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無理解の放置は欺瞞である 『LGBTを読みとく ──クィア・スタディーズ入門』(森山至貴)

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。445冊目。

怒られるのを覚悟で告白すると、セクシャルマイノリティーの話題に触れるのは怖いなと思っている。話題への参加は消極的になってしまうし、あたりさわりのない態度をとりがち。

特に否定するような思想も信条も無く、性の多様性というものにたいしては寛容でありたいという気持ちはあるし、力の及ぶ範囲であれば差別や偏見から守るよう努力もする。

身の回りで露骨に差別的な発言をする人が居れば不愉快な気持ちになるし、可能なかぎり改めようとも思っている。

すべての人は可能な限り自由であるべきだと思っているし、伝統的な価値観というものについては、誰かが誰かに強制するものではないと思っている。

しかし、いくら自分がバイアスや偏見を捨てようと考えていても、セクシャルマイノリティーに対しては十把一絡げにとらえているだけであるという自覚もあるし、どの言葉が、どの態度が人を傷つけてしまうのか、まったくもってわからないという自覚もある。

言葉を選ばずに言えば、どこで「地雷」を踏んでしまうのかわからない、という怖さが拭えないでいる。

更にいうと、いくら私が私のとり得る範囲で考えうる範囲で最大限の配慮をしていたとしても、結局「お前はなにも解ってないのだ」と批判されてしまうのではないかと考えてしまう。何も解っていない事は事実だし。

そうなると、当事者を目の前にしていても、当たり障りのない態度で接しようとぎこちなくなってしまい、そのことでその方を傷つけてしまいやしないかと心配し…… ループが終わりません。

でも、これって私だけではなく、似たような状況のかたが多いのではないかしらとも思っています。どう?

圧倒的に知識が足りていない

本書では多様な性を正しく捉えるためには配慮だけではなく、知識を持つことが重要であるといいます。

私を含めた圧倒的多数である性的マジョリティーの多くは、マイノリティーに対しては「良心」と「道徳」をもって差別と対峙してゆけばよいと考えがちなのだけど、それだけでは不十分だ。

本書では、独りよがりで知ったかぶりの「いい人」アピールには害しか無いことが示され、

正確な知識を持っていることの方が、他社を差別しないためには重要なのです。(P32)

と具体的な例を示しながら説いてくる。

そして、セクシャルマイノリティーの存在を受け入れ、そのことを示すため「人を傷つけない程度には物を知っている」状態になるべきだろうとし「何を知っていれば他社を傷つけないで済むだろうか」に答えてくれます。

また、セクシャルマイノリティーについての正しい知識、認識への道標を得たうえで、性の多様性を扱うための学問「クィア・スタディーズ」のダイジェスト的な紹介がおこなわれます。

目次はこのような感じ。

第1章 良心ではなく知識が必要な理由
第2章 「LGBT」とは何を、誰を指しているのか
第3章 レズビアン/ゲイの歴史
第4章 トランスジェンダーの誤解をとく
第5章 クィア・スタディーズの誕生
第6章 五つの基本概念
第7章 日本社会をクィアに読みとく
第8章 「入門編」の先へ

正直、あまりにも自分の知識が足りていないことに驚くとともに、恥ずかしいとも感じました。

本書と出会えてよかった。おすすめです。

「自分は大丈夫」と思っている人ほど読んだほうがいい。

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