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-Vol.10-プロ野球選手の成功の基準④~通算成績からの成功選手~小関基準~<32年分の選手名鑑から平成とプロ野球選手を読み解く>

筆者が一年一年購入してきた『日刊スポーツプロ野球選手写真名鑑』32年分、32冊から、様々なデータを解析、紹介するnoteのVol.10。

これまで様々な基準で、プロ野球選手の成功について考えて来たが、今回は、通算の打撃成績、投手成績という指標から、プロ野球選手の成功について考えたので紹介したい。

有料部分は最後のまとめのみであるので、是非お気軽に読み進めていただけると嬉しい。

なお、過去3回のプロ野球選手の成功基準に関する記事では、年俸試合に出場すること野手のwRAAを指標としてプロ野球選手の成功基準を考えた。

以下がリンクとなるので、もしご興味があれば読んでいただけると嬉しい

-Vol.05-プロ野球選手の成功の基準①~年俸を指標とした成功基準の検証

-Vol.08-プロ野球選手の成功の基準②~10年続ける、規定打席に到達する、など~

-Vol.09-プロ野球選手の成功の基準➂~打撃で貢献・wRAAを指標に成功を考える~

目次までは、過去の成功基準に関する記事の冒頭と同じで、筆者がプロ野球選手の“成功基準”というものについて考えている事である。
既にお読みの方は、内容がほぼ同じとなるので、目次まで読み飛ばしていただければと思う。

プロ野球関係の書籍などを読んでいると、”様々な指標”、”様々な基準”でプロ野球選手を”成功した選手”と"成功していない選手”に区分し、ドラフトの成果や体格による将来性など、様々な因子との関係を考察している記事に出会うことがあるだろう。

この”様々な指標”は、「出場試合数」であったり、「タイトル獲得」「打撃成績・投手成績」「セイバーメトリクス的指標」など、様々なものがある。

また”様々な基準”については、”成功”というものが、個々人の考え方によってさらに千差万別であるので、基準の設定は難解である。

つまり
「一軍の公式戦に出場」=成功
「通算1000試合出場」=成功

このどちらの等式も正なのである。

色々な成功の基準を、指標を変えながら考えてみたいと思う中で、今回はその成功基準の指標のとして“通算の打撃成績、投手成績”に関連したものを指標として考えることとした。

本記事では、今後、様々な成功基準と比較するためにも、この成功基準に達する割合(確率)を算出した。
この割合は、その成功基準の難易度のような位置づけとなり、様々な成功基準の比較を可能にするものであると考える。

本記事の解析の対象は、日本人選手のみを対象としている。
よって解析の対象は、1989年(平成元年)から2020年(令和2年)の『日刊スポーツ選手写真名鑑』に掲載されている日本人選手3500人についてである。

なお断りなく“選手名鑑”と記述しているものは、一般名称としてのプロ野球選手の選手名鑑を指し、“プロ野球選手写真名鑑”と記述しているものは、私の大好きな『日刊スポーツ選手写真名鑑』のことを指すように記述している。そんなに意識せずとも読み進められるとは思うがご承知いただきたい

なぜ筆者がこのようなシリーズでnoteを書いているか、お時間がある方は、詳細は下記の自己紹介の記事を読んでいただけると嬉しい。

○成績の成功の基準=“小関基準”

「プロ野球問題だらけの12球団」という書籍をご存知であろうか?

2000年(平成12年)から毎年発行されている、主に各球団のドラフト指名について考察している書籍である。

毎年発行されているので今年で21刊目を数えるプロ野球ファンにはお馴染みの書籍だ。

こららを著しているのが、スポーツライターの小関順二氏である。
(ただのド素人である筆者がこのように紹介するのは、本当に申し訳ない。)

小関氏は、上記のような書籍やコラムにおいて、ドラフトの成果などを評価するに当たって、独自のプロ野球選手の成功の基準をよく使用している。

その内の一つが

投手
 50勝<1S・1Hは0.5勝に換算>  かつ  300試合登板
野手
 500安打  かつ  1000試合出場

という基準だ。

通算成績でこれに達すれば、小関氏に成功選手と評価される基準である。

これを、本記事では“小関基準”とし、この基準に達成した選手を成功選手として、この基準について考察した。

なお、小関氏は上記基準は目安としており、厳密に運用している訳では無い。
また、その他の様々な指標も時には用いて、その確かな目で、様々な角度から選手を評価されていることをご承知おき、お読みいただきたい。

○小関基準に達する割合

まずはこの小関基準に達し、成功選手となる人数とその割合を算出したい。

NPB入りの年度毎の、小関基準達成選手の人数、その内2020年(令和2年)シーズン現役の数、現役で未達成の人数を下記に示す。

対象は1989年(平成元年)以降のプロ野球選手写真名鑑に掲載されている日本人選手である。
1988年以前にNPB入りした選手の内、1989年(平成元年)時点で引退している選手は含まれていないので、この点はご注意いただきたい。

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上記から、未達成の現役選手がそれなりにいる年を除き、
投手は、1989年(平成元年)~2007年(平成19年)
野手は、1989年(平成元年)~2006年(平成18年)

にNPB入りした選手に限って、成功選手の割合を算出した。

結果が下記である。

投手 対象人数 794人 基準達成 90人 11.0%
野手 対象人数 733人 基準達成 124人 17.0%

よって、通算成績で小関氏に成功選手と評価される、を成功基準と考えると

投手 成功選手割合 11.0%
野手 成功選手割合 17.0%
となった。

他の基準でもそうであるが、この基準でも、野手に比べて投手の方が達成が難しいことがわかる。
投手と野手は別々に評価される事が多いが、投手は野手に比べて成功と評されるのが難しいというのは頭に入れておいた方が良いだろう。

○小関基準に達するまでの年数~野手

小関基準は通算成績での評価であるがため、NPB年数が浅い選手は達成が難しい。よって評価に使うためにはある程度NPB年数が経っていないと意味が無い。
それでは、小関基準に達するためには何年かかるのであろうか?

今回対象の選手で小関基準に達成した投手、野手について、NPB入り何年で小関基準に達しているか調べ、まとめたので下記に示す。

まずは野手について結果を下記に示す。
横軸が達成にかかった年数、縦軸が人数となっている。
対象は平成以降のプロ野球選手写真名鑑に掲載された1728人の日本人野手についてである。

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野手
500安打  かつ  1000試合出場

野手について、上記の小関基準の達成に要する年数は平均して11.7年であることがわかった。

なお多くの選手が500安打より、1000試合達成に時間がかかっており、達成人数も500安打の方が多い。

単純計算すると

1000 ÷ 143 ≒ 7年

となり、試合数の基準は厳しめで、フル出場で最低7年かかる事がわかる。
ちなみに、1000試合出場連盟表彰の対象ともなっている基準である。

上記のことからも、グラフが示す8年で達成の選手達は驚異的早さでの達成であることがわかるであろう。

その小関基準を8年で達成した14選手を下記に示す。

原  辰徳 巨人
石毛 宏典 ダイエー
広沢 克己 阪神
清原 和博 オリックス
谷  佳知 オリックス
赤星 憲広 阪神
村田 修一 巨人
鳥谷 敬  阪神
坂本 勇人 巨人
長野 久義 広島
大島 洋平 中日
秋山 翔吾 西武
菊池 涼介 広島
鈴木 大地 楽天

そうそうたる選手達であることがわかるだろう。

14選手を眺めるとわかると思うが、これらの選手は、当然ながらNPB入り前から名を上げ、即戦力を期待されてNPB入りし、期待通り1年目から活躍した選手なのである。
この中で高卒でNPB入りした選手が2人いる。
清原 和博 選手
坂本 勇人 選手

高卒一年目の段階からNPBで活躍し続けるのは並大抵の事ではないのは明白だ。この2人はエリート選手の中でも類い稀な選手であるといえるだろう。

一方、この小関基準に20年かけて到達した野手が1人だけいる。

阪神、大洋で活躍した
加藤博一選手

代打というイメージもある選手であるが、20年間大きく成績を落とすこと無く、コツコツと成功基準に達した選手である。

通算成績での成功基準は、このように長い目で見ないといけないという事を考えさせられる良い例であろう。

○小関基準に達するまでの年数~投手

続いて投手について同様に、小関基準に達した年数を下記のグラフに示す。

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投手
50勝(S、Hは1/2勝にカウント)  かつ  300登板

という基準に達する年数は、野手とほぼ似通った、平均11.0年かかるということがわかる。

平均だけを見てみると野手と変わらないように見えるが、グラフの見え方は全く違う。

まず初めに、最短で達成している年数が、野手が8年だったのに対して、投手は最短5年の選手がいる。
野手で14人しかいなかった8年以下も、投手だと48人といるのだ。

それでは下記に、その8年以下で小関基準を達成した48人の投手を示す。

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この投手達を眺めてすぐにわかるであろう。
短期間で小関基準に達する投手は、明らかにクローザーや中継ぎを専門にする投手が多いのだ。

この小関基準も達成する年数については、中継ぎ、クローザーが有利な基準になっていることは明らかであろう。

登板試合数については、先発投手に比べて中継ぎ、クローザーが数字を稼ぎやすいのは明らかでる。
近年は先発投手で年間30登板する投手も少なくなっており、先発投手についてはこの基準が厳しい基準となっている。

この平成の間で、投手の起用方法はかなり変化している。
中継ぎ投手に記録される「H(ホールド)」も平成年間で加えられた指標だ。
“投手”と一くくりにして同じ基準で評価することがより難しくなった
のが、平成の野球の特徴であろう。

○小関基準に達するまでの年数~経歴別

小関基準で成功選手の割合を評価するにあたって、NPB入りの年で区分けして割合を出した。
ただ厳密にいえば同じ年にNPB入りした選手同士だとしても、NPB入りまでの経歴(NPB入り時の年齢)は異なるため、NPB入り後の活躍の仕方は異なる。
このことから、小関基準についてNPB入りまでの経歴が達成に要する年数にどう影響しているか調べてみた。

基準とした小関基準に達するまでの年数を
・NPB入りまでの経歴
1.高校から
2.高校から社会人を経て
3.大学から
4.大学から社会人を経て

の4つに区分して算出した。

その結果を、投手、野手別で下記に示す。

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達成割合については、“全然達成しそうもない年代”も分母に入っているため、参考程度にみてほしい。

上記からわかるように、高卒で即NPB入りする選手は、他と比較して、小関基準に達するのに。平均して1~2年余計にかかっていることがわかる。
この理由は、「高卒は即戦力になりにくい」ということで、明かであろう。

もう一つ、このデータから言えるのは、高卒の成功選手の方が、大卒の成功選手よりも平均して早い年齢で小関基準に達している、ということだ。
年齢だけで考えれば高卒選手の方が、その後も含めて長く活躍している可能性があるということだ。

成功するような選手は、大学など行かずに、高卒即でNPB入りした方が良い、という事で良いだろう

○最後に ~成功基準のまとめ~

今回は小関順二氏の評価基準をそのままお借りして通算成績の成功選手の評価基準として考察を行った。

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