井槻世菜

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井槻世菜

こちらでは主に読書感想文を書きます。普段は趣味で小説を書いています。 ツイッター https://twitter.com/sena_ituki 小説家になろう https://mypage.syosetu.com/136699/

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  • 小説

    書きためた小説たちです。小説家になろう、カクヨムからの転載です。

最近の記事

「思い出のマーニー」 ジョーン・G・ロビンソン/越前敏弥・ないとうふみこ訳

かなり遅ればせながら、今年になって初めて「思い出のマーニー」の映画を見ました。その後本屋で原作を見かけて、なんとなく手に取っていました。 映画って結構改変されていたのですね。全然知らなかったです。原作では登場人物も舞台もすべてイギリスで、日本の話ではありません。イギリスの海辺の町、リトル・オーバートンの美しい風景とともに、アンナの成長が綴られていきます。 以下、ネタバレだらけなのでお嫌な方はご注意を。 主人公のアンナは、孤独な女の子でした。 少なくとも、自分ではそう感じ

    • (中編小説)アリスの丘に三日月は笑んで 後編

      4.遅れてきた白ウサギ  そっちに行ってみよう、と思ったのは完全に何となくだった。  部屋にはどうしても戻れない。かといって入り口にトボトボ一人で向かう自分もあんまりに情けなくて、ましてやトイレに一人でこもるなんて。  考えあぐねた結果、私はほんの思いつきで店の奥の方へと足を向けた。  パーティールームを右に曲がると、狭い廊下の奥は突き当たりになっている。そこに、スタッフ専用と張り紙のされた小さな赤いドアの姿がある。やや迷った後に、私は鈍く光るドアノブへと手を伸ばした。  

      • (中編小説)アリスの丘に三日月は笑んで 前編

          1.午睡の始まり  私はいわゆる、〝変な子〟だったらしい。  小学校に入りたての頃の話だ。学校という新しい世界で、私が一番感動したのは、本が所狭しと積まれた大きな図書室の存在だった。幼い頃から本の虫だった私は、いつでも好きな本を手に取れる環境に夢中になった。  そして、毎日一人で図書室に入り浸っていた折に、ある日突然担任から呼び出されたのだ。  ――三枝(さえぐさ)さん、どうして友達と遊ばないの? いじめられたりしていない?  呼び出される理由もさっぱりわからなか

        • (童話)ルルと螺旋と虹の橋

           螺旋でできた世界がありました。その世界の中央には、長い長いどこまで続くともしれない銀色の螺旋階段が立っていました。  空はいつも曇りで鉛色の雲がおおっていたので、どれだけ目を凝らしても階段の頂上は見えませんでした。そして地上では、草一本生えない荒涼とした大地が、気の遠くなるほど果てしなく広がっているのでした。  この螺旋の世界では、人々は背中のゼンマイで動いていて、飢えることも乾くこともありませんでした。だからここでの人々の仕事は螺旋階段をのぼることでした。それしか、する

        「思い出のマーニー」 ジョーン・G・ロビンソン/越前敏弥・ないとうふみこ訳

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          6本

        記事

          (中編小説)ちび神様と夜空の花 後編

          三.カヤリ  予報にもなかった突然の夕立が降り始めたのは、絵里が家に帰り着くなり突然のことだった。 「雨止まないわねえ」 「うーん」  台所の母の千里の声に、絵里は縁側で膝を抱えたまま生返事をかえす。 「灯籠とか、花火とか大丈夫かしらねえ」 「うーん……」  「聞いてるの?」と呆れた声が飛んできたが、絵里は無言で膝を抱え直した。  目前の庭の風景は、無数の雨の線に遮られて霞がかったように映る。雑多に手入れされた雑草混じりの芝生に、水滴が打ち付けては土の臭いを散らして弾け飛ぶ

          (中編小説)ちび神様と夜空の花 後編

          (中編小説)ちび神様と夜空の花 前編

          一.不思議な赤色  真夏の射すような日差しも、夏林の豊かな青葉が生い茂るこの場所までは届かない。  静寂の落ちる涼やかな雑木林の神社は、今日も訪れる者などいない――はずだった。  コトリ  控えめな音が響き、本殿の低い階段を上った賽銭箱の向こう、古びた引き戸がすうっと開く。中からひょこりと顔をのぞかせたのは、萌葱色のかすれ十字の着物を着た、小さな男の子。  彼は落ち着かない様子できょろきょろと辺りを見渡し、それから枯れ葉の積もった石階段をとことこと降り始める。十歳程の見

          (中編小説)ちび神様と夜空の花 前編

          迎え火の照らす先(短編小説)

          「千華(ちか)ー」 「やっほ、大輝(たいき)」  校門の端に立って、次々と帰って行く生徒たちの集団を横目で見送っていた千華は、聞こえた声に勢いよく振り返る。比較的長身の茶髪男子が、千華に向かって手を振っているのが目に入った。 「待った?」 「えっと、ちょっとだけ」 「ごめんごめん。上野のやつがさ、漫画の新刊について猛烈に語り出して放してくれねえの。まじあいつオタクかっての。なあ?」  そんな、ほとほと勘弁といった様子で両手を挙げて肩をすくめる大輝が何だかおかしくて、千華は思わ

          迎え火の照らす先(短編小説)

          テストも兼ねて初投稿

          初めまして、世菜と申します。ツイッターだと長文が書きづらいので、こちらに登録してみました。 主に読書感想文を書くつもりですが、突発的に長文を書き綴りたくなった時も何か書くかも知れません。あまり頻度は高くないと思いますが、色々利用していけたらと思います。

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