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【家の在り方を考える】#01資産価値

(文:川畠 康文/SELF理事)

3月の薩摩会議【家×Transormation】に登壇させて頂いた川畠です。※その時の模様は↓こちらに書いてあります。

今回から、今だからこその「家」の在り方について書いていきたいと思います。皆さんは「家」に関してどのような価値観をお持ちでしょうか?そして、今後「家」という価値観はどうなっていくと思いますか?
今、「家」を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、主な4つをあげると

①省エネ住宅化

日本は先進国のなかでもっとも低い断熱性能の住宅が建っている、省エネ住宅においては超後進国です。しかしながら、民間を中心に高いレベルでの高気密高断熱の省エネ住宅に取り組む事業者が増えてきています。国も遅れて断熱義務化を設定しました(遅い!)。建築の高騰に加えて、エネルギー価格上昇による光熱費の高騰にそなえるためにも、高気密高断熱によるランニングコスト低減は必須であり、今後はそこにしっかりと取り組む事業者がこれから生き残っていくのではないかと思います。新築住宅であれば断熱等級6+太陽光発電によるZEH化を達成したいところです。

②家に対する価値観の変化

例えばシェアハウスとか、ADDressのような多拠点生活、多拠点SOHO、別居生活など、ライフスタイルが多種多様になり、一生かけて同じ家に住み続けローンを払い続けるということに抵抗感やリスクを感じる人が増えてきています。そのライフスタイルが気に入れば、定住しない在り方は一番リスクが少ない「家」なのかもしれません。また、高齢化社会になり老人施設やグループホーム等もライフスタイル重視の多種多様な形態が生まれてくると思います。

③建築費の高騰

ウッドショックを発端に、ウクライナ情勢によるエネルギー価格上昇、物価上昇、円安などの影響に加え、高齢化による職人さん不足など、様々な要因により建築費は2割以上高騰していると感じています。しかも、今後下がる見込みはなく、都会では不動産価格の上昇もさらに加わります。最近、建築業界の方はほぼ予算オーバーとの闘いに疲弊しております(涙)
私は間も無く新築というのは高嶺の花になり、それなりの所得の方しか新築住宅や分譲マンションを購入できなくなると考えています。一方でその方が中古市場が活性化してくるでしょうし、新築だからこそのライフスタイルに大きな価値観を感じる人のみが新築を実現できれば良いと思います。

④空き家率の増加

空き家は年々増え続け、2018年現在、全国で13.6%、鹿児島で19.0%の空き家率となっています。鹿児島は全国的にも高い空き家率を誇り、おそらく10年以内に空き家率は30%を超えます。つまり、3軒に1軒は空き家がある時代はすぐそこです。今はまだ良質な中古住宅が少ないですが、徐々に次世代省エネ基準が定められた平成11年以降ぐらいからの比較的良質な中古住宅も増え始めるでしょう。今後、建築費高騰により新築を諦めて中古住宅を購入しリノベーションして住まわれる方も急激に増えてくるのではないかと思います。新しい中古ストックビジネスのマーケットプラットフォームや、安心R住宅の普及など、より中古住宅を活用しやすい市場が整備されていくはずです。
一方で、賃貸住宅も空き室が急増してくるでしょうから、人気のない賃貸住宅は低家賃化、スラム化も進むかもしれません。

「家」にもとめるものは人ぞれぞれ

上記の4つの環境変化については、また次回以降でそれぞれ詳しく取り上げていきたいと考えております。

ところで、自分にとっての理想的な家について何を重要視しますか?
心地よさなのか、デザインなのか、家事のしやすさなのか、経済性なのか、設備なのか、色々な要素がありますが、もちろんそれは人それぞれですよね。
ただ、私は「資産価値」という要素を忘れてはならないと考えています。もちろんその資産価値は上記の要素を満たせば満たすほど上がっていきます。

家を資産にできていない日本

下記のグラフをご覧ください。黄色が新築住宅着工戸数、水色が既存住宅取引戸数となっています。左から日本、アメリカ、イギリス、フランス。

日米英の既存住宅流通市場比較 (国土交通省資料より抜粋)

住宅市場全体(新築+既存)において日本の中古住宅の取引はなんと14.7%しかありません。なお空家の数は同年820万戸もあるのに対し既存住宅取引戸数はたったの16万9千戸!いわゆる「家」が「資産」にほとんどなっていないということです。これでは、空き家率は上がっていくだけなのは明白ですよね。また、家は資産であるという意識が元々低いからこそ、何か事情により空き家になっても資産とは考えずにほったらかしにしてしまって、ますますボロボロになり、売るのも貸すのも難しくなった空家ストックがあふれています。

というわけで、「家」=「資産」であるという概念をしっかり持ち、市場価値を確保し続けることができる家をつくる、または市場価値を維持していくためにメンテナンスをしてくという意識が今の日本人に改めて必要なことだと考えます。それは賃貸住宅を供給するオーナーも持つべき価値観です。

つまり、家をつくる際には、必ず資産としての出口戦略を考えましょう。例えば、30年後に解体費用を負担する家(マイナス価値)なのか、そのまま1000万円で売れる家なのか、その差はとてつもなく大きいですよね。
他にも、今住んでいる実家とかも資産として改めて考えてみて、将来の出口戦略をどうするかを今のうちから考えておくべきです。

次回は、資産価値にも直結する省エネ住宅について書きたいと思います。



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