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調査報告 7の段の覚え方

紅葉山小学校の藤井優斗は7の段の事を時々考える。日本の小学校に通っていた事があるものなら、誰もが通る道だ。7の段は覚えづらい。偶数と奇数が交互に来るし、ルールもない。覚えづらい。藤井優斗は、何とかルールを見つけ出そうとしたけれど、なかった。だから根気で覚えるしかない。それが本当に嫌だった。

 彼は母親にも文句を言ったし、先生にも文句を言ったようだ。けれど彼は、がんばって覚えなさい以上の何かを聞けはしなかった。結局、母親も先生も7の段を覚えているのだ。2人とも、7の段は当然覚えられるものだとしか思っていない。それが藤井優斗には辛い。

 花壇に花がある。何本あるだろうか。縦に7本、横に9本生えているとしよう。7×9。えっと…….。

 まあ、心配はない。彼だってきっと、7の段を覚えられる筈だ。正しい覚え方をしているから。彼の覚え方が、最も正しいし、その覚え方以外ない。彼は覚えられなくて苦しんでいるだろうが、人生、なんとかなるものだ。彼には安心してほしいと思う。他人の私には、彼にそう伝える術がないけれど。

 以上で、藤井優斗についての報告は終了。休憩は終わりにして、本当の仕事に取り掛かろう。


   可

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