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司書さんにおける「お大事に」

 三男が欠席することを伝えるため中学校に電話をかけた。うちの子は3人兄弟である。毎年毎年それぞれのクラス、出席番号、担任の名前を覚えておくなんて高等スキルは持っていないので、いつも学校の電話番号とともにそれらを書いたメモをキッチン横のコルクボードに貼ってある。今朝もそれを見ながら電話をかけた。

 「おはようございます!○○小学校です」
そこではじめて私は、今年の春三男が卒業した小学校にかけてしまったことに気がついた。あまりにも見事な間違い電話。もはや清々しい気持ちにすらなり、名乗ってご挨拶でもしたくなったが、朝のお忙しい時間だ丁重にお詫びだけして電話をきった。

 学校は休んだが体調は良い三男と、テスト期間の為昼には帰ってきた次男と、大学もバイトも休みで昼を大きく過ぎてからやっと起きてきた長男に順番にお昼ごはんを出し、私は図書館へ予約していた本を取りに行った。

 美術館と博物館の間にあるここの市立図書館はどっしりと静かでとても好きだ。子ども達が小さいときは借りられる上限の20冊まで絵本を一緒に選んで、重たくなったバッグを運んでいたが今はもう身軽なものだ。気になる本はすぐに図書館のホームページで検索し、予約カートにどんどん入れとくだけ。順番がきたら読み終わった本と予約していた本を受付で交換する。このサイクルが私の日常にすっかり組み込まれている。

 図書館で本を借りるたびに思う。「こんなに借りてもタダ…!?」少しでも興味のアンテナが動いた本を躊躇なく読める。なんてありがたいんだ。だから貸し出しをしてくださってる司書さん、「ありがとうございました」なんて言わなくていいんです。もっとふんぞり返ってていい。ありがとうはこちらなので。

 私はかねがね、病院で会計をしたら「ありがとうございました」ではなく「お大事に」と言われるように、図書館の司書さんにおける「お大事に」的な去り文句はないものかと考えている。「お疲れさまでした」「ご苦労様でした」「ごきげんよう」「ご自愛ください」どれもピンとこない。「Have a niceday!」みたいな感覚のやつを言われたいが「良い1日を!」だとたちまち日本人には馴染みのない去り文句になってしまう。そんなことを考えながら今日も司書さんに負けないくらいしっかりとした「ありがとうございました」を言って予約の本を受け取った。

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