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さあ、神無月だ、出番だよ

 今年の夏は生まれてから1番暑かった。冷房設備の無い職場は連日30℃を超える室温で、ちょうどイベント準備業務で立て込んでいた時期と重なったこともあり、キツい夏だった。

 少し前まで自室で昼寝してるだけで熱中症気味になっていたのに、油断していたらいきなり風が冷たくなり、朝晩は10℃を割る気温になった。突然の晩秋。体が追いつかねえ・・・

なんだかんだで秋だけど、秋は毎年緊張する季節でもある。労働組合や関連する業界団体の年度がわりが10月であることが多いので、この時期に定期大会や総会が集中するのが主な理由。

 例年、大会それ自体の準備でてんやわんやするものだけど、なかでもいちばんキツいのがいわゆる「役選」。だれがどこで何をするかを決める作業。自分のように「労働運動をするために職場に配置されてまーす」みたいなレトロ志向の活動家はともかく、普通の人は家族や今後のキャリアを考えると、おいそれと決断できない。特に職場を休職したり、転居を伴うようなものは。

「たのむ!もうお前しかおらんのや!」

 福岡市内の居酒屋で後輩を口説いたのはもう5年くらい前だったか。この時は自分がやる予定だったポストが職場の事情で急遽できなくなり、新婚の彼に頼み込み、休職して2年間つとめてもらった。家庭はとんでもないことになっていた。

「大丈夫!なんでもサポートするから!大船に乗ったつもりでやってくれ!」

 これも5年前くらい。当時の自分の後継を別の後輩に連日電話して打診し、結局根性で競り勝ち、引き受けてもらった。ちなみに、この直後からのコロナ禍によりわたしの経験は何の役にも立たず、サポートはほとんど意味をなさなかった。

「すまねえ!後生だから決断してくれ!考える時間はある・・・2時間!2時間でなんとか整理してくれい!」

もはや鬼畜。結局この2時間で向こう1年の休職と転居が決まってしまった彼は結婚の予定も先送りすることとなった。

「いまは過渡期や!この難局を切り抜けるにはお前の力が必要だ!時代を作ってこい!」

今年、ついには身近な仲間さえ送り出した。今回も休職を伴うため、職場との折衝ではずいぶんと嫌な思いもさせてしまった。調子のいいことを言ったけど、過渡期どころか生き残りを賭けた地獄の局面に叩きこんでしまった気もする。

「お疲れ様〜、元気にしてた?仕事忙しい?あ、そう。ところで、ちょっと話がある

来たか・・・

 今回、自分にも決断の時が来た。いままで邪悪な人買いのごとく、多くの仲間を死地に送り込んできたが、ついにお鉢がまわって来おった。自分のポジションは関連団体への転職のかたちを取るので、12年勤めた職場は退職することになる。

 いままで、わたしに(しつこく)打診を受けていたみなさんは結局はどんな気持ちだったんだろう。いろんな不安もあったかと思う。いま、自分は「よし、やってやるぜ!」という気持ちと「いやいや、こりゃあ自分の手に負えるのか・・・」という気持ちがないまぜになっているようだ。

 まあ、結局楽しみなんだけど。春からの配置となるので、ゴミ屋敷さながらの自宅を片付けて引越しを無事終わらせるのがこの冬の課題になりそう。

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