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#7「EDO STYLE」~本当の健康食とは~(後編)

日本酒の枠を超え、色とりどりの分野で活躍する「ニホンジン」を訪ね、 日本の輪を広げて行きます。それはまさに「和の輪」。 第7回のゲストは、食文化史研究家・永山久夫さんです。
※#7の続編です。 前編、中編はこちら

永山久夫さん(左)と薄井一樹(右)

EDOは完全サスティナブル

薄井 永山さんとお話してきて、江戸って実にサスティナブルだなあ、と改めて思います。
 
永山 江戸時代は完全にサステナブルです。今、地球が目指そうとする方向性を江戸の人たちは持っていたんです。サステナブルじゃないと地球はもちません。気候は沸騰するだろうし、もう冬なんか来なくなっちゃうかもしれない。ツンドラみたいなところで仮死状態にあったウイルスが覚醒するんですよ。で、新しい病気が流行る可能性も!

薄井 食品も加工されたものが大半で全然サステナブルじゃないし・・・。

永山 人間は勝手な生活してますけども、もう許されない。世界終末時計の針はあと残り90秒ぐらいしかないと叫ばれてもいます。実際は何百年って単位でしょうけど・・・そんな時代に、江戸時代への回帰を薄井さんがやるのは、人類が救いになるので後戻りはできないですよ。

薄井 前に進むしかない!

永山 なぜ江戸時代なのかといえば「素材の旨さを知れ」ってこと。素材の旨さは季節の旨さ。こんな四季が明確な国に住んでいるのに、何で工場で生産したり、粉にして再生産したインスタント食品を食っているのか。ご先祖さまに申し訳ない、バチが当たると思うね。仙禽飲んだら、素材の旨さがわかるからね。そういう感じだから、お酒だけじゃなくて、食べ物をすべて変えて、移動システムや生活の仕方を考えなおすきっかけにして欲しい。

薄井 私たちで農業の会社を作ってまして、少しずつ有機農業の田んぼを増やしているんですね。日本酒を造るためもありますが、今後の展望として子孫たちの口に入るものはとても大切なので、学校給食の米や野菜、そして果実酒の原料であるりんご、梨、ぶどうも有機農業化していく予定です。日本酒が起点になって、今色んな人を巻き込んで有機農業化を、そして二次産業の日本酒の製造・醸造だけじゃなくて、大型のチェーン展開している小売り手店などによってシャッター街になった個人商店を、魚は魚屋さんで、野菜は八百屋さんで、肉は肉屋さんでみたいに復活させたいという構想があるんですよ。有機農業が一番ベースの下地にあってこそできる街づくりなんですけど。

永山 しかしその前提に人口が減っていくということを考えなくちゃいけないんですよ。今は1億2000万人ですけども50年後は8000万人になります。それでその内の半分は65歳以上。子供の数は今の半分になってしまう。そうするとどういう社会になるか、それをまずイマジネーションしないとダメだよね。今の生活の延長線上だと確実に失敗するでしょうね。一番大切な人と人とのコミュニケーションです。シャッター街を復活させるにも、高齢者のニーズを考えないと。国や地方自治団体に頼り切れない!頼りになるのは自分なんですよ!

薄井 自己管理ですか!だから健康長寿食の研究は大事ですね。

永山 それに、お酒もセルフメディケーション効果もある。抗酸化成分も含まれていますから。一口含めば精神的な安らぎが!

永山さんの仕事場を彩る直筆の絵

仕事はじめに一杯のお酒を!

薄井 しかし、自己管理ってのは、正しい知識がないとダメですよね。

永山 ダメです、ダメです。ちゃんと勉強しないと!自分で正しいという判断をするために、ベーシックになる知識ってのは、やっぱり自分で勉強しなくちゃ。

薄井 でも、残念ながら日本人が一番食べている食べ物が、一番毒物とかが入っているわけじゃないですか。それは法律上、毒物とは言ってないからみんな安心して食べているけど、確実に人間の寿命を縮めているというか体に負担がかかっているわけで。でも、それは厚労省も公には言わないし、誰も言わないけど、正しい知識を持っていれば、そういったものは避けて通れるわけですよね、本来は・・・

永山 そういう情報を発信する必要もあるんだろうな。

薄井 例えば酒造りは農業と直結してますからね。気づかないうちに、薬まみれの野菜や、過度な加工食品や粗悪な品質の食べ物を知らず知らずに取っている。僕はなるべく気をつけるようにしていますが。子供たちがそういうものを食べて大人に育っていく過程で、体に負担がかかりながら味覚障害になっていったりとか。体に負担がかかって寿命が縮んでるんだけど、近代の医療の力によって延命させられて、実際は長生きしてるけど健康寿命は短いみたいなことになってるじゃないですか。だから完全にリセットはできないけど、仕組み自体を一度江戸時代に回帰する、食文化を元に戻す方向性を目指してます。

永山 自慢するみたいで申し訳ないんだけど、俺は今89歳なんだよね。あんまり病気したこともなく。で、今色んな人が注目して、取材が来るようになって、今度アメリカからも取材が来るんですけども。みなさん90歳になっても「なんでこんなに仕事できるんだろう」という自分を再発見できたらと!
 
薄井 健康長寿食効果ですね!

永山 美味しい料理は勿論食べて欲しいけど、身体とそしてと頭にいい物を摂って欲しい。私は「健脳食」と呼んでるけど、酒もそう!酒を飲むと顔が赤くなるのは、アルコールで血液の循環が良くなるんですよ。だからその時に食べた酒の肴の栄養成分も身体中に回って必要なところに供給するわけですよ。その命令を出す脳の働きを良くするために、酒をどのタイミングで飲むかってことが大事。できれば仕事始める時にちょこっと飲むといいと思う。
 
薄井 それもっといっぱい言ってください。「仕事始めに一杯」って(笑)
 
永山 アルコール度数があまり高くてなくてフルーティな。香りってのは前頭葉を活性化するから、香りいいのがいいな。まさに仙禽だ!

薄井 ありがとうございます。

永山 江戸スタイルに回帰しながらも、これから薄井さんが作る酒は、今まで見たこともない酒にも期待してますよ。

薄井 健康と結びつかないとダメですね?

永山 そんな具体的に健康なんて言葉じゃなくて、『仙禽』みたいな発想で。それが時代を象徴するんだよな。酒造りの仙人みたいになってもらって!

薄井 仙人!?

永山 常識的な発想じゃなくて。そういう人が少なすぎるから、現代は。「日本はなんておもしろい国なんだろう」と世界中から仙禽の酒蔵を見に来るように、長寿の酒と観光の二本立てでこれからの日本を支えて欲しい! 

薄井 そうなれたら!

永山 酒だけといいながら、化粧品も作ってるって聞いたけど・・・
薄井 うちがやるわけじゃないですけど。有機の素材で作る化粧品の会社が横浜にあるので共同開発です。材料を供給して・・・。
 
永山 いいですね。米麹に含まれるコウジ酸は美肌効果で注目されてますが、ぬかも平安時代から、布袋に入れて身体を洗うのに使った。肌って一番酸化しやすいところですから。ぬかには抗酸化成分が多いから・・・これも薄井さん、研究してください。米ぬかを絞って白い液体ができますから、そこで酒粕をミックスして上手く調整すれば新しい味出来るんじゃないですか?
 
薄井 あまり美味しくはないような・・・(苦笑)

永山 まぁ飲むためには一回熱を下げないとダメだろうけど、ビタミンCはほとんどないから大丈夫です。

薄井 分かりました。ありがとうございました。

永山 おもしろいことやってください!お米で完全にサスティナブルですよ!

※#8に続く


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