#11 深海生物「シン〇〇ゾク」
愛媛の農家からコロナ支援もかねてノーワックス減農薬レモンを大量に注文していた。自家製塩レモンを焼酎に好きなだけ放り込み、炭酸をゆっくり注ぐ。いつものレモンサワーよりほんのり増した甘みが口に広がる。悪くないおうち時間だ。
深海での食事
深海生物は近年サンリオによってキャラクター化され、気持ち悪い・怖い存在から、人気生物へ躍進を果たして久しい。(サンリオの公式サイト「シンカイゾク なかまたち」)
少々マイナーだが、「シンカイゾク」の中にセンジュナマコの「センジュさん」というキャラがいる。採餌について以下のように説明されている。
いつもお腹をすかせては、海のそこでひげをうごめかせ、食べものを探している。
まさに、深海生物の採餌方法の一つが堆積物からの採餌である。彼らはデポジットフィーダーズ(Deposit feeders)と呼ばれている。
これらに当てはまるのは、ナマコやヒトデのような棘皮動物だ。
そして、こういったデポジットフィーダーズが深海生物のメイン種である。
一見、泥を食べているようにも見えるが、堆積物にはクジラの死骸といったごちそうが含まれているのだ。
他には、海底から数センチから50センチほど茎をのばし揺れる等して、海水の養分をこしとるタイプの「フィルターフィーダーズ(Filter Feeders)」がいる。
シンカイゾクでいうと、オオグチボヤの「オオグチボヤーズ」がこれにあたる。
日本では唯一富山湾の深海に生息していることがわかっている。一般的なボヤがプランクトンをこしとるのに比べ、オオクチボヤは小さめの甲殻類も口に入れる。
こういった独特な進化は餌が希少な深海への適応の結果だとわかる。
フィルターフィータズの餌となるプランクトンにおいても、特殊な適応を遂げている。
光が届かないため、光合成の代わりに化学物質をエネルギーに変える「化学合成(chemosynthesis)」を行う生物が多くいる。
彼らは海底のオアシスと呼ばれる「熱水噴出孔」などの環境で化学物質を変換する。
熱水噴出孔における生物については以前の『日々勉』で紹介している。
→#1海溝とエビ、#6深海探査。
深海生物の特徴
オオクチボヤのように、深海生物は口やあごが大きいという特徴がある。そして、捕まえた獲物を放しにくいように鋭い牙のような歯を持っているものも多い。
鋭い歯で有名なのは、オニキンメ(fangtooth fish)だ。
シンカイゾクには入れてもらえていないのは、顔が怖すぎるからだろうか。
他にもチョウチンアンコウ(angler fish)の仲間には、鋭い牙が内側に折れ曲がりより一層獲物を逃がしにくい構造になっている種もいる。
チョウチンアンコウは、名前の通り大変有名な「ちょうちん」型の器官を発光させて獲物を引き寄せて捕らえる戦略家でもある。
深海生物としてのユニークさから外すことはできなかったのだろう。「チョウさん」としてしっかりキャラ化されている。
シンカイゾクのキャラクター紹介ページが大変よくできていて、イラストでは横を向いて怖い面を少しでも和らげようとしている想いが伝わってくる。むしろとても愛らしい。
だが、「チョウさん」の詳細ページに行くと、がっつり本物の写真が載せてあり、夢と現実のギャップを突き付けている。
サンリオの深海生物への愛を画面いっぱいに感じられて嬉々とするが、少々複雑な気持ちである。
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