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訪問医療マッサージ集客の極意ー営業とは何か?

1. 営業とは何か

この医療・介護・社会福祉分野において「営業」といわれてもあまりピンとこないかと思います。なぜなら多くの方がイメージされる「営業」とは、例えば車や家と実際に手に取れる商品があるもの、つまり有形商材の営業がほとんどだからです。
 実はもう一つ、生命保険や私のようなコンサルタント業、あるいはエンターテイメント系などの形のない無形商材もあります。病院における治療や介護施設における介護サービス、そして「訪問医療マッサージ」は、この無形商材です。一般的に有形商材よりも無形商材を売るほうが難しいといわれていますが、私にすればどちらも同じです。売れるかどうかというのは、その商品やサービスの性能や効能がクライアントの課題解決に結びつくかどうか、ただそれだけなのです。

これからいろいろとお話をする前に、簡単ですがこれまでの「人生の歩み」をお話いたします。実は、私は小さいころから警察官になりたかったのです。意外ですか? 小学生のときの作文を読むと警察官になる夢を書いていたので、大学在学中に就職先の一つに警察を考えたときは、勝手にこれも運命か……と思ったのを覚えています。今考えればバブルの時代を経験した私の親の価値観で、公務員は安泰という考えを植え付けられたのが警察官になりたかった理由だった気がします。その証拠に警察官だけではなく消防士の試験も受けましたからお笑いですね。しかしながら結局、大学卒業のとき合格できなかったので、なぜだか投資用ワンルームマンションの会社に就職してしまいました。私はこの本を書いている34歳の時点で、7回転職しています。8回目に独立したこと考えると、警察官になるという夢が叶わなかったことも、また運命だったかもしれません。

7回の転職では、不動産業界が2社、電車の製造業1社、介護付有料老人ホーム1社、歯科専門のレセプトメーカー1社、病院経営コンサルタント2社を経験しています。今でこそ「転職」はポジティブなイメージがありますが、当時は家族や周りからの冷たい視線を感じたのを覚えています。わかってもらえない寂しさはありましたが、でも仕方がないことです。自分の人生ですから、自分が納得できなかったら仕事を変えることはあたり前だと思っており、それが人よりも多かっただけとも思っていました。
 7回の転職の中で、最も私の人生を変えてくれたのが「介護付有料老人ホームの入居相談員」として勤務した「木下の介護」での仕事でした。「木下の介護」は、関東を中心に介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームを120施設ほど運営している会社です。最近は関西方面にも進出しています。

私は不動産営業時代、本当に辛い思いをしました。いわゆるブラック企業です。この時点で営業職が嫌いになっていましたが、結局また営業職に戻ったわけです。これまた安易な考えですが、介護系の営業なら、朝から晩まで電話営業や不動産時代に経験した毎日のポスティング3,000枚のようなこともないだろうと選びました。ですからこの時点では「介護」というものを理解していなかったのです。不動産時代の営業は、とにかく上司の命令どおりに朝から晩まで電話やポスティングの毎日でした。遅刻をした先輩社員が、穴埋めしてくれた社員にうな重など高価な食事を奢っているのをよく見かけたものです。

「営業とは何か?」。その答えを私は、「木下の介護」時代の上司の新井課長から学びました。不動産営業は、とにかく「売り上げ達成」「契約数達成」のプレッシャーばかり与えられ、そもそも仕事の本質というのを教えてもらったことがありません。新井課長は、当時の「木下の介護」の課長の中でも特に厳しい指導をされましたが、自分に厳しい方でもありました。目標数字の達成率も誰よりも高かったのです。新井課長は、私より4歳年上でした。「たった4歳しか違わないのに」と忸怩たる思いを感じたのを覚えています。

最初は、そんな新井課長の部下になったことで、2週間で辞めようと思ったこともありました。不動産のときと同じように営業数字というプレッシャーに耐えきれないと思ったからです。しかし新井課長の言葉と支えられ、続けることができました。このときの経験がなければ今の私はありません。これまでの転職・アルバイトも含めさまざまな上司に出会ってきましたが、どの上司よりも素晴らしい方でした。感謝しきれないほど感謝しています。私はこれから営業を始める皆さんに「営業とは何か」について、新井課長に教わったことをお伝えします。

「塚本。この介護の営業ってな、9割は人助けで、自分たちの利益のためは、1割なんだよ」

これまでの顧客を食い物にしてきた不動産営業とは、まったく異なった考えに、私は身体全身に衝撃が走りました。初めて教わったのです。「その仕事の本質は、何か」ということを。この新井課長の言葉は、今でもずっと私の心に刻み込まれています。この言葉と新井課長のおかげで百名ほどいる「木下の介護」の営業職の中で、入社4か月目に月間1位、2年目に営業主任に昇格し、4年目に課長代理に昇格、最下位常連の千葉エリアのチームをトップチームに昇格させ、最後の2年間は連続1位になることができました。成績を自慢したいわけではありません。私は、「表彰の数=高齢者を助けた数」だと思っています。人助けできた自分を誇りたいとは、思っています。 私は、誰よりも在宅で課題を抱えた高齢者を「老人ホーム」というツールを使って支援しました。そして誰よりも、地域の病院や居宅介護支援センターのケアマネジャー、地域包括支援センター、地域住民、民生委員等との連携に力を入れました。そして誰よりも「木下の介護」の施設長と喧嘩をしてきました。喧嘩というのは殴り合いではなくいわゆる入居させたい塚本と入居させたくない施設長との戦争です。

これは訪問医療マッサージにも通じるところがあるかもしれませんが、課題を抱えた在宅高齢者というのは、在宅にいられなくなることがあります。その原因は認知症の悪化や自宅における転倒、介護をしていた家族の入院などさまざまです。困るときというのは、大抵の場合は急ぎなのです。ここでいう「急ぎ」とは、皆さんの想像するレベルとは違い「今から」あるいは「今日の午後から」ということです。ですから、そういった利用者さんをマネジメントしているケアマネジャーや地域包括支援センターの相談員は、あらゆる介護資源、医療資源をつかって対応しなければなりません。しかしながらすべての資源が有効活用できるわけではありません。

私は「木下の介護」の老人ホームをつかって「今日の今日の入居」を基本として、遅くても明日や明後日の入居を実践していました。老人ホームが当日入居を許可するなどということは、基本的にあり得ないのです。なぜなら利用者さんの感染症のチェックやこれまでの経歴、既往歴、生活歴を事前に把握して施設のケアマネジャーがケアプランを作成し、必要な介護職員の確保とシフト調整などを行わなければならないからです。高齢者の命を守るためには、施設側も相当な準備をしなければなりません。そんな中、利用者やケアマネジャーの助けになりたい私とリスクが大きいから拒否をする施設長との喧嘩が始まるわけです。今思えば、本当に無理をいってしまったなと反省していますが、そんな私の無理難題に応えてくれた施設長には感謝しています。

どうでしょうか。訪問医療マッサージでも急な対応はありますか。多くはないかもしれませんが、患者さんの気持ちの変化は結構激しいものです。今この瞬間ならお願いできるといってケアマネジャーから連絡があった場合に、どんな状況であっても迅速丁寧に対応する姿勢が信頼につながっていくのです。

皆さんの組織ではいかがでしょうか。訪問医療マッサージの集客をする際、組織によっては営業職を専門で雇っているところもあるでしょう。営業の本質やこの介護業界の本質を伝える前に、契約件数や売り上げのプレッシャーを与えていませんか。また、これまで営業をやったことがない施術者に、営業を無理強いしていませんか。訪問医療マッサージで営業をする際、まず必要なのは「営業とは何か」「介護業界について」「高齢者について」「医療機関について」など、基本的な項目を抑えておくことです。新井課長から教わった「9割は人助け、利益は1割」の考えを私は自分なりに磨くことができました。この言葉を最後に「営業とは何か」を締めたいと思います。

「営業とは、人に働きかけ、人の声を聞き、人の役に立つこと」

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