【切り取り小説】どーゆーこと?
いや違う違う、そういうことがしたかったんじゃないの! 私は新宿駅前があんまり汚いから、もうちょっと世の中綺麗になればいいのになっていっただけで、それをあなたにお願いしたわけじゃないし、それにこんなふうに叶えてほしかったんでもありません!
「ああ、分かっているよお。でも、俺はでっかい夢を叶えたかったんだあ」
夢なら自分で作ってくださいよ! 何で他人の夢を叶えてくんですか! それに叶えるんならちゃんと話聞いてからにしてください! あなた何なんですか? どうして学校の正門前でスーツ着て突っ立ってたんですか? 目的は何なんですか?
「社会の役に立ちたいんだよお」
ああ、違う! そうじゃない! とにかく戻してください! みんなびっくりしてるじゃないですか。こういうのは! 世界がめっちゃ変わっても私とあなた以外気づかないってのが筋じゃないですか! ね? 何でそう中途半端なの? え、戻せるんだよね? 戻るよね? 目が眩みそう。
「戻したいのかあい?」
そりゃそうです! 戻して! それで私から離れて! あなた普通の顔して変だから! 自分の夢とか目標とかないわけ? ちゃんとして!
「はい……帰る……」
何も解決しないまま、彼は去り、彼女は残された。周囲は騒然としていて、彼女はそれまで一緒に話していた友達と、とりあえず先生に話しに行った。担任の先生は信じられないようだったが、鮮やかな教室の中にいては、信じざるを得なかった。その後どうなったのかは知らない。ニュースにもなっていたが、彼女の知っている以上の情報は得られなかった。3日後、社会は正常に戻った。しかし彼の顔がニュースに出ることはなかった。学校でも話題にならない。言ってはいけないような気がするのだ。自己検閲をしてしまう。これが社会の闇ってやつか。なるほど……。いやいや。
え? 世界、どーゆーこと?
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