今改めて自分のために服を作ろうと思う
たくさんの洋服を買い集めるのではなくて、本当に好きなもの、厳選したお気に入りのアイテムだけをワードローブに入れたいと思っている。
そうなると「とりあえず」が通用しないので、無闇に洋服は買えない。愛着のある大好きなものばかりのワードローブにそこまでお気に入りではないアイテムを迎え入れたくないと感じるから。
それでもシーズン毎やその時々で欲しいアイテムはあって。「こういうデザインで、こういう素材で」と頭の中で先行して完成されてしまい、具体的なデザインイメージが強くありすぎて理想通りの現物に辿り着けないでいる。
探しても、ここのデザインが違うんだよなぁとか素材がちょっとなぁとか、そんなことを思って完璧な1着はなかなか見つからないのだ。
ファッションの力
外で遊んだり出歩いたりすることが容易でなくなってから、たくさんのことを考えた。自分と対話する良い機会になったと思うし、強制的に自分の時間ができたからこそ本当に大切なものが見えたという気もする。
その中でどんな状況下でも楽しくいることを忘れないように意識してきた。お家やご近所でもファッションを楽しみ、メイクを楽しみ、お家時間に料理を楽しむ。お家だからできること、やれること。そういった自身の気持ちを盛り上げることに注目して過ごしてきた。
特にファッションはやっぱりわたしのベースにあって。なくても生きていけるものだけれど、あると確実に心を豊かにしてくれるものだと思っている。
お家で過ごす時間が増えたって、お出かけする機会が減ったって、ファッションはいつだって心にパワーを与えてくれる。どんな日もお気に入りの洋服に身を包むことで満足感や充実感を感じられ、自信が湧き、前を向ける。
そのファッションの力や、そこから得る気持ちを再確認してきた。
できないことと引き換えに
ふと、「今欲しいと思ってイメージしている洋服たち、自分で作ろうかな」という気持ちが生まれ始めている。
新しい生活スタイルの中で、できなくなってしまったことと引き換えに何かを新しく始めたい。何かができなくなってしまった分、別の何かをしたい。
ファッションデザイナーという仕事の経験からこれまでも作ろうと思えばいつだって作ることはできたのだけれど、わたしの中でそれは直結して"仕事"になってしまう感覚があって。いくら自分だけのものだからと言って手を抜けない。作るのなら細かいディテールまでデザインしてきちんと型紙から自分サイズに、心を込めて丁寧に作り上げたい。そんな風に思ってしまうからもはや作業ボリュームは仕事並み。どうにも腰が重くなっていたのだ。
それが変化しつつある。
寒さで動くのが億劫になってしまう冬から春になり、動き出したい気持ちが芽生えてきたのかもしれない。
それとも春という始まりの季節に合わせて、わたしも何かを始めたいと思ったのかもしれない。
仕事との向き合い方を改善しようとしているのかもしれない。
理由ははっきり分からないけれどなぜか今、自分のために、自分の心を満たすための洋服を作りたいと思っている。
好きだったことを思い出せたような感覚と、新たな動きへのわくわく。
今このタイミングだからこそできること、やりたいと思えたこと、家時間が増えたことで手をつけられること、そういった縁を大切にして、日常にもっともっと「楽しい」や「好き」を増やしていきたい。
そして心がより満たされるようにファッションの力を感じていたいな。
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