【書評】 読まずに死ねるか! 内藤陳が(多分)最も愛した冒険活劇 『深夜プラス1〔新訳版〕』
ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。128冊目。
パリは四月である。新訳である。
内藤陳が愛し、愛しすぎて本作題名と同名の飲み屋を新宿ゴールデン街に作ってしまったほどの作品だ。
新訳は未読だったので楽しみだったが、期待通り面白かったよ。Amazonで酷評されているけど気にしなくてもいい。確かに、迫力というか、読む人を引き付けるアクの強さみたいなものは失われているような気がする。もしかしたら、内藤陳は気に入らないかもしれない。
だがしかし、得たものは多い、超読みやすいし、スピード感が抜群でカラフル。私は好きだな。これから読む人は、こちらでも十分にスキになれる。
50年以上前の作品なので、どことなく優雅というか、ゆったりとしていて、近頃のキンキンしたアクションミステリーとは一線を画す味わいなのだが、その雰囲気は旧訳も新訳も変わらない。
ジェイソンステイサム感なんぞが出ていたらどうしようと心配したが、そんなことも全くない。
内容は、プロの運び屋が、パリで3番手のガンマンと共に不機嫌な富豪とミステリアスな秘書を目的地まで運ぶ話。
どこかで見たような設定? これがオリジナルだよ。
これだけでも面白そうなのに、人物は皆魅力的だし、車と銃、それに酒にたいする描写のこだわりが実に粋で、読みながらニヤニヤしてしまう。
読みながら銃や車の名前をみつけてピンと来なかったら、是非検索をしながら読んでみてください。
それが面倒でも、せめてシトロエンDSの姿は目に焼き付けておきましょう。
超かっこいいですね。足を選べと言われ、フィアットプレジデントとの二択だったけど、キャントンは迷わずDSにした。これにガンマンと富豪と美人秘書を乗せて目的地を目指す。
そして、もう一つイメージを知っておいたほうが良いのが銃。
キャントンが使う銃はこちら。
渋いね。重たそうです。重さは1.4キロ、長さは30センチもあり優雅に持ち歩くことは、まず出来ない。
ガンマンのラヴェルが使うのはこれ。
小さくて身体の何処にでも隠せるし、直ぐに出せる。弾が5発入るので、5人以上で襲ってくるケースはあるか? なんて会話がなされる。
序盤にキャントンと、相棒となるラヴェルがお互いの銃について話すシーンは、互いの仕事に対する考え方を、素性を明かさずとも分かり合い、信頼を生むという良い場面なのだけど、そのときに出てくる銃がどんなものかを知っているか否かで味わいが全然変わってくる。
道具や小物から登場人物の職業倫理が見えてきて面白いのだけど、この辺はあまり説明が無いので、やっぱりわからない単語が出てきたらググてみると良いかと思う。
あとは、イギリスとフランスで互いの酒を罵りあうのも面白い。
傑作でございます。読みましょう!
装丁は旧訳のほうがカッコイイ!
古本の値段高っかい。どっちもキンドルで買えたらいいのに。
「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。