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-Vol.08-プロ野球選手の成功の基準②~10年続ける、規定打席に到達する、など~<32年分の選手名鑑から平成とプロ野球選手を読み解く>

筆者が一年一年購入してきた『日刊スポーツプロ野球選手写真名鑑』32年分、32冊から、様々なデータを解析、紹介するnoteのVol.08。

今回は、プロ野球選手の成功の基準について、プロ野球で選手として試合に出場する、という指標から考えてみたので紹介したい。

有料部分は最後のまとめのみであるので、気軽に読み進めていっていただけるとありがたい。

なお、成功基準①では、年俸を指標としてプロ野球選手の成功基準を考えた。以下がリンクとなるので、もしご興味があれば読んでいただけると嬉しい。

以下目次までは、そのnoteの記事の冒頭と同じで、筆者がプロ野球選手の“成功基準”というものについて考えている事である。
既に「成功基準①」をお読みの方は、内容がほぼ同じとなるので、目次まで読み飛ばしていただければと思う。

プロ野球関係の書籍などを読んでいると、”様々な指標””様々な基準”でプロ野球選手を”成功した選手”と"成功していない選手”に区分し、ドラフトの成果や体格による将来性など、様々な因子との関係を考察している記事に出会うことがあるだろう。

この”様々な指標”は、「出場試合数」であったり、「タイトル獲得」「打撃成績・投手成績」「セイバーメトリクス的指標」など、本当に様々なものがある。

また”様々な基準”については、”成功”というものが、個々人の考え方によってさらに千差万別であるので、基準の設定は難解である。

つまり

「一軍の公式戦に出場」=成功
「通算1000試合出場」=成功

このどちらの等式も正なのである。

色々な成功の基準を、指標を変えながら考えてみたいと思う中で、今回はその成功基準の指標のとして“一軍公式戦に出場すること”に関連したものを指標として考えることとした。

本記事では、今後、様々な成功基準と比較するためにも、この成功基準に達する割合(確率)を算出した。
この割合は、その成功基準の難易度のような位置づけとなり、様々な成功基準の比較を可能にするものであると考える。

本記事の解析の対象は、日本人選手のみを対象としている。
よって解析の対象は、1989年(平成元年)から2020年(令和2年)の『日刊スポーツ選手写真名鑑』に掲載されている日本人選手3500人についてである。

なお断りなく“選手名鑑”と記述しているものは、一般名称としてのプロ野球選手の選手名鑑を指し、“プロ野球選手写真名鑑”と記述しているものは、私の大好きな『日刊スポーツ選手写真名鑑』のことを指すように記述している。そんなに意識せずとも読み進められるとは思うがご承知いただきたい

なぜ筆者がこのようなシリーズでnoteを書いているか、お時間がある方は、詳細は下記の自己紹介の記事を読んでいただけると嬉しい。

○一軍公式戦に出場したらもう成功である

すべての選手が、新人1年目の開幕までは未出場。
どんなに鳴り物入りでNPB入りしても、何があるかはわからないのがプロ野球の世界である。
すべての選手の、まず第一の目標は一軍公式戦デビューであろう。

そしてやはりそれが叶わない選手もいるのが厳しいプロ野球の世界だ。

よって、一軍公式戦に出場したらもう成功である、という考えで、成功割合を算出した。

下記に1989年(平成元年)以降にNPB入りした日本人選手の一軍公式戦未出場の選手について表で表す。
1989年(平成元年)のプロ野球選手写真名鑑にはもちろん1988年(昭和63年)以前にNPB入りした選手の掲載があるが、より正確な割合を出すためにそれらの選手は除いている。
各年度ごとに投手と野手で別々に、総NPB入り選手数(青太字)と未出場の選手数とその割合、2020年(令和2年)シーズンで現役の未出場選手の数を示している。なお2019年(令和元年)シーズン終了時点での結果である。

未出場

未出場2


2015年(平成27年)以降は一軍公式戦未出場ながらも、まだ現役の選手もチラホラといるので、1989年(平成元年)から2014年(平成26年)までにNPB入りした選手で集計し成功割合を算出した。

集計の結果は、
投手 総数 1,136人、未出場選手 245人、割合 21.6%、
野手 総数 1,066人、未出場選手 252人、割合 23.6%
となった。

投手野手の違いはほぼ無く、20%強の選手が、一軍の試合に出場する事無く、現役を引退している事がわかる。

よって、この一軍の公式戦出場という成功基準で見ると、

投手 成功選手割合 78.4%
野手 成功選手割合 76.4%

となる。
およそ4人に1人は、努力虚しく、勇姿を一軍の試合で披露すること無く失意の内に引退していることがわかる。
厳しい現実である。

ただ
「一軍の試合に出ただけでプロ野球選手として成功なんて言えないだろう。」
という声も聞こえてきそうだ。

ファンも厳しいのがプロ野球である。

○NPB在籍年数10年を超える割合

プロ野球選手は、一年一年が勝負であり、成績を残せなければ、次の年は無いという環境で野球をしている。

2018年(平成30年)にNPB入りした選手も、4人が、2020年(令和2年)の、3年目となるシーズンを迎えることができずにプロ野球選手を引退している。

平成年間を見れば1年で引退していった選手も19人もいるのだ。

それであればプロ野球選手として長く在籍していればもうそれは成功ではないか、と考える人もいるだろう。

よってNPB在籍年数を成功の指標として考察した。

プロ野球選手については、高卒で入る選手もいれば、大卒で入る選手もいる。また、30歳手前でNPB入りする社会人野球出身者もいる。

”育成”や”即戦力”というような言葉からもNPB在籍年数はそれぞれの選手によって違う意味を持つことがわかる。

ただ、今回はそこは目をつぶり、「10年以上続ける」という世間的に見て納得感のあるだろう基準を設けて解析を行った。

その結果が下記である。
前項の表と同じように、1989年(平成元年)以降NPB入りした選手を投手野手別に年代別に示している。

10年以上

10年以上2

2020年(令和2年)で10年に達するはずがない2012年(平成23年)以降にNPB入りした選手も除かれている上記の表を集計すると

投手 総数 994人、10年以上在籍 338人、割合 30.0%
野手 総数 940人、10年以上在籍 472人、割合 50.2%

となっている。

よって、このプロ野球選手を10年以上続けるという成功基準で見ると、

投手 成功選手割合 30.0%
野手 成功選手割合 50.2%

となる。

野手の方が投手より割合が1.5倍以上高い事が興味深い。

皆さんも感覚的に感じられるだろうが、やはり野手より投手の方が選手寿命が短いということをこの結果は表している。

参考までに、下記に上記と同対象でNPB入りしている選手の、NPB在籍年数別の投手/野手の人数のグラフを示す。

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このように投手は4年目、5年目あたりに引退を迫られる壁があり、野手とは分布が大きく異なっていることがわかる。

このNPB在籍年数という指標は、投手と野手で大きく違いが出るため、投手野手を同一に評価するような際にこの指標を用いると、考察が難しくなることが示唆される。

なおNPB在籍年数を指標とした場合に、投手が野手同様の成功割合≒50%程度となるのは、「8年以上」である。
逆に野手が投手同様の成功割合≒30%程度となるのは、「13年以上」となる。

よってNPB在籍年数を指標として、投手野手を同一で評価する場合

投手「8年以上」野手「10年以上」 成功選手割合 約50%
投手「10年以上」野手「13年以上」 成功選手割合 約30%

というように、成功基準を投手野手で変える事も1つの方法かもしれない。

○プロ野球に入ったならレギュラー獲得して活躍してこそ成功

一軍の公式戦に出場しただけではものたりない。
NPBに長く在籍していただけではものたりない。

そんな厳しいファンもいるだろう。

野球選手ならレギュラーを勝ち取ってこそ成功だ、
そんな考えもまた否定できない。

レギュラーを勝ち取り試合に出続ける。

この指標、基準は何だろうか。

そう考えた時、野手なら規定打席、投手なら規定投球回数を基準とするのが良いのでは、と考えた。

規定打席
=チームの試合数 x 3.1

となり、各シーズン各リーグで30人程度の選手が達する。
まさに一年間、そのポジションでレギュラーを張り、故障せずに出場しつづけて達成する数字である。

規定投球回数
=チームの試合数

となる。
各シーズン各リーグで15名前後達成することが通例ではあったが、投手の分業制の影響もあり、特に2018年(平成30年)、2019年(平成31年)は、セ・リーグが8人、9人、パ・リーグが9人、6人と、かなり少ない到達人数となっている。
規定投球回数は、先発投手であれば、中6日のローテーションを守り、平均して6回まで投球すれば到達する指標だ。
しかし、クローザーや中継ぎで活躍する選手は、到底到達は難しい。
よって投手については登板試合数も指標とし、50登板/シーズン以上に到達した場合も基準到達とした。
こちらについては、おおよそ2登板/週をシーズン通して続けると達成できる基準だ。

投手、野手ともに、これらを1年達成しただけではプロ野球選手として成功したとはいえないだろう、という意見もありそうである。
よって、3年以上、上記の指標の基準を超えた選手を成功選手とすることとした。

まずは以下に、投手の成功基準の達成人数についてNPB入り年度別に表す。
表は、左から、年度、NPB入りの投手の人数、成功基準達成の投手、そのうち現役の人数、達成していない現役の人数、基準達成の割合が掲載されている。

規定投手1

規定投手2

平成年間のプロ野球選手写真名鑑に掲載されている選手で集計しているため、1988年以前にNPB入りしている選手の同期選手の中には、平成に入った時には、既に引退していた選手もいる。
そのため、長く現役を続けている選手のみ集計される傾向にあるため、1988年以前入団の選手の成功割合は高く出ている。

また、2008年(平成20年)以降は基準に未達であるが現役を続けている選手がそれなりの数おり、これらの選手は今後基準に達成する可能性がそれなりにある。

このことから、本基準の成功割合をなるべく正確に算出するために、本結果の1989年(平成元年)~2007年(平成19年)の年代から算出することとした。
その結果が下記である。

・規定投球回到達又は50試合登板/年を3回記録
  対象投手総数 794人、達成 128人、割合 16.1%

続けて同様に野手について下記の表に表す。
野手の基準は、規定打席到達を3年間記録する、ことである。

規定野手1

規定野手2

投手の際と同様の理由で、成功割合を算出する年代を1989年(平成元年)~2006年(平成18年)とした。

結果が下記である。

・規定打数到達を3回記録
  対象野手総数 733人、上記達成 116人、割合 15.8%

よって、このプロ野球でレギュラーを獲得するという成功基準で見ると、

投手 成功選手割合 16.1%
野手 成功選手割合 15.8%

となり、投手野手ともにおよそ8人に1人の狭き関門であることがわかる。

ーーーーーーー

なお、この指標で到達を1回(単年)という基準とすると
 投手 総数 994人、 320人、割合 32.2%
 野手 総数 860人、 187人、割合 21.7%

となり投手は1.5倍ほど高い成功割合となっている。

本結果から、この指標では、単年での達成は、投手優位であるが、3年間到達と基準とすると投手は一気に割合が下がることから、投手については、それを続けることが難しいという指標になっていることがわかる。

なお上記の単年以上到達の320人の内、209人が50試合以上登板の基準到達となっている。

〇レギュラーが当たり前。一流のプロ野球選手

前項の投手の基準到達に関する表からは、2017年(平成29年)NPB入りで、新人から3年で、既に基準を達成している投手がいる事がわかる。

それは、オリックスの山岡泰輔投手である。

社会人からドラ1で即戦力。そして期待通りローテーションを守り、しかも3年連続故障なく期待通りの活躍をしている投手である。

このようなNPB入り一年目から即主力投手となり、3年で難なく基準を達成した選手は、平成在籍の投手で43人。

古くは大洋・斉藤明夫阪急・山沖之彦など。
阿波野、野茂、松坂、田中将大、則本、菅野・・・
まさに一流のプロ野球選手たちである。

ーーーーーーー
さらに基準について深めてみる。
前項での基準は、”3年間到達した”選手とした。
3年到達でも厳しい基準であるが、平成のレジェンド投手となると10回以上到達している投手もいる。

平成在籍したそのレジェンド投手を下記に列記する。
26人のレジェンド投手である。

姓 名   球団          入     終年 達成回数
村田 兆治 ロッテ   1968 1990 16
岩瀬 仁紀 中日    1999 2018 16
山本 昌  中日    1984 2015 15
工藤 公康 西武    1982 2010 15
三浦 大輔 横浜    1992 2016 15
北別府 学 広島    1976 1994 14
星野 伸之 阪神    1984 2002 13
石川 雅規 ヤクルト  2002 2020 13
鈴木 孝政 中日    1973 1989 12
涌井 秀章 楽天    2005 2020 12
桑田 真澄 巨人    1986 2006 12
宮西 尚生 日本ハム  2008 2020 12
槙原 寛己 巨人    1982 2001 11
小宮山 悟 ロッテ   1990 2009 11
川口 和久 巨人    1981 1998 11
佐藤 義則 オリックス 1977 1998 11
黒田 博樹 広島    1997 2016 11
西本 聖  巨人    1975 1994 11
斉藤 明夫 横浜    1977 1993 10
斎藤 雅樹 巨人    1983 2001 10
佐々岡 真司 広島   1990 2007 10
杉内 俊哉 巨人    2002 2018 10
西口 文也 西武    1995 2015 10
尾花 高夫 ヤクルト  1978 1991 10
加藤 初  巨人    1972 1990 10
新浦 寿夫 ダイエー  1969 1992 10

ーーーーー
同様に野手について見てみると、平成在籍のプロ野球選手で、規定打席到達を10回以上達成している選手は、65人いた。投手よりは人数は多い。

門田 博光 19回、立浪 和義 17回、落合 博満 17回、秋山 幸二 16回など。

こちらもそうそうたるメンバーである。

一方、2017年(平成29年)NPB入りで新人から3年連続規定打席到達を達成している選手は2人、中日・京田 陽太と西武・源田 壮亮である。

ただ、たまたま2人の野手がいただけであって、野手はこのような選手は投手(43人)よりかなり少なく、平成在籍の選手で15人しかいない。

野手は投手に比べて即戦力として活躍することが難しいことの表れである。

そんな中、新人からレギュラー獲得し活躍した一流選手15人を下記に示す。

姓 名 球団 入 終年
岡田 彰布 オリックス 1980 1995
原 辰徳  巨人    1981 1995
石毛 宏典 ダイエー  1981 1996
真弓 明信 阪神    1983 1995
横田 真之 西武    1985 1995
清原 和博 オリックス 1986 2008
久慈 照嘉 阪神    1992 2005
仁志 敏久 横浜    1996 2009
小坂 誠  楽天    1997 2010
高橋 由伸 巨人    1998 2015
坪井 智哉 オリックス 1998 2011
渡辺 直人 楽天    2007 2020
長野 久義 広島    2010 2020
京田 陽太 中日    2017 2020
源田 壮亮 西武    2017 2020

なお上記で高卒新人は清原和博選手ただ一人である。

〇最後に~成績基準のまとめ~

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