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【家の在り方を考える】#02省エネ住宅

(文:川畠 康文/SELF 理事)

月一連載【家の在り方を考える】の第2回は省エネ住宅について書きたいと思います。↓第1回目はこちら。

これから家を建てる人、または断熱改修をしたい人からよく聞かれるのが「断熱をちゃんとして快適に住みたいけど、どこに頼んでよいのか、どれくらいの性能にするのが良いのか、判断ができない」ということです。今回はそのヒントになることを書ければと思います。

まず大前提。高気密高断熱住宅において〇〇工法が良いとか、〇〇の断熱材が良いとか悪いとか、様々な情報がありふれていて、家をつくる人からすると何が正解がよくわからないと思います。答えとしては、何が正解ということはなく、正しい設計と正しい施工が行われればどんな工法でも断熱材でも全く問題はありません。しかしながら、間違った断熱設計(そもそも計算してない)となっていたり、施工不良となっていたりする事例が本当に多いことが大きな問題となっています。

そして、大変残念ながら温暖地域においては省エネ住宅に対して工務店も設計者も間違った知識を持っている方が非常に多く、特に鹿児島においては全国のなかでもレベルが低いと感じています。さらには世界の先進国の中で日本は省エネ住宅のレベルも普及率もダントツで遅れております。

日本の省エネ基準が世界標準からかなり遅れているのがわかります。
鹿児島は7地域。温暖な地域ほど省エネ住宅が普及していません。
ヒートショックの死亡増加率です。温暖なはずの鹿児島はワースト6位。
ヒートショックは断熱性能と深い関係性があります。

というような状況のなか、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、住宅・建築物の省エネ対策を強力に進めるための「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が令和4年6月17日に公布されました。

この法律で大きい変革は
「全ての新築住宅に省エネ基準適合を義務付け」
「販売・賃貸時における省エネ性能表示の推進」

という2点だと思います。

こちらについては、経過措置があるので今すぐに対応しないいけない義務はないのですが、この2点が当たり前になる世の中になるのがわかっているのに、省エネ性能を明示(ソフトによる断熱計算が必要)できない家をつくることは絶対辞めた方がよいですね!万が一、将来売ったり貸したりするときに省エネ性能が価格に反映される時代になるということです。

というわけで、最初の問いに関する答えは少なくとも「断熱計算がちゃんとできる工務店や設計事務所に頼む」ということです。なお、改修においても断熱計算のスキルがなければ効果的な提案や断熱改修は出来ないと思います。※実はできない工務店、設計者は驚くほど多いのが現実

さて、実は今度義務化される新築住宅の断熱基準は等級4(鹿児島のある地域7においてはUA値0.87)という非常に低い基準になってしまっています。私個人の意見として、これからの時代と財産価値のことを考えると等級4はコスパも悪い性能ですので、せめて等級5、ZEH基準(地域7においてはUA値0.60)は確保したいところであり、出来れば等級6(地域7においてはUA値0.46)をお勧めします。すぐに光熱費と健康便益で元は取れますよ。
※健康便益とは健康維持がもたらす間接的便益のことで、血圧が下がったり、寿命が延びたりすることでもたらされる利益のことです。省エネがもたらす健康については改めて詳しく触れる機会をつくりたいと思います。

地域によって、同じ断熱基準でも性能値が異なります。
最近、等級6(HEAT20 G2)と等級7(HEAT20 G3)が新設されました。

なお、木造住宅の改修の場合も、ガッツリリノベをするときには新築並みの断熱性能を確保した方が良いと思います。

どうしても、断熱に改修コストをかけられない場合は
・壁や天井、床の隙間風を無くす(気密テープ、気密シート、合板等施工)
・畳がある場合は畳下にビニールシートと数mm程度でも断熱材敷き込む
・天井裏に入れる場合は天井上にグラスウールを敷き込む(16K155㎜程度)
ぐらいはDIYでもできないことないのでオススメです。
できることであれば
・既存窓の内側に内窓(ペアガラスタイプ)を付ける。
・床下断熱材施工
まで出来ると良いし
・壁断熱材施工
をする場合には壁を一旦剥がすことも多いので耐震補強も一緒にやりたいところですね。そこまで来ると、断熱計算と耐震もセットになるでしょう。
また、しっかりとした改修やリノベーションであれば安心R住宅や適合R住宅の認定を取ることにより、安心感や財産価値の向上にもつながります。

まだまだ、工務店や設計者も断熱に関するスキルが追い付いていない方も多いし、鹿児島においては行政担当者も知識が追い付いていないと感じています。私達はSELFの仲間を通じて、この鹿児島においても高性能な住まいを普及させていくための啓蒙活動を拡げていきたいと考えております。


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