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【書評】 日本酒を世界に羽ばたかせた 『「獺祭」の挑戦 山奥から世界へ』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。364冊目。

「獺祭」という酒はメディアにも登場することが多いと思うので、ご存じの方も多いのでは。

何故か日本酒好きや、蔵の方々には獺祭を露骨に嫌う方も多いのだけど、私は割と好きです。飛び抜けて美味いとは思わないけど、なんというか、スタンダードな味だし、味が一定でブレが無い、10年近くほとんど同じ味わいで作り続けているのではないかな。

実際に、獺祭というお酒は意識して王道中の王道の味を作っていると思う。酒米には山田錦という米を使い、それを半分以上磨く。あわせる酵母は協会9号がメイン。この組み合わせ、かつてはYK35と呼ばれ、35%まで磨いた山田錦に協会9号で作るのが、鑑評会で金賞を取る酒の必要条件だみたいな都市伝説があったそうな。それくらい王道。

最近は酵母に18号や19号、M301号などをつかい、香りも糖も出しつつキレの良い味を作る酒がふえてきているけど、やっぱりザ・日本酒という味は山田錦+協会9号という気がしているので、獺祭の味の作り方は嫌いじゃないです。

酵母は協会9号だけじゃなくて、他にも2種類ほど使ってブレンドしているようだけど。それであの甘味が出ているのかな。

本書は、そんな獺祭という酒が、どのようにして作られたのか、弘兼憲史の漫画で紹介するもの。

カンと経験で酒を作る杜氏を否定し、徹底的に手順を標準化し、品質管理は全て数値化する、旧態依然とした問屋と喧嘩をし、苦労の末に東京に販路を広げ、ブームを起こし、世界に打って出るまでの挑戦が紹介される。

弘兼憲史の絵柄で進むので、途中で社長が従業員と不倫をしたり、二代目のボンがニューヨークで女性トラブル起こすのかなと心配になるのだけど、そんなことはなく真面目にコツコツと日本酒の未来を見据えながら頑張っている姿が描かれます。二代目もボンじゃなくてちゃんとしてる。

よかった、よかった。

漫画の結びで、現在、獺祭の売上の3割が海外への輸出で占められるようになったという報告を受けた社長が、これをスグに5割に、最終的には9割の売上を海外からにしないと生き残れないという。

日本国内では人口減少で飲酒人口が大きく減る。その先を見据えたとき、国内需要だけで戦っていては勝てないということなのだけど、これは、日本酒業界のみならず、国内の産業全体に言える事でもある。

そういった状況に目を瞑らず、しっかりと見越したうえでの挑戦が続くのであれば「獺祭」は安泰なのだろう。ということは、とりあえず王道の酒だけでも死ぬまで飲んでいられるようだ。これはひと安心だね。

漫画である必要はあったのか? という疑問はさておき。内容は面白いので、日本酒好きの皆さん、酒のアテに本書はいかがでしょう。私も飲みながら読んで、飲みながらこれを書いています。なので、いつにもまして雑ですがそこはご勘弁を。

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