マガジンのカバー画像

走り書き

10
詩にもなりきれず、小説の一節にもなりきれなかった、フィクションなのかノンフィクションなのかもよく分からないかけらたちを置いておく場所
運営しているクリエイター

#散文詩

竹下通り

朝から竹下通りのざわめきにうんざりする。クレープにコットンキャンディ、なぜか螺旋状のチップス。おこぼれを狙う鳥たち。
美容院に行くにはそこを抜けなくてはいけない。
たかが竹下通りの人混みでへこたれるなんて、まるでおのぼりさんかと思うが、こう見えて、もう20年近く東京で暮らしている。しかもこの竹下通りを抜けた美容室には8年ほど通っている。

美容院に行くのにどれくらい綺麗にしていくべきか、that

もっとみる

群衆

5万人の群衆が行き交う中、階下によく知った姿を見とめる。何年ぶりだろうか、ひどく猫背なその出立ちを見留めたのは。
慌てて階段を駆け下り、群衆を掻き分ける。
追いつけない、見失いそうだった。

次の瞬間、名残惜しそうに立ち止まって会場を振り返る君と目が合った気がした。声が出ない、名前を呼びたいのに。言葉は空に吸い込まれ、僕はなんとかパクパクと口を動かした。

君は気が付かない様子で、もう前を向いて歩

もっとみる