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【家の在り方を考える】#04結露と対策

(文:川畠 康文/SELF 理事)

【家の在り方を考える】の第4回は結露について書きたいと思います。
(1~3回の記事は一番下にリンク張っています)
いつも以上にマニアックな話になると思うので申し訳ありません(汗)

結露のメカニズムについて

そもそも、結露ってなぜ起こるかご存知ですか?

空気は気温が高いほど、たくさんの水分を含むことが出来ます。それを「飽和水蒸気量」と言います。例えば5℃で6.5mmHg、20℃で17.5mmHgがそれぞれ空気に含むことが出来る水分量という感じです。例として、気温が20℃で12mmHgの水蒸気を含んでいる空気が、急激に5℃まで冷やされてしまうと、5℃では6.5mmHgまでしか水蒸気を含んでいられないため12mmHg-6.5mmHg=5.5mmHg分の水蒸気が空気から吐き出されて液化し、それが「結露」というカタチで出てくるのです。冷たいビールのジョッキの廻りに水滴がつきますよね。あれは暖かく湿った空気が冷たいジョッキで冷やされた結果の結露になります。

冷えたジョッキに結露

つまり、結露をさせないためには
①空気が冷やされる冷たい場所(壁や窓など)をつくらない
②空気内の水分量=湿度を高くしすぎない

ということがまずは基本になります。

①空気が冷やされる冷たい場所(壁や窓など)をつくらない

これについては、簡単に言えば、壁と窓の断熱性を高めるということです。
断熱材をしっかり入れて壁の断熱性能を高めることは基本として、やはり重要なのは窓の性能です。特にアルミサッシはアルミの熱伝導率が高いために物凄く結露しやすい窓です。また、どんなに断熱性能が優れた住宅でも、窓の部分は壁に比べて断熱性能は落ちます。そのため、窓やサッシ枠の部分で結露が起こりやすいことになります。しかし、断熱性能の高い窓にすればするほど空気が冷やされることがなくなり、その結露は起こりにくくなります。
なお、これから新築で建てるのであれば、樹脂窓+トリプルガラスにしたいところ。実は南側以外の小さい窓で使う分のコストアップはそれほど大きくはなく、コスパ最強なんです。(※下の写真のリクシル 樹脂窓EW 横すべり出し窓07407 トリプルガラス アルゴンガス仕様 0.86W/(㎡K)で本体定価は62900円程度。)
また、リフォーム、リノベーションの場合、結露防止に効果的なのは内窓設置が簡単でお勧めですね。前回ご紹介したような補助金もありますし。気密性も格段にアップします。

樹脂サッシ+トリプルガラスの窓 ※工事中の写真

なお、水蒸気の性質として、空気よりも細かいところまで拡がっていきます。例えば、押入れの中とか、カーテンの中とか。そうすると、暖かい空気はそこまで移動できないのですが、水蒸気だけは移動してしまうので、断熱が不十分な建物で北側の押入れなどは結露の被害が多いのです。また、ハニカムスクリーンも窓の断熱強化には大変効果的ですが、水蒸気は通してしまうので、窓の結露はかえって増えることがあります。(室内の温かい空気がハニカムスクリーンで遮断されるため)。ちなみにうちの家はトリプルガラスでもハニカムスクリーンを使った窓も寒い日は結露しています。しかし朝起きてスクリーンを空ければすぐに結露は消えます。また、元から下部を少し開けておくのも断熱性能は落ちますが結露防止には役立ちます。なお、高断熱窓の場合は結露してもすぐに蒸発してしまえばカビが生えることもあまりありませんので、一時的な結露についてはそれほど心配しなくて大丈夫です。

②空気内の水分量=湿度を高くしすぎない

こちらについては、まず、以下の湿度の供給源を経つことが大前提!
石油ファンヒーターやストーブ→これは気密の高い住宅において使うとそもそも危険なのですが、「火が燃えるもの」は基本NGです。燃焼するとH2O(水)に変換されるのは皆さんも習いましたよね?ただし、薪ストーブのように外部に煙突が付いているものは大丈夫です。
洗濯物の部屋干し→洗濯物の重さ=水ですので、その数kgの水分が空気中に発散されます。どうしても干す場合は大型の除湿機が必須!(ただしコンプレッサー式以外は電気代食う!)。
加湿器→高気密高断熱の住宅は基本的に乾燥しがちなので、特に冬に加湿器は必要となります。しかし、加湿しすぎはもちろん結露を招きます。

以上、発生源をまずを抑えることが重要です。
そのうえで湿度が上がりすぎないように、空調によりコントロールしていくことが大事ですし、場合によって除湿器等を使うことも必要になるでしょう。なお、除湿器も色々な種類がありますが、コンプレッサー式がエコの観点からオススメです。エアコンの除湿運転については、冷房運転よりも電気代かかることがあるので注意が必要です。

そして、実は住宅の結露において、もう一つ重要なことは「壁内結露」を起こさせないことです。壁内結露について詳しく書くとまたまた長くなので省きますが、壁の中で結露が起こると建物の寿命が大きく縮まります。こちらの対策としては防湿層が重要なのですが、出来上がった後はどうしようもないので、しっかり施工できる施工会社や、しっかり監理できる設計事務所に頼むしかありません。

※(一社)日本建材・住宅設備産業協会より

高気密高断熱住宅において、お勧めの管理方法

さて、ここから書くことは、高気密高断熱住宅に住んでいることが前提での話になります。

高気密高断熱住宅において結露対策のために必要なのは数値でちゃんと湿度を管理することです。基本的に隙間風等による空気流入が無いので、しっかりと状況を把握した上で空調コントロールしなければ、過乾燥につながったり、空気がよごれたりして、逆に健康を害する場合があります。

まず、今、湿度がどれくらいなのか、モニターでの管理をお勧めしています。参考に、私が自宅で管理している方法をご紹介しますね。

まずは、こちら「温湿度計 AD-5687 みはりん坊ダブルによる湿度管理。
これが他の湿度計と何が違うのかというと「絶対湿度」が図れる点です。もうそこを解説し始めるとさすがに長文になり過ぎるので省きますが、湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」というものがあります。「相対湿度」というのが一般的な湿度のこと。ただ、これについては弱点があって、気温によって湿度の感じ方が変わり、乾燥していると感じているのに意外と湿度があったり、ジメジメしている感じがするのに意外と湿度が低いということが起こります。しかし、絶対湿度の場合は人間の体感に近い数値となり、特に健康面の管理においては絶対湿度で判断していくことが効果的です。

私が尊敬している松尾設計室の松尾さんのお勧めは、この温湿度計の絶対湿度の数値で「夏は16g/㎥以下、冬は8g/㎥以上」をキープできるように心がけると快適に過ごせるそうです。そして、この数値をキープすることで、インフルエンザなどウィルスが活動しやすい湿度を避けることも可能になります。※相対湿度では管理できないんです。

ちなみに、松尾設計室松尾さん曰く、カビの発生については絶対湿度ではなく、相対湿度の方が重要とのことで、相対湿度75%以上の状態はカビが増殖しやすいそうです。基本的に絶対湿度を上記の数値で管理しておけば、相対湿度75%を超えることはないです。

温湿度計 AD-5687 みはりん坊ダブル 一番上の感想指数というのが絶対湿度のことになります

そして、もうひとつ大事なのが換気の管理です。
換気がしっかり出来ているか。それは二酸化炭素濃度で判断するのが一番簡単です。目安としては1000ppm以下に抑える感じですね。2000を超えるようだとかなり危険な状態で、健康に影響が出たり、匂ったりしてくる可能性があります。一時的に人が増えたりして1000ppmを超える分にはあまり気にしなくて大丈夫です。
ところで!
今、地球の二酸化炭素濃度はどれくらいでしょうか?
このSELFのnoteをごらんの方はもちろんおわかりですよね!?
え!?わかんない!!?そういう方は、ハカセの記事をぜひご一読を!!

二酸化炭素濃度計。こちらは色々あるので使いやすいものを。
さらに太陽光のパネルがあれば、今家で使っている電気量も把握できます!

高気密高断熱住宅において重要なのは、綺麗な空気と適度な湿度を保つためのコントロールです。しかし、空気の綺麗さや湿度についてはなかなか体験ですぐにわかるものではないため、このように計測することで初めて把握できます。ただし、毎日確認する必要はありません。なんか空気が汚れていると感じたり、乾燥またはジメジメしていると感じたときに、ふと数値で確認するとどの程度対策すべきか(窓開ける?換気扇?加湿器?除湿器?エアコン?)すぐにわかるのことが重要なのです。その家で最適な24時間換気扇の風量についても、強すぎず弱すぎない風量を二酸化炭素濃度を確認することで無駄のない調整ができると思います。そして、それは全て健康と光熱費軽減につながり、環境負荷低減となるのです。

願わくば、絶対湿度、相対湿度、室温、二酸化炭素濃度を1台で測れて、かつデータ管理できる機種の販売を強く求めます!!!

結露についてのまとめ

結露が嫌がられる根本の理由は、カビの発生につながり、健康を損なうことだと思います。また、壁内結露により建物の寿命を損なうことも重大な問題です。
結露やカビを防ぐには、まず大事なのは正しい知識です。
そして、断熱等級6以上、気密性能C値1以下、全熱交換型第1種換気を採用するようなさらに高い性能の高気密高断熱住宅においては、上記のようなコントロールをしっかり出来れば、結露によるカビとの闘いがほぼなくなります。お風呂もカビがほぼ生えません(こちらはCFファン併用をお勧め)。
カビは喘息やアトピーなど様々な病気の要因となると言われております。
結露の無い健康的な家は、心地よく、環境にもお財布にも良い家。
ぜひ実現してみてください!

↓過去3回の記事はこちら



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