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小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと?

15 あの頃、ここに写真、なんて。

書店がユネスコ文化財とかにならないように。
今や全国各地に点在する蔦屋T-SITE。書店という本懐はぶらさずに、それだけに収まりきらない複合施設として認知されている。もちろん、書店は好きだ。好きな作家の小説が刊行されるたびに買いにいくし、何はなくても、ふらっと立ち寄ってしまうスイート・スポット。今は通販サイトが充実してたり、Kindleなどタブレットでもサクサク楽しめる時代だけれど、さらにはコロナ禍のステイ・ホームならばなおさら書店にふらりとコンニチハ!することは控えないといけないのだけれど、それでもやっぱり書店は人類にとって普遍的な存在であってほしい。過去にあって今はない、そんな文化財みたいにさせたくない。そうであるために、書店で本を買うことを意識はしている。こうして、ノートを書くのも楽しいけれど、いつも部屋の本棚や書店の本棚、書庫を空想力学しているのだった。

書店でパネル展。
それで、本をつくるのを生業にしていると、書店とは、本を取り扱っていただくのと同時に、キャンペーン・グッズを取り扱ってもらったり、ポスターを貼ってもらったりと、もうひとつ踏み込んだ関係性になる。その1つに、発売時のトーク・イベントやちょっとしたパネル展などを開催する場合がある。これもまた現在はコロナ禍(もしくは新型コロナがずっとある生活様式へ?)なので、なかなか難しいけれども、これまでにはいくつかそのようなイベントをやってきた。スケートボードの本だったり、パンダの本だったり、固いものから柔らかいものまで、トライさせてもらった。その中で、思い出深いのが、拙著パンダ本シリーズの1発目『HELLO PANDA』のパネル展。千葉の柏・蔦屋T-SITEと大阪の枚方・蔦屋T-SITEで開催した。ポスターやA3出力とか、印画紙にプリントするなど、展示方法に対する選択肢はいろいろあったが、アクリルにプリントするという、重さも質感もコストもズシっとくるものにした。

ひらかたパーク。
なぜか。それは、パンダのパネルでそこまでやったものが、かつてなかったというのが1つ。そして、自分たちにとって思い入れが強い(どれも強いけれど)(しかも海浜と陽浜と優浜という3頭の愛すべきパンダたちが中国へ旅立ってしまった本)1発目のパンダ本だというのが1つ。そして、フォトグラファーの中田くんが枚方に思い出があるというのが大きかった。彼は、10数年前は大阪の大学に通う学生だった。その頃は、蔦屋T-SITEなんてなかったが、ひらかたパークはあった。彼が、彼女(のちの奥様)とデートして親愛の情を高めていったのがそのひらパーだった。ひらパーというのは、今の世代がどう呼んでいるのかはわからないけれど、中田くんが学生時だった頃には、みんなそう呼んでいたという。

ショップAWで見つけてもらえたら。
そんな思い出深い枚方にある蔦屋T-SITEで、パネルを展示する。しかも、枚方・蔦屋T-SITEは、2017年当時、壁一面の本棚がインスタ映えスポットとしてかなり注目されていた。その中に、パンダたちがいる。保護区の森の中にパンダがいるように、多くの色が踊る本棚の中に、パンダのツー・トーンがある。10数年前、この町で彼女とデートをしていた中田くんが、その後、パンダたちの写真を展示することになるとは想像もしていなかっただろう。「アドベンチャーワールドのパンダが好きすぎて、自分が何度も見たくなるような彼らの本をついくりたいのだけど、一緒にやらないか」と、こちらにまさか誘われるとは思っていなかっただろう。その日もアドベンチャーワールドの閉園ギリギリまで撮影した。それから、機材と一緒に、ズッシリと重いパネルたちを車に積んで、枚方へ向かったのを思い出す。なんのことはない話なんだけれども、このような、好きな書店という存在とささやかながら関わった出来事が嬉しい。そして、誰かのちょっとした凱旋みたいな微笑ましさも含まれているとさらに思い出深くなる。展示したパネルの一部は、現在はアドベンチャーワールドのエントランスドーム内のお土産売り場AWに展示されている。15(写真は枚方・蔦屋T-SITEのパネル展示風景/2017年)

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