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『長期腐敗体制』


【一文要約】

第2次安倍政権以後の国家体制を「2012年体制」と呼ぶなら、この体制は日本社会の全般的劣化の産物であり、完成されたシニシズムである。

【357文字要約】

明治維新(1868年)から第二次世界大戦の敗戦(1945年)までの77年と、その敗戦から今年(2022年)までの77年、この2つの77年間に日本は「国体」をめぐってほぼ同じような動きを見せてきた。戦前の日本は「天皇」を頂き、戦後の日本は「日米安保体制」を頂き、頂いたものは違えども、ともに「国体護持」を第一義として運営されてきたのだ。戦前も戦後もそうして「国体」は形成され、安定し、崩壊した。「2012年体制」は二番目の77年間の崩壊をできるだけ引き延ばそうとする体制に他ならない。そしてそうした体制の頽廃を許してきたのは他ならぬわれわれ日本国民なのだ。われわれ一人ひとりが、そのことを深く自覚し、そこからなんらかの行動をわれわれ一人ひとりがなしていくこと。新しい日本はそうした各自の行動からしか生まれてはこない。

【298文字感想】

歴史、特に現代史に疎い私からすると、戦前と戦後をともに同じ過程を経て崩壊に至る時期としてパラレルに捉えるという視点は新しいと感じました。また戦後は天皇に代わって日米安保体制を国体に据えたものという見方も面白かったです。2012年体制の腐敗を古代ギリシアのソフィストたちの跳梁跋扈に喩え、そうした事態は民主制が本源的にもっているリスクであり、戦後日本はその「賭け」に負けたのだという判断もとても納得がいくものでした。お陰様で、柄谷行人さんのとなえる「交換様式」からみる世界観や、VECTIONさんが提案されている新しい政治制度のあり方などをもう少しまじめに勉強していこうという思いが強くなりました。

【まとめデータ】

白井聡、2022年6月10日、角川新書


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