三千世界の鵺を殺し、君と蕚で眠りたい。

娑婆シリーズ


卍あらすじ・世界観卍

 とある辺境にある村で育った少女、白露は、山を穢す物怪を祓う唯一の巫として信仰の対象となっていた。月に二度、舞台の上で踊るのが彼女の役割。しかし祓いの力は徐々に侵略する物怪に押されつつあることを白露は自覚していた。
 不安を抱えつつも、しかし決して己の力でどうにも出来ぬやるせなさに打ちひしがれながら、一生出ることの許されない邸宅の中で鬱々とした日々を送るのだった。
 しかしある日、村の近くに出没した物怪を祓うために駆けつけた白露は、兄弟が襲われる様を見て決死の思いで力を奮う。するとそこに救いの手が差し伸べられた。
 空から降ってきた男は阿嵐と名乗った。彼の家はどうやらこの国の中でも有数の御祓屋の家系なのだという。この出会いにより、閉鎖的な村に隠された謎が解き明かされていく──……。


卍登場人物卍

・滝之雪家……とある山の辺境にある閉鎖的な村をおさめる村長一家。代々長女を巫として祀り、物怪と穢れを祓う役目を負っている。
 父/禅優……現当主。優しいが頑固で臆病者。
長男/士優……二人の弟妹を父の代わりに見守ってきた。家に縛られている白露を救いたいと思っている。
次男/賢優……お堅い性格である兄妹の間に入る潤滑油的な役割を持つ。洞察力が高く強かな一面がある。
長女/白露……おのの役目に忠実であろうとする、空虚な生活に慣れてしまった籠の中の鳥。ただ人々を救いたいという気持ちだけが彼女の心を動かしている。


・東浪見家……五大御祓屋の一つ。五家の中でも最大の領地を持ち、仏からあまたの恩寵を得ている。
 父/阿黎……堅牢な東浪見家を築いた有能な城主であったが、呪いにかけられ病に伏す。妻は出家して呪いを解くために山に篭っている。
長男/阿嵐……幼い頃から他家に命を狙われ、数少ない味方とひっそりと暮らしていたため、世間ではのっぺらぼうの若君と言われている。死んだかと噂されていたが、白露と出会ったのを機に浮世に姿を表すことになる。神使である鶴真、凪白亀、蛇ノ目を従えている。
次男/阿久留……家を留守にしている兄の代わりに邸宅の管理を任されている聡い少年。兄を尊敬しており、その能力を認め、兄こそが家督を継ぐべき逸材であると思っている。


・五大御祓屋(ごだいみはらや)……物怪時代の初期に猛威をふるった五家。祓魔二十四家の中で最も強い祓いの力と仏の御加護を持つ。

東浪見(とらみ)家/一位・戌月領
……どの領よりも多くの神社仏閣を構え、その信仰心は抜きん出ている。魂に干渉して穢れを祓う術に長けている。

椚平(くぬぎだいら)家/二位・申月領
……仏閣は少なく、どの領よりも多く神社を構えている。陰陽師一家として名高く当主は戦略家であり、これまでの戦は占いによって勝利してきた実績がある。


楽々浦(ささうら)家/三位・辰月領
……この家も戦略家だが、力に頼らず本格的な戦場での戦いが得意である。引き際を見定めるのが得意であるため負けることを知らない。雅楽一家で宮廷音楽を営んでいる。


双柳(なみやなぎ)家/四位・牛月領
……物怪時代の初期に編み出された祓いの方法で物怪を倒す。伝統を重んじるあまり新しいものを取り込むことを苦手としており、実力はあるものの上位の家々には劣る。戦より政治に関心があり、朝廷に多くの官人を送っているが、帝はそれをよしとしていない。

栗木坂(くるぎざか)家/五位・子月領
……財政難に陥っている、没落しかけた一家。領地をまとめきらず、あちこちで物怪の侵略が起こっている。当主は戦場にも政治にも消極的になっており、代わりに長男に期待が寄せられている状況である。その昔は女性の祓屋が栄えていたが、当時の当主によって弾圧された過去を持つ。


・祓魔二十四家……五大御祓屋を含む、物怪を祓うことに特化した二十四家の総称。多くは五家の分家であり、五つの領地の各所の神社仏閣を営み、土地を収めている。


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