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簡単戦国解説7【素人は戦略を語り、プロは兵站を語る】

 このコーナーでは戦国初心者さんに向けての簡単戦国解説を書かせていただいております。戦国時代や戦国武将さんに詳しくないという方にも、分かりやすくお伝えできるよう心がけました。出回っている文章情報よりふりがなを少し多めに記載しております。「それぐらい読めるよ!」って方も暖かく見ていただけると幸いです。

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 今回のテーマは【素人は戦略を語り、プロは兵站を語る】 

 皆様、戦国時代って聞くと何を思い浮かべますでしょうか? まぁ人それぞれではあると思いますが、鎧兜をまとった武将さんや足軽さんたちが戦っているシーンを思い浮かべる方もおられるのではないでしょうか?

では、戦国武将さんの中で推しがいる方はおられますか? あなたの推し武将さんは誰でしょうか?織田信長?武田信玄?上杉謙信?真田信繁?
はたまた竹中半兵衛?黒田官兵衛?片倉小十郎?

これまた人それぞれではあるものの、比較的 戦に強い人だったりしませんか? 猛将だったり知将だったり。分かります。魅力的ですもんね。分かりやすい魅力を持ってますもんね。

そんな方に、ちょっと小耳にはさんでいただきたい言葉があります。ことわざと言ってよいのか分かりませんが、1980年前後から言われだした言葉だそうです。それは、

素人は戦略を語り、プロは兵站(へいたん)を語る

です。
この「戦略」の部分を「戦術」とするバージョンもありまして、
「素人」の部分が「戦下手」、「プロ」の部分が「戦上手」とするバージョンもありますが、「兵站」の部分はいずれの場合も同じです。

兵站。英語でミリタリィ・ロジスティクス(Military Logistics)。

兵站というのは、兵糧(ひょうろう)、つまり将兵の食料であったり戦闘でつかう武器などの補給物資のことで、広い意味でいえば補給・輸送・管理という3つの要素から成り立つ総合的な軍事業務で、戦闘地帯へ後方から必要な物資や兵員を配置するといった活動全般のことをさします。

簡単にまとめれば、補給に関わることですね。どうでしょう? 戦に強い!と比べると地味な印象でしょうか? でもこの補給が大事なのです。もちろん戦略も戦術も大事です。が、この補給を軽んじてはいくら優れた戦略や戦術があっても、台無しになってしまいかねません。

例えば、自分が戦国大名だったとして、戦に強い家臣が100人いて、1万人の兵士がいたとしても、兵糧が1日分しかなく、武器も在庫がなかったらどうでしょう?
とても戦をすることはできません。大事なのです、補給。

天下統一を果たした豊臣秀吉は、大軍勢をもってして敵対勢力を屈服させていきました。降伏した敵はその傘下に加わり、その軍勢はどんどんふくれ上がっていきます。このときに活躍したのが、この兵站に強い武将さんたちです。

代表的なのは石田三成や大谷吉継。
彼らはふくれ上がる豊臣軍の裏方業務をみごとにこなし、秀吉の天下統一事業を陰で支えました。当時は戦場で活躍することが花形の時代。まず武功は挙げられない裏方仕事は望まれる業務とは言いがたかったかも知れません。ですが、彼らの存在なくして天下統一は成し遂げられなかったことでしょう。

ちなみに・・・
この石田三成さん、不名誉にも戦下手のレッテルが貼られております。理由は関ヶ原の戦いにて敗れたことや、忍城(おしじょう)での戦いにて水攻めにこだわったあげく損害をだし、結局 城も落とせなかったから。

と、言われてはおりましたが、
じつはこの水攻めは三成さんが発案したわけではなく、むしろ反対していたようなのです。彼が書いた書状には

「然処諸勢水攻之用意候て、押寄儀も無之」

と、あり、意味は

「城攻めの諸将は、水攻めと決めており、城方の方へ攻め寄る気もない」

というもので、さらには

「遅々たるへく候哉」

つまり、

「こんなやり方では遅い」

という意見を述べているのです。現在では水攻めにこだわっていたのは秀吉だったのではなかろうかという説が主流の印象です。


石田三成が戦に強いと書かれた史料も私は耳にしたことはありませんが、かといって極端に戦に弱かったかといえば、それもまた何とも言えません。

彼は最近まで良くない印象で語られることが多かったように思えます。それはひとえに関ヶ原の戦いにて徳川家康と敵対したからでしょう。200年以上つづいた江戸時代、神として崇められた家康公に弓ひいた悪人として語られてきたせいでしょう。ですが近年では研究も進み、昔に比べてフェアに見てもらえるようになってきて嬉しい限りです。

なお、大谷吉継もまた裏方が得意な武将さんですが、天下人・秀吉から

「100万の軍勢を率いさせてみたい」

と言わしめております。この方も残念ながら関ヶ原の戦いに敗れ散ってしまいましたが、善戦します。裏方の能力のみならず、武力もなかなかにあった方なのではないでしょうか。

またまた、ちなみに・・・
戦術と戦略の違いについても簡単に書いておこうかと思います。と、その前に『目標』を設定する必要がありますね。

『戦略』=目標を達成するための計画。

『戦術』=その戦略を達成するためにとるべき行動。

戦略は大まかな方向性、
戦術は実際の戦場で具体的にどう戦うか、みたいに捉えると良いでしょうかね。

とにかく軍事力で攻めつづけるのか、それとも他国と同盟した上で戦をするのか、北側へ向かって領土を広げていくのか、などは戦略。
囮(おとり)部隊で敵部隊に攻めかかり、あえて劣勢をよそおって退却し、追ってきた敵部隊を伏兵で囲んで殲滅(せんめつ)する、などは戦術となります。

あ、ちなみに殲滅という言葉が出てきましたが、殲滅と全滅は違います。とか言い出したらきりがないので今回はここまでとします。専門用語もたくさんあってまぎらわしいですね。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


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