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アンドロイド転生924

2118年12月1日 夜
ロンドン:カフェ

ミアは息を吸い込んで一気に放った。
「…いつもいつもリョウはgentleだった。だ…だから…I love youなの!私!リョウに!」
リョウは目を丸くして呆気に取られた。

全く意味が分からなかった。いや。先程言ったようにアイラブユーなら分かる。それは分かる。だがミアが?俺に?この…俺に?嘘だ。そんな事は有り得ない。絶対にない。

リョウはミアを暫く見つめてニンマリとした。
「からかっているんだろ?あ。からかってるって分かる?ふざけてるって意味」
「ふざけてない…!」

リョウはミアの真摯な眼差しを受けて絶句した。俺を?この平凡な?いや…平凡どころかブサイクな俺を?悲しいけれど自分の事はよく分かってる。あまりにも残念な容姿だ。

いや…容姿だけじゃない。性格だって自慢なんて出来やしない。自己保身の為に人を陥れた男なんだ。そんな情けない俺を…ミアが好きになるなんて…やっぱり有り得ない。

「お、俺は…最低な野郎だって知ってるだろ?エマさんを罠に嵌めたんだ。酷い奴なんだ」
「知ってるけど…好きになっちゃったの。そんなの関係ないくらいに」

「な、なんで…。ど、どこが?俺なんてイケメンじゃないし…おっさんだし…オタクだし…」
「リョウは自分の魅力を分かってない。素敵だよ。あなたはとってもカッコいいよ」

カッコいいだなんて…まるで宇宙の言葉だ。本当にそれは俺に向けて言っているのか?リョウは呆然となり、暫く…本当に暫く黙り込んでミアを見つめ続けた。そして漸く口を開いた。

「本当…ですか」
「ホントです」
ミアの真剣な眼差しが胸に突き刺さった。こんなに気持ちが高揚したことは初めてだ。

リョウは何度も唇を舐めた。
「あ…有難う…御座います…う…上手く言えないけど…とっとっとても…嬉しいです」
「oh!分かってくれたの!リョウ!」

ミアの輝くような笑顔が眩しかった。こんなに可愛くて綺麗な子が俺を好いてくれるなんて。好きじゃなくて…Love。愛ですか。愛…。俄かにリョウの胸がドキドキとしてきた。

今までこれっぽっちもミアに対して異性だという認識はなかった。いや。勿論女性だとは分かっている。当然だ。だがそんな疚しい気持ちなど微塵もなかったのだ。

歳はひと回りも離れているけれど、なんだか彼女の方が人生の先輩のように感じていた。オタクで世の中の事を全く知らない奥手の自分を導いてくれるような存在なのだ。

リョウは何度も唾を飲み込んだ。果たして今後はどのようにして付き合っていけば良いのだろう。ミアは前のめりになった。
「リョウ!私の恋人になって!クダサイ!」

リョウは呆然となる。
「こ、恋人…」
「いや?」
勢い良く頭を横に振った。嫌なわけない!

ミアは笑った。リョウは目が離せなかった。綺麗だ。凄く綺麗だ。ほ、本当にこれから恋人なのか?でも恋人ってなんだ?どうすればいいんだ?奥手のリョウには全く分からない。

ミアは頭を下げた。
「宜しくお願い致します」
「よ、宜しくお願いしますっ…」
リョウは後で“恋人とは“で検索しようと決めた。


※リョウが打ち明け話をしたシーンです


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