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【こばなし】無農薬イチゴ農家のしびれる回答

近所に、農薬、化学肥料不使用でイチゴを育てている農家Eさんがいる。Eさんはこのあたりでは有名人。何せイチゴをはじめとする梨、りんご、桃などのバラ科の果物は害虫がつきやすく、無農薬で育てるのがとびきり難しいからである。

先日初めてEさんに遭遇した。スタッフの人が彼にイチゴを注文したので、届けてくれたのである。聞けば11棟ものビニールハウスを、自分ひとりで管理しているのだそう。以前パッションフルーツ農家さんの収穫のお手伝いをしたことがあるが、そこのビニールハウスは4棟。11棟をたったひとりで管理することがどれだけ大変か、想像もできないほどだ。朝は4時ごろから、収穫が忙しいときには夜11時ごろまで働き、朝ご飯と昼ご飯を食べる時間が惜しいので、ハウスでイチゴを5パック分ほど毎日食べているのだそうだ。思わず心配してしまうような働き方なのだが、彼からはやりがいのあるこの仕事が好きなのだという気持ちが伝わってきた。

「どうして無農薬でイチゴを育てているんですか。すごく難しいと聞きますが、、、」

わたしが聞くとE さんは答えた。

「自分が毎日食べたいから。」

しびれた。
農薬や化学肥料を使用して作物を育てている農家が、その野菜を自分たちでは食べないことはよく聞く話。日本の一般的なイチゴ栽培は出荷までに最低でも20回は農薬を散布すると言われており、表面の種の部分には農薬が残留しやすいため、知識のある消費者や農家はイチゴを食べないことに決めている人もいるほど。だがEさんは、「自分が毎日食べたいから」農薬を使わないそうだ。なんてシンプルで、自然で、素敵な考え方なんだろう。


最初は少しぶっきらぼうに見えたEさんだが、話していくうちに彼からは自分が育てたイチゴへの愛情と自信が伝わってきた。イチゴ自体が生き物としての本来の力を引き出せるよう、照明や暖房は一切使用しない。彼のイチゴは必ずしもスーパーに陳列されているような美しい形ではないが、香りが強く甘くて優しい味で、思わず笑みがこぼれてしまうほど美味しい。作ったひとの想いが分かると、さらに美味しく感じるし、応援したいと思う。

ひとパック買わせてもらったのだが、今も部屋の中にイチゴの良い香りが漂っている。Eさんが丹精込めて作った無農薬で安全なイチゴ。一粒一粒、大切に食べたい。

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