見出し画像

【書評】 わたくし、この本を読んでPremiumに登録しました 『Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。362冊目。

北欧スウェーデンで生まれた小さな音楽ストリーミングビジネスは、様々な革新とアイディアと優れたソフトウエア、それにCEOであるダニエル・エクの勇気と求心力の相乗効果で一気に大化け、たった10年足らずでインターネットから違法コピーを追い出し、音楽業界を救ってしまった。その道程は平坦ではなく、既得権益者や欲に駆られた大物ミュージシャン、巨大IT企業などによる様々な妨害との戦いであったが、奮闘の甲斐ありNYでIPOを実現し皆お金持ちになりました。めでたしめでたし。というお話。

というお話なんだけど。よくあるビジネス書なんだけど、あまりメディアに出てこないダニエル・エクの人物が見えてとても良かった。


本書を読むと、Spotifyがたどってきた道は決して平坦ではないし、恐らく倒産寸前というタイミングも何度か有ったのだろう(ダニエル・エクのインタビューが無いので真相はわからないけど)と思われる。

しかし、そういった危機を幾度となく乗り越えてきたのは、やはりユーザーファーストな企業姿勢と、その結果として生まれている品質の高いソフトウエアだったのだろうと思う。

普段私もSpotifyを利用しているが、いったいどういう仕組なのだろう? と不思議に思うほどストリーミングにストレスが無い。

P2Pの仕組みを利用しているのは知っていた。近所のノード(知らないご近所のSpotifyユーザー)が音楽データをもっていれば、そこから直接引っ張ってくるなど、かつてのWinnyのような仕組みで、ファイルをストリーミングしているようなのだけど、それにしたって、再生開始までが早すぎる。

曲を選ぶと、即座に再生が開始される。ピっと押したらスグにジャーン。曲を飛ばしても、次の曲がタップと同時に再生が開始される。

デバイスのスイッチも凄い。PCで再生していた曲を、タイムラグなしにスマホに引き継げる機能なのだけど、これが地味に凄いの。PCで音楽を聞きながら出かける用意をして、AirPodsを耳につけ、iPhoneでSpotifyを軌道してワンタップすると、PCの再生がとまり、まったく同じ箇所からiPhoneで再生が再開される。

地味なんだけど、直感的で使いやすいUI/UXにこういった音楽を1秒たりとも途切れさせないという執念を感じる作り込み。

もう、このソフトウエアの凄さを体験してたら、ユーザーは離れられない。

こういった姿勢はサービスの初期から備わっていて、作り上げたエンジニア達のチームは、かつて違法ストリーミングサービスを作ってきたエンジニアたちが集結したチームだった、という下りは胸アツな展開で面白いよ。


面白い内容だと思うのだけど、書籍としてツメが甘いのでは、という箇所が多いのがちょいと残念。まず違和感を感じるのはタイトルが正しく内容を説明していない。帯も正しくない。そして、残念な事に翻訳がこなれていないように思える。明らかに誤訳だと思われる箇所も有って、気をつけながら読んで欲しい。しかし、良書であることは間違い無い。

本書をきっかけに、有料プランに移行しようと決めた。だって無料プランの広告が自社広告ばかりなんですもの。心配。

ただ、あの自社広告ってば、なにげに面白いので聞けなくなるのは残念なんだけどね。

この記事が参加している募集

読書感想文

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。