見出し画像

【書評】 灰色の男たち=GAFA説 『NHK 100分 de 名著 ミヒャエル・エンデ『モモ』 2020年 8月』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。391冊目。

NHKの「100分 de 名著」という番組では名著と呼ばれるもののなかでも、結構骨のある作品が選ばれる傾向があるのだけど、世の中には、難解で骨の折れる元の本は読まず、この番組用のテキストだけ読んで済ませるという人が居るという話を聞いて、なるほどねと思う。

どれくらい骨が折れそうかというと、ここ最近の扱いは、吉本隆明の『共同幻想論』、カントの『純粋理性批判』、そして『平家物語』と重量級が続く。読書好きな私でも、あばらの2,3本は持っていかれそうな本たち。

確かにこれらの本のエッセンスが効率よく、しかも税抜524円という安価で学べるならばそれも有りかも知れない。

番組は自動録画しているのでたまにみるのだけど、こういった骨のある本でも、第一線の解説者と軽妙洒脱な伊集院光にかかると、するすると内容が理解出来る気がするので凄い番組だなと関心してしまう。

そういえば、結婚して間もない頃、妻との何気ない会話から、妻の好きな芸能人は「伊集院光」でることが解ったことがあった。

配偶者として誇らしく思えば良いのか、微妙な気持ちになればよいのか判断しかねていたら、続けて「子供の頃は石坂浩二が好きだった」と追加で告白され、ますます困ってしまった。

雑談に弱い私は、あまり考えずに「ちょっとかわってらっしゃる」と面白くない返しをしてしまったのだけど、そのリアクションが「ほら、ジャニーズ好きだからといってイケメンと結婚するわけじゃないでしょ」とフォローなのか何なのかわからない事を言われたところまでがセットで思い出になっている。

伊集院光は、初めて見かけた芸能人でもあったはず。札幌テレビの明石英一郎アナウンサーがノーカウントなら、ファーストコンタクトは伊集院光だ。池袋で美人二人とピザを食べているのをみかけて「うわー、華やかななのかなぁー」と思ったのだった。

そう、それで「100分 de 名著」なのだけど、なんと8月はエンデの『モモ』でした。児童書の名著ですね。

もう放送終わっちゃってると思いますし、何を隠そう私も見ていないのですが、今日は番組を見ましょうという話ではなく、番組のテキストの方。

読みましょう。『モモ』が好きな方は読んでみましょう。

ちょいと前に読書会で『モモ』を読んだし、そのついでに読書感想をnoteに書いた事もあって、書店でこのテキストを見かけたときに自動的に購入していたのだけど、読んでみたら面白かったよ。番組も見ればよかった。

解説を担当するのは臨床心理学者の河合俊雄氏(お父様は河合隼雄氏)で、寓意をどう解釈するかという話になっていくのだけど、このガイドブックは割とスタンダードな読み方をしつつ、ところどころユニークで面白い内容になっていて読んでいて面白かったのよ。さすが100分。

冒頭で「元の本を読まなくても……」といった事を書いたけど、たしかに、このテキストを読んでおけば、ただ『モモ』を読んだ人以上に『モモ』を語れる気がする。凄いなNHK、テキストを集めてみようかな。まだ100冊位の様だし。

『モモ』を読んだ方なら解ると思うのだけど、物語に「灰色の男たち」という出来の悪い自己啓発セミナーみたいな連中が(どんなんだ)出てきて街の人たちに効率を与えるかわりに大事な時間を盗むのだけど、著者はなんと灰色の男をGAFAとなぞって説明をしている。

そう、あのGAFAね。Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字を取ってつくられた造語。世界を支配するIT企業だ。面白い。

こんな調子でインスタが出てきたりしてね、現代の文明との比較を行いながら解説を行っていたりして、とても作品が理解しやすくなっていた。

オススメ!

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,330件

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。