケーションは難しい」「よいコミュニケーションの取り方を知りたい」「(

    • 大相撲の方向性と行司番付再訪

      まえがき 本書は9章より構成されているが、最初は素朴な疑問から出発している。それは次のような問いかけである。 第1章 35代木村庄之助はどんなことを経験しているだろうか。 第2章 行司の自伝や雑誌記事は事実を正しく伝えているだろうか。 第3章 儀式や所作には一定の方向性があるのではないだろうか。 第4章 四本柱の色はどんな変遷を経て現在の四色になっているだろうか。 第5章 明治時代の行司番付記載を横列記載に変えたら、どうなるだろうか。 第6章 大正時代の行司番付記載を横列

      • 戦後政治と「首相演説」1,2

        1 1945-1964 2 1965-1984 序 文 岸田文雄内閣が発足して1年目の2022年10月3日、第201回臨時国会が召集され、岸田・内閣総理大臣(以下、首相と略)は、衆参両院の本会議場で「所信表明演説」を行い、その中で「“信頼と共感”、この姿勢を大切にしながら正道を一歩一歩前に向かって歩んでいく」と述べた。安倍元首相の国葬や「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の問題が問われる中で、岸田首相が所信演説で強調したのは、原点に立ち返る姿勢であった。だが、首相自身

        • ゲーミングで地域通貨を知る

           上越教育大学大学院学校教育研究科准教授の吉田昌幸先生に地域通貨についてご寄稿いただきました。まちづくりや地域の活性化に適しているといわれる地域通貨の導入に向けて、ゲームを利用してシュミレーションを行うという提言がなされています。 ゲーミングで地域通貨を知る 吉田昌幸  日本では2000年代以降、地域通貨が800件ほど立ち上がっています。私たちの調査では、2002年をピークに2008年にかけてその立ち上げ件数は減少傾向となり、2008年以降は毎年15~

        コミュニケーションの困難 

          良貨が悪貨を駆逐する

          専修大学経済学部教授の西部忠先生に、仮想通貨の流通についてご寄稿いただきました。「悪化と良貨」のたとえから、今後、仮想通貨が展開していくときの課題をわかり易く解説いただいています。 良貨が悪貨を駆逐する Good money drives out bad. 西部 忠  経済学の法則の一つに「悪貨が良貨を駆逐する」 (Bad money drives out good.)という「グレシャム法則」がある。19世紀スコットランドの貨幣・信用論者マクロードが16世紀チ

          良貨が悪貨を駆逐する

          放射線被曝と原発をめぐり、科学と倫理を問う

           東京大学名誉教授の島薗進先生にご寄稿いただきました。2011年の東日本大震災の際の原子力発電所事故による被爆の被害について議論するとき、その科学的根拠とはなにか、また倫理観をどのように担保すべきか。いまなお残る課題に対して提言をいただきました。 放射線被曝と原発をめぐり、科学と倫理を問う 島薗 進 ■三・一一の衝撃と個人的な受け止め  二〇一一年二月末からおよそ一ヶ月の間、ヴェネチア(カ・フォスカリ)大学の招聘教授を務める予定でヴェネチア市のアパート

          放射線被曝と原発をめぐり、科学と倫理を問う

          コミュニティの「共感」を広めるための地域通貨

          千葉経済大学短期大学部ビジネスライフ学科准教授・栗田健一先生の寄稿文です。3・11によって顕在化した「所有の精神」に対する「シェアの精神」――モノやサービスをシェアすることについて紹介します。さらにシェアの精神の発展に欠かせない地域通貨の仕組みについて論じています。 コミュニティの「共感」を広めるための地域通貨 栗田健一  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延によって、人々の行動が近視眼的にそして利己的なものへとなりつつある。ドラッグストアには

          コミュニティの「共感」を広めるための地域通貨

          コミュニティ経済と地域通貨

           本書は、地域通貨の意義と可能性を論じることを目的としている。今から20年ほど前に起きた日本での地域通貨のブームはすでに過ぎ去って沈静化した、と思う読者もいるかもしれない。だが、ここ数年の間に地域通貨に対する期待が再び高まるようになった。地域通貨は時代遅れの古めかしい取り組みでは決してない。人々はその可能性に改めて目を向け始めている。いまや地域通貨の新たな取り組みが次々と生まれている。ここでは、主に2つの注目すべき出来事について述べておきたい。まず、地域通貨の取り組みが多様化

          コミュニティ経済と地域通貨

          合成生物学は社会に何をもたらすか

           合成生物学という新たな科学の領域が急速に拡大しつつある。「生物を人為的に合成する」科学ということだが、それまでにもなかったわけではないが、1990年代以降、その発展が著しい。これは短時間でゲノム解析ができるようになり、さらにはゲノムの組み替えが容易にできるようになったことが大きな要因となっている。  2020年にジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエの二人がノーベル賞を受賞したゲノム編集技術、クリスパー・キャス9ができたのは2012年だが、これによって合成

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          山地と人間

             はじめに 日本は山国と呼ばれる。国土の大半を山地が占め、海岸沿いや盆地のわずかな平地に多くの人々が住む。だからこそ、平地のどこであっても山地を仰ぎ見ることができ、平地から容易に山地に出向くことができる。一方でまた、山地は人の住む場であり、活動の舞台でもあった。そして、山地で得られた資源に、平地に住む人間は長らく依存してきたし、現代においては、山地が平地の人々のレクリエーションの場、住む場ともなっている。その意味で、日本人にとって山地は身近な存在である。 山地がすぐ