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これは日本酒文化の底上げを狙う啓蒙書だ 『最先端の日本酒ペアリング』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。348冊目。

フードペアリングといえばワインの世界を思い出すのだけど、日本酒については、そこまで盛り上がる話題ではなかった。

本書では、日本酒とあわせて語られる事の無かった料理とのペアリングについて、これまでの常識や伝統なんぞは一旦脇に置いておき、実際に口と鼻で体験した膨大な組み合わせと、科学についての知識から著者達がコレだと見つけ、実際に店で出している組み合わせを紹介してくれている。

しかも、レシピ付きで。親切。

『最先端の日本酒ペアリング』(千葉麻里絵、宇都宮仁)

これまでも、刺身には吟醸酒をあわせましょうとか、こってりした料理には本醸造がいいですよ、とか、一般論として言われている事はあった。

しかし、料理と日本酒のペアリングにこだわったお店は、ほとんど無かったのではないかしら。

仕事のしっかりした和食店や寿司屋であれば、ある程度は日本酒にはこだわりがあって、旨い酒を仕入れて振る舞ってくれる。

でも、それは、料理とのペアリングを考えたものというよりは、酒単体として美味いものをという視点で入れていると思う。

そもそも、日本酒はアルコール度数が高いのに、サーブされる量が多い。多いところだと、1合で出てきたりする。だのに、高級な店ほど料理は品数が多くてポーションが小さい。

よって、酒が180mlで出てこられると、食事中に飲めるのはせいぜい2銘柄とかになってしまって、ペアリングだとかマリアージュとか言ってる場合じゃない。

寿司なんて、酒を1合の飲みきるまでに、何種類も出てきてしまう。素材にあわせて酒を変えるなんてことが難しい。

その点、洋食とワインなんてのはペアリングを突き詰めやすい気がする。洋食のコースだと1皿のポーションも大きいうえに、ワインは6杯取りから8杯取りが多い。

つまりだいたい90〜125ml位で、これに料理を1皿から2皿あわせるので、料理にあわせて酒を選ぶということがしやすい。それに、ワインはアルコール度数が日本酒よりも少し低めなので、日本酒ほど飲み疲れない。

思えば、私個人としても日本酒と料理をペアリングさせるという発想をほとんどもたないで生きてきた。料理は料理、酒は酒でそれぞれうまけりゃ万歳だった。しかし、本書を読むと、そんな考えではもったいない事がよくわかる。本書では、日本酒のペアリングについて、これでもかと盛りだくさんな情報が集められているのだけど、どれもこれも美味そうだし、実際に美味いのだろうなというものばかり。

あれも食べたいし、これも飲みたい。全部食べたい、全部飲みたい。

本書は、料理と酒を紹介するだけのレシピ本ではない。日本酒ペアリングの教科書だ。

目次をみるとよくわかるのだけど、著者が長い年月をかけて会得してきたノウハウを、これでもかと惜しみなく放出している。

新しい発想に欠かせない7つのアイテム
日本酒にちょい足しで料理に寄せる
千葉麻里絵の考えるペアリング理論9
クセのある香りや味わいをペアリングでとらえる
ペアリングのための燗酒レッスン
GEM by motoの店づくり
感動を呼ぶペアリングの接客の心得
誌上ペアリングレッスン 鰹に日本酒を合わせたら?
真夜中のペアリング勉強会
ペアリングのための日本酒講座
日本酒の香りの表現とその由来38
ペアリングのためのラベルと分析値の読み方
この本に掲載している日本酒のリスト

超勉強になります。私もこの境地にたどり着いてみたい。コツコツと再現をしていこうかと思います。あと、著者のお店にも行ってみたい。

千葉麻里絵さんの本は、もう1冊。

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