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ブルックリン物語 #40 メキシコ紀行 (後編) 〜La Bikina〜

太陽のピラミッドとはよく言ったもので、頂上の「天に近い場所」で両手を広げると「宇宙」にちょっぴり近くなったような気持ちになる。

それは言うならば「無」の境地。

「自然」と一体になったような不思議な感覚。周りで記念撮影する人たちの賑わいが消えて「風の音」だけが自分の耳に聞こえる。さっきまでここで27年前の僕が「写ルンです!」で撮影していた気がする。

同じようなピラミッドの縁で同じように足を震わせ同じように地上を覗き込み、緑と青と茶の色のメキシコの自然を目に写し込んだ。もう少しここに居ようと、太陽が少し傾いて午前中より暑くなった天辺で、空をもう一度仰ぐ。

「繋がった!」

1994年NYを諦め日本での活動に集中しようと、アパートの荷物を引き払った時、クィーンズボロブリッジから一回だけマンハッタン島を振り返った。「さよなら、NY!でも人生何があるかわからない。次にもし万が一ここに来ることがあったら、その時は……永住だな」とありもしないような幻想をつぶやく。日本に帰ってからは無我夢中で、その「一瞬のつぶやき」などすっかり忘れていた。友達の結婚式で再びNYを訪れ帰りの空港に向かう途中、ふと同じ橋の真ん中でまた同じようにマンハッタン島を振り返ってしまった。その時、僕は過去と未来を橋の上で「繋げた」のだ。数ヶ月後にジャズ大学であるニュースクールを受験、いきなり想像もつかない速さでNYに戻ってくることになる。

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