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私の絶望が小説になっていて 【読了】 猫狩り族の長

共感の嵐が吹いた小説を紹介します。


『猫狩り族の長』麻枝 准

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ーーあらすじーーー
海辺で出会った彼女は、美しく饒舌で世界で誰よりも—— 死にたかった。
猫が戯れるのを眺めていた時椿は、断崖絶壁に立つ女性に声をかける。
飛び降りようとする黒髪の美女・十郎丸は、多くのヒット曲をてがける作曲家だった。
彼女は予想に反して、雄弁で自信に満ちた口調で死にたい理由を語ってのける。
人生で初めて出会った才能豊かな人間が堂々と死のうとしている事実に混乱する時椿。
なんとかその日は翻意させ、下宿に連れて帰ることとなる。
なぜか猫に嫌われる死にたい天才作曲家と、何も持たない大学生。
分かりあえない二人の、分かりあえない6日間が、始まった。
(引用元:公式HP)

間違いなく、今年1番笑った小説でした。
十郎丸の死にたい理由が、私の死にたかった理由とあまりにも似ていて、似すぎていて「そうそう、そういうこと!」と、共感の嵐が吹き荒れて、読み進めながらずっと笑っていました。からの号泣。私はこの物語に救われました。私だけじゃないのだと、そう思えました。


死という希望

時椿の世界は私の周りが見ている世界みたいで。皆が教えてくれる世界を私は思い描くことも出来ない。そんな世界があるらしいと頭で理解することしか出来ない。普通の幸せを望むことすら許されていないように感じていました。生きている世界が違うのだから...と。
だから私は、死ぬためにだけ生きてました。それすら辛いから''私''を終わらせることを選ぼうとしてました。そう自分に言い聞かせていました。きっと本当は幸せを求めていて、安心を誰よりも求めていたのに、その気持ちには蓋をしていました。ずっと私にとって死は希望でした。絶望が深まる度に希望に近づこうとしました。一瞬でも確実な安心を求めていました。

2021-03-23

その暗い世界で、もう本当に無理と思った時に「なにをして欲しい?」と聞いてもらえました。真剣に考えて沈黙した後『1人にしないで欲しい』そう言うことが出来ました。どうせ無理だろうから最期に言ってもいいか。みたいな感じだったと思います。
でも、その日から私は1人じゃなくなりました。本当の安心を知りました。
安心して休めることの幸せを知りました。あの時の経験が今も私を支えてくれています。私にとっての時椿に出会いました。


今は以前とは別の意味で毎朝頭に浮かべています。

おはよう、世界
Sena.

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