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2022|作文|365日のバガテル

『動物さまの言うとおり』

2017年6月。
拙著パンダ本シリーズの第1弾『HELLO PANDA』が出版された。パンダの本をつくる前から、大学出てからは本や雑誌をつくる仕事しかしてこなかった。なので、パンダだから本をつくったというより、ひたすらパンダのかわいい写真を贅沢にページにしたような本を自分が欲しくなって、つくってしまった。というのが本当のところ。これについては、『ほぼ日』のインタビューやラジオなどでも語らせてもらっているけれども。とにかく、今では珍しくない、ひたすらかわいい写真たちがつまったパンダ本たち。でも、わずか5年前には、どちらかというとパンダ・トリビア、パンダ・インテリジェンスな方向の本が多かったと思う。だから、写真家の菅野ぱんださんによる数少ないグラビア系の写真集は何度も見返した。中国のパンダ本には、めちゃくちゃかわいい、しかもロケーション的にも希少な写真が載っている反面、けっこうなバリューでパンダの絵本みたいなのが収録されていたのもあった。それが悪いんじゃくて、もっとひたすらにパンダの写真を見たかった。なかなか会いに行けない、見れない、そんな存在のパンダを思う存分見たかった。そのツールは、インスタでもネットでもなんでもいいのだけれど、1冊にまとめられていると、また感じかたが違ってくるので、どうしても本で見たかった。まあ、これは本をつくってきた自分の性分なんだろうと思う。周囲の人はそこまで本にこだわってはいないとも思った。いくらでも、ディグレば、かわいい写真や動画が出てくる時代だし、ライブ中継なんかもある。それでもいい。ただ、ありがたいことに、自分は本にこだわり続けてこれたし、それを作る機会に恵まれていた。

2018年1月。
前年にアドベンチャーワールドから中国の成都へと旅立っていった海浜・陽浜・優浜の3頭。彼らを追いかけるかたちで、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で朝から晩まで撮影している頃、拙著パンダ本シリーズの第2弾『PANDA MENTAL』が出版された。第1弾『HELLO PANDA』の最後の稿でも触れた、パンダメンタルという自分の造語を引き継ぐかたちでタイトルにした1冊だった。1日の終わりにパンダを、なんていう少し気取った(毒された)キャッチをつけた。とかく、そういうことをすると、拒否反応的なものも出てくるのだけれど、偽らざる正直なパンダへのリスペクトと共感は、やはり自分の中で揺るぎないものだった。もともと、パンダをはじめとする動物図鑑をつくる気はないというか、そのようなパートを担うことは念頭にない。適材適所、自分が得意な目線と特異な目線でひたすらつくっていくだけ。パンダのすべてが解明できずに謎と不思議が多いと言われるように、ある意味で自由な目線(もちろん生き物に対する愛情をもって)で、パンダを捉えていくことによって、パンダメンタルという部分を考えるようになったと思う。そんな感じで、アドベンチャーワールドの、とくに桜浜と桃浜の双子のセッションを眺めながら、自分の中の空想力学を膨らませつつも、嘘のない直視した写真はどんどん溜まっていった。気づけば、2021年にはシリーズ6冊目になる『HELLO PANDAと』を出版していた。

2022年3月。
ことあるごとに書いたり、言ったり、そして日々にフィーバックしてきたパンダメンタルというテーマだかスタイルだか考え方だか感じ方だか空想力学。それが、このたび、取材対象になった。パンダ、もちろんかわいい。それで、そのかわいいとこもさることながら、パンダメンタルというところをフックアップして興味をもってもらった。それは、嬉しいというよりも、アプローチしてきてくれたディレクターが、けっこう変わった目線をお持ちなんだなと思えて、笑ってしまった。B級ワードというか、造語で、しかも動物博士でも心理学者でもない自分に対して、パンダメンタルという部分で取材したいという。こういう不思議な出来事なことがあるのも、パンダならではなのかもしれない。その番組は、『動物さまの言うとおり』というのだけれど、他の動物のパートは、専門的な方々が担っている。そして、パンダではなく、このパンダメンタルのパートだけ、自分がピックアップされている。それは異質といえば異質なんだけれども、あくまでもバラエティ番組の構成なので、温かい目で見てもらえたら(許してもらえたら)と思う。ただ、パンダメンタルという考え方やヒントは、自分自身がそれこそパンダにそれを見出してからひたすらブレることなく生活の中に取り込もうとして続けていること。そこにフォーカスされたことが、やはり笑えるし、不思議だ。パンダに魅せられて、そこに夢中になっていると、こういうこともあるのだなと実感している。パンダには常にギフトされてばかり。だからこそ、パンダの不思議な力(魅力)を、これからも大切にしていきたい。

https://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/20220182.html

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