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#6 深海探査

実家から届いた梅を下処理し、氷砂糖とともに瓶に詰める。梅と氷の層の間にできたところどころの隙間はホワイトリカーが埋めてくれる。

少なくとも半年は辛抱だ。瓶の蓋に書いた今日の日付が、飲み頃をはかる目印となる。

前に書いた「海溝とエビ~生命の起源~」で触れてい熱水噴出孔に関連した「目印」の話だ。

生命の起源を解き明かすためにも、熱水噴出孔に関する研究は熱心に行われている。

深海では、気圧・暗闇・温度等に耐える必要がある。また、電波もないため、情報収集には音波が使われる。

このような過酷な環境の中で、

どうやって熱水噴出孔を見つけだすか

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熱水噴出孔から出る水は、地下に浸透した水がマグマによって熱せられ高温の熱水となる。さらに、熱水のため周囲の岩石を溶かし金属物質を含むことになる。

この金属成分が、見つけ出すヒントとなる。

特に、ヘリウム3と鉄に注目する。

ヘリウム3(ヘリウムの同位体)はとても軽い気体でかつどんなものとも結合しない。そのため、噴出孔から出てきた後はそのまま大気に出ていく。それまで530年かかるといわれているが、ヘリウム3の濃度の高い場所を追いかけていくことにより、噴出孔を見つけ出すことができるのだ。

はヘリウム3とは異なり、硫化物や酸化物と結合する。化合物は黒色で、噴出した後に海水で冷やされて沈殿し、周囲に柱状の構造物を作り出す。これは、煙突から煙を出しているようにみえるため、「ブラックスモーカー」と言われている。熱水噴出孔の象徴的な構造物だ。

ブラックスモーカーは比較的高温で、対する低温な噴出孔は白い熱水を噴出する(ホワイトスモーカー)。無色に近いバリウム・カルシウムの硫酸塩鉱物や石英を多く含むためである。

鉄は海中で大変貴重であるため、川からの流入による可能性もあるが、鉄の分布が噴出孔を見つける手がかりとなる。

一部の生物にとって、熱水噴出孔はオアシスのようなものだ。だが、人間には有毒以外のなにものでもない。そのような環境が我々生命の起源だと考えると、生命の進化にロマンを感じざるを得ない。

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