見出し画像

小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

44 カニージャとベルカンプ。

アルゼンチンのフォワード。
これはフットボールの話。カニージャは、90年代にアルゼンチンの代表チームで快足フォワードとして活躍したフットボーラー。現在は、カニーヒアが正しい読み方として統一されているらしいが、1990年のイタリア・ワールドカップのときは、NHKアナウンサーや解説者が「カニージャ」と連呼していたので、カニージャのままで記憶している。前回大会優勝チームなのに、開幕戦のアフリカの伏兵(この頃はアフリカのチームはまだまだ弱いとされていた。現在はトップリーグに多くの選手を輩出しているけれど)カメルーンにジャイアント・キリングされてしまった。そこからケチがついたわけではないけれど、セリアAのナポリでカレッカ(ブラジルのエース)とともに活躍していて、イタリアっ子には馴染みのはずのマラドーナとアルゼンチンは大会中ひたすらブーイングを浴びせられることになった。これほど憎まれ続けたチームも珍しいけれど、アルゼンチンはそれでも決勝まで残ったからすごい。そんな中で、ブロンドのロン毛をなびかせるカニージャ。彼は、相手チームのバックパスに追いつきそうなほどに足が速かった。大会中、わずか2点しかゴールしていないけれど、しかもどちらも、足先に、頭に、ちょこんと当てただけのゴールだけれど、それは優勝候補ブラジルと地元の大声援を背負ったイタリアという大本命を沈める値千金のゴールだった。得点王に輝いたスキラッチよりも記憶に残っている。

オランダのフォワード。
ベルカンプは、90年代にオランダの代表チームでサイズがあってテクニカルなフォワードとして活躍したフットボーラー。そして、生粋の飛行機嫌いとしても知られている。ハイレベルなプレミアリーグでも素晴らしいパフォーマンスを披露していた彼は、トータルフットボールの全盛期を迎えていたオランダにあってもキングだった。ブロンドを刈り上げた短髪のライオンキング。その彼のゴールで忘れられないのが、1998年フランス・ワールドカップの準々決勝のアルゼンチン戦。試合終了間際、ディフェンダーのデブールからの正確無比な超ロングフィードをチョコンとトラップした”ついでに”相手ディフェンダーをかわして、さらにはキーパーも釘付けにするほど鮮やかなアウトサイドで浮かせたシュート。試合を決める一撃であるのはもちろん、無駄のないシンプルかつ完璧なテクニックによるゴール。美しいにもほどがあった。

カニージャとベルカンプ。
どんどん進化していくフットボール。持て余しすぎてる運動能力の権化のような選手に、テクニックに運動量にフィジカルの強さとヴィジョンなど、すべてに秀でた選手。そんな中で、自分が魅力を感じるのは、完全無欠タイプよりもイマイチ何かが足りてない気がするけれども、時々、とんでもないミラクルとかすごいことをやってのけてくれる選手。90分の試合中、85分はいるのかいないのかパッとしないけれど、たった5分だけで試合を決めてしまう仕事をしてしまうような選手。これはバスケットのように点を取り合うスポーツでは考えられないけれど、フットボールだとありえてしまう。もちろんみんな一流選手だから、クラブチームではアベレージでもすごい結果を残しているけれど、なぜかワールドカップとなると、そういうピンポイントで決定的な選手になるタイプがいる。逆にいうと、短期決戦のワールドカップという大舞台では、徹底的にマークされ、長所を消されまくるほど、目の敵にされているということでもあるのだけれど。わずかなチャンス、わずかなスキをついて、決定的なことをする。それが、1990年のイタリア大会のマラドーナからのスルーパスからのカニージャのゴールだったり、1998年のフランス大会のデブールからのロングフィードからのベルカンプのゴールだったりする。これに近いのはフランス代表のジダンとアンリのホットライン(2006年のドイツ大会のブラジル戦)とかかな。個人的には、今のところのワールドカップにおける一番のビューティフル・モーメントはベルカンプのそのゴールだ。44
(写真は一撃必殺、蜂のように刺すカウンターがモノを言う時があるボクシング)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?