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春が嫌い

春のうららかな風が優しく包み込む

ハトが寄ってきたので食いかけのおにぎりをあげた

ハトって意外とちゃんと鳥の顔してんのな

あ、カラスが鳴いたから一斉に飛び立った。


外の世界に目を向けられるようになったのは

心に余裕が生まれてきたからだけど、

所詮人間。心が大きくなることなんてない。

単純にすかすかになったんだ

そのスポンジを、日本人は"器が広い人"と呼ぶ

それはもう春が正しいように、そう呼んでいる。


我ながらくそつまらない人間になったと思う。

この余った余裕を外の世界に向けたら、それはそれで良いものが書けるのかもしれない

良いものを書くには、良いものを見る力が必要だから。

春を感じて、人に目を向けて、読書家で───。

でも別にいいものが書きたいわけじゃない

満足いくものが書きたいだけ

面白い人間でありたかっただけ

ほんとは自分以外何も要らなかった


流れ着く先がみんな桜の木の下みたいな、
そんなつまらない惰性の世界、
俺がぶっ壊してやんよと意気込んでいたあの頃

今では好きにすればいいさと随分優しくそして冷たくなってしまった



春は嫌いだ

暖かい風が心地よいから嫌いだ

美しさに酔わされてしまうから嫌いだ

きっと数時間後にはこれを書いた人格なんて忘れて春を詠っているのだろう

僕を忘れて、寂しさに溶けていく君は哀れだと思う 

そんな僕すらも君は寛大な心で許すのだろうけど、

優しさも所詮は宗教。

この穴を埋めてくれはしない。


その点、音楽はいい

優しさも暴力も兼ね備えてる

だから好きだ


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