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右手首骨折顛末

2021年2月5日(金)の朝、徒歩で通勤の途中、横断歩道で転倒して右手首を骨折。色々な学びのあった、人生初めての骨折体験を備忘録として残しておきます。

凍結路面で転びました

この冬は仙台でも雪が降ることが多く、前日の2月4日も午後から雪でした。翌朝8時過ぎ、片平の職場に近い横断歩道を渡り切る直前に滑ってしまい、とっさに右手を突いた途端、頭が真っ白になりました……。右手が自分のモノでは無くなった感じがあり、側にいた方が起こしてくださって、歩道まで連れて行って頂きました。眼鏡が吹っ飛び、ツルが曲がって、使えなくなりました。幸い近視だったので、左手でiPhoneを操作し、秘書さんに電話で連絡を取り、その日の面談、会議等のキャンセルをお願いし、さらに救急車の手配をしてもらいました。

消防署は比較的近くだったので、10分くらいで救急車が到着。車内で検温等行った上で、搬送先を探します。救急隊員は3名体制。1人が電話をかけている間に、残りの2名で応急措置として添え木をして頂き、三角巾で右腕を吊るす、典型的な怪我人の姿になりました。2件目で受け入れ先が決まり、搬送。痛みで気が遠くなりそうでした……。

初日の措置

受け入れ先の病院はコロナの患者さんは引き受けない方針のところでした。今回、救急車を降りてからは、直接、整形外科の外来へ。しばらくの後に、外来担当の先生が診察され、看護師さんに付き添われてX線とCTを撮影して頂きました。今どきなので、もちろんディジタル画像。典型的な橈骨遠位端骨折(骨折部が手の甲の方向にずれるコレス骨折)でした。CTを見せて頂き、動画で記録しました。3Dで見られるとわかりやすいですね(下の図はそのコマをスクショ)。

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この日は応急処置をして頂き(引っ張って、少しでも正しい位置に骨を戻す)、ギプスをして終了。

会計では「労災認定になると思いますので、200%を自費で払って下さい」と言われましたが(しかも保険証を持っていなかった)、クレジットカードがあったので事なきを得ました。

ロキソニン(鎮痛剤)とムコスタ(胃薬)を処方されていましたが、とにかく、眼鏡も無いので外にいることが不安で自宅に戻りたかったので、薬局には寄らず、タクシーで自宅まで。荷物を運んで頂いたり、乗り降りを手伝って下さった運転手さん、マンションの管理人さん、有難うございました。痛みは常備しているAdvilで押さえました。

翌朝の受診〜オペまで

翌朝、手術を担当される先生(東北大学医学部卒)の診察を受けました。現在、標準的な治療法となっているチタンプレート固定の説明を受けて、同意し(右手なのでサインがしにくいこと……)、術前検査としての胸部X線撮影、採血などが行われました。かつてはギプスで4週間固定だったことを考えると、医療の進歩を感じます。

労災手続きについて、秘書さんに進めてもらいつつも、まだ書類が整わず、この日も自費。

オペの日は2月9日(火)と決まり、この日に予定されていた会議欠席等のお願いをすることになり、申し訳ない気持ちでした。さらに、論文やら申請書やら抱えていて(←まぁ、これは常時とも言えますが)、右手でキーボードを打てないことがもっともストレスフルでした。

簡単なメールやチャットは、iPhoneの音声入力の方が早いことに気づきました。Wordの書類で長い文章を書くのに、音声入力も使ってみましたが、専門用語などが多く、種々の直しがやはり必要です。とはいえ、最初から全部タイプするよりも身体的には楽でした。

痛みは減衰しつつも慢性化していて、痛いことが平常のような感じでした。炎症があり、右手が熱を帯びていました。SNSに骨折したことを報告すると、同世代の女性の友人たちが「私も昨年……」「姉が2年前に……」などとメッセージをくださって、なるほど、そういうお年頃かもしれないと思いました。

入院にあたっては、手書きで記入しなければならないところが多々あり、早くオンライン化して欲しいと思いました。色々なことが不便で、種々の動作は両手が協力して行っているのだとよくわかりました。物理学で言うところの「作用反作用」を実感しました。

1泊入院で手術

待ちに待った2月9日(火)朝9時に受付通って病棟へ。レンタルの術衣に着替えて待機したのち、10時半頃より執刀医の先生による伝達麻酔(神経ブロック)。超音波ガイド下で、右鎖骨の上の窪みから麻酔薬を注入。徐々に感覚が乏しくなり、病室へ戻った頃には、私の右手は「何この物体?」という存在になりました。

左手に抗生剤等を入れるための点滴用の針を刺され、左手も不自由になりました。待っている間など、もう少し仕事できるかと思っていたのですが、これは誤算……。

オペ開始は午後1時頃からでした。伝達麻酔なので、意識清明な状態で行われます。俎板の上の鯉。ドキドキ……。

最近のオペ室のハイテク化はすごいですね。もちろん透視下で行われ、骨にドリルで穴を開けたら、その深さを2D画面上で測定して「18ミリね!」などと先生が声をかけ、器具出しの手術部看護師さんが、該当するネジを渡します。

オペ室から病室に戻ったのが3時過ぎ。帰りは車椅子でした。先生からは「約10時間後ぐらいから麻酔が醒めてくるので、痛みが出ます。遠慮せず言って下さい。鎮痛剤使います」とのこと。すでに"先輩"のお友達からも「術後の痛みがとても辛かった」とのことでしたので、予めロキソニンを持参。1階の売店に看護助手の方に付き添って頂き、薬を飲むためのミネラルウォーターとコーヒーを買って戻りました。本当は食後に飲むべきですが、鎮痛剤をまずは5時頃に飲みました。

担当医の先生が様子を見に来られたついでに、術後の画像を印刷してお渡し下さいました。

スクリーンショット 2021-02-23 17.30.00

さて、朝から実は固形物は摂取していなかったので、待ちに待った夕食。左手でスプーンで頂きました。美味しゅうございました。

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夜中に2回、10時頃と3時頃だったでしょうか、点滴で鎮痛剤を入れて頂き、痛みはマックスで8/10くらいの自覚症状まででなんとかなりました。

翌朝、朝食後、先生が病室まで来られて術部を確認。術部のガーゼ(に相当する、もっと洗練されたもの)を取り替えて、シーネで固定して頂きました。水をかけると固まる素材でできている材料を、腕や手に合わせて切って包帯で装着するという匠の技を拝見しました。整形外科って、アートですね……。さらに抗生剤を1袋点滴してから退院。

この時点でまだ労災処理ができず、お会計は次回へ持ち越し(入院時の保証金を預けたまま)。

コロナ+骨折+地震

次の受診日は2月13日(土)。大学病院のように混んでいないので助かります。この日は、シーネを外して「装具」に替えることとなりました。予想よりもサクサクと素早い展開です。最近の治療方針は、長く固定すると癒着が起きたり運動機能が損なわれるので、むしろ早くリハビリを、ということのようです。

腫れは徐々に収まりつつありましたが、当初はパンパンに膨らんでいて、そのため、非常に指を動かしにくい状態でした。

整形外科の後に、リハビリ科で作業療法士の方にしっかり動かし方を習いました。まずは指からです。これまで楽なポジションで固まっていた指を曲げるだけで、伸ばされる筋や腱が痛みます。小さな部位ですが、ストレッチをしている感覚です。動かしているのは右手だけなのに、全身運動のように疲れます……。

そんな中、夜の23:08にM7.3の福島県沖地震! 仙台もかなり揺れました。当初、宮城県南部で震度6弱とのことでしたが、その後の詳細な情報で仙台市青葉区では震度5強。

やれやれ、コロナに加えて骨折だと思ったら、地震まで襲ってくるとは……。三重苦です。そもそも、昨年が厄年だったのに厄払いをしなかったことを後悔しています。幸い、免震マンションであったことと、揺れの方向が本棚の本が落下する方向ではなかったので、最小限の被害で済みました。

翌朝、日曜日でしたが研究室に出てくれた有志から画像が送られてきました。10年前には同じ建物の9階にいて、純水装置や顕微鏡が倒れて大変な状況でしたが、その後、4階に引っ越したことは正解だったと言えるでしょう。

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実は10年前、1月頭にボストンの歩道で転んで顔面着地し、その後、3月に東日本大震災となったので、今回はそのデジャブか……と暗澹たる気持ちになったのですが、とりあえず、その後の余震も大きなものは無いようです。

抜糸、術後のX線

2月16日(火)、オペから1週間で抜糸。傷口はしっかりくっついていました。有難う、私の皮膚の細胞さん。

2月20日(土)、術後のX線撮影。画像の1枚をサムネイル画像にしました。尺骨の先端は線維性に繋がるかもしれないとのこと。

両日とも作業療法士さんからリハビリについてご教示。現状は、親指の動きがまだ宜しくないので(深く曲げることが困難)、そのあたりを中心にリハビリを続ける必要あり。現状ではキーボード入力ではあまり親指を使わないので(スペースキーは左の親指担当)、かなり以前のタイピング速度に戻りつつあります。

持って良い重さとして現在は250 gと決められていて、3月になったら、撚る動作のリハビリが加わり、重さも500 gにアップする予定です。

興味深かった体験①:伝達麻酔の醒めるとき

今回の体験でもっとも興味深かったことを記しておきます。

上肢の伝達麻酔は、腕神経叢に麻酔液を注入することにより、腕全体の神経をブロックします。そのため、痛みを感じないだけでなく、動かすことができなくなります。さらに、自分の腕がどこにあるのか、感覚系全体の入力がなくなり、ベッドから立ち上がったときに体の右側にドンと何か生暖かいモノがぶつかった、と思ったら、それは自分の腕だった、というような状態になりました。どこかで「死体を持ち上げるのは重い」という話を読んだことを思い出しました。

さて、興味深かったのはこの麻酔が醒めていくときの感覚です。

術前術後、自分の腕は、曲げた状態で右側の胸のあたりにあるような感覚でした。実際には、まっすぐただベッドの上にあるにも関わらず。そして、徐々に感覚が戻ってくるとき、右手をよっこらしょとリアルに胸の上にもってきて、左手で右手の指を順番に触ると、脳の中ではどの指を触っているのかが再現されます。なるほど、触覚が先に戻るのね……と思ったのですが、そこに指があるという位置の感覚が無いのです。

もう少し麻酔が醒めて、指を動かそうとしてみると、ほとんど動かないのですが、脳の中では確かに、こうすると指が動くはず、という神経活動をしている感覚がありました。これはまさにBrain-machine-interface(BMI)の実体験に近いのではと思いました。うまくフィードバックを繰り返すことができれば、たしかにBMIはできそうな気がします。(どのように応用するかについては、ここでは論じません。)

興味深かった体験②:角化層の脱離

骨折から4日で手術、そして術後数日の間は、右腕が肘から指先まで腫れてパンパンになっていました。腕だけで何キロあるのか、と思うほど、重たくも感じました。さて、どうなるかと思って観察していくと、腫れが引いてきたときに、日光に当たる職業の老人のような皮膚になりました(象皮病の腫れが無いようなイメージ)。うゎ、このままだったらどうしよう……と思っていたら、術後1週間くらいから、どんどん角化層が剥がれていきました。一皮むけたような状態です。

組織学的には、皮膚の基底細胞(幹細胞)から角化細胞に分化して、やがて剥離していくのですが、腫れて限界まで物理的に引き伸ばされてしまった部分の皮膚の幹細胞たちが一斉に急いで新たな角化層を作ったようです。身体ってすごい。

興味深かった体験③:介護用グッズ

右利きだったので、種々の動作が困難ですが、最初に購入したのは左利き用のハサミでした。世の中には開封しなければならないものが溢れているのです。レターナイフは左手でもなんとか使えます。

便利だった介護用スプーン。ほんのちょっとの角度が付いているだけで違いますね。不思議です。

お箸もこんなものがあります。これなら、お豆1粒までつまめます。考えた方、素晴らしい!

https://item.rakuten.co.jp/soukai/4530191000115/

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爪を研ぐための電動ヤスリ。必ずしも介護用ではないようですが、便利だからと、"先輩"が送って下さいました。

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それにしても、自分の動作が子どもに戻ったような感覚です。食品が入ったビニールの袋がうまく開けられないと、歯を使いたいという気持ちになるのは、記憶には留まっていないものの、動作の神経回路としては基底核あたりに残っているのでしょうか……。

障がいからの回復に向けて

今回、典型的な橈骨骨折の体験をし、アクティビティが半減どころではないことが分かりました。利き手が使えないというだけでなく、日常生活は両手で行う動作にあふれていて、それらがいちいち困難を突きつけてきます。キーボードは両手でブラインドタッチだったのですが、右手でタイピングができない間、キーを見ながら一本指打法でタイプするだけで、ヘトヘトに疲れました。コーヒーをドリップすることは左手だけでもできますが、保温用の耐熱ボトルに注いだ後、スクリューキャップを開けるには、脚の間に挟むと良いことを作業療法士さんから教えて頂きました。

問題が脳神経系の場合には、また異なる困難さがあるのだろうと想像できます。下記は名古屋大学名誉教授の美宅成樹先生が、脳梗塞による右半身不随、言語障害からの回復について書かれているブログです。

骨折から2週間余が過ぎて、まだまだリハビリ途中です。先生からは「手術半分、リハビリ半分」と言われています。コンビニで小銭を扱うのが困難なので、キャッシュレスは有り難いと感じました。おそらく、身体的な障がいだけでなく、脳血管障害等による高次機能障害や、加齢による認知症、あるいはある種の神経発達障害のにとっても、キャッシュレスはバリアフリー化の1つの手段となるでしょう。

改めて、disabledな状態は健康と地続きであり、インクルーシブな社会であってほしいと強く思いました。

学生さんたちからのお見舞いのお花

とっても綺麗でした! 和みます……。ありがとう。

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