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店舗ビジネスを2ヶ月で黒字化させるためにやった施策と成功要因

2022年10月~2022年12月まで短期間だけSEOとWebマーケティングのお手伝いをしました。
会員制のスポーツ関連サービスを提供しており店舗によりサービス提供をしています。
フランチャイズ化はしておらず、1店舗のみの展開です。

当初はSEOのご相談だったのですが、商圏が限られるサービスであった事と即効性のある集客により地域内で認知を広げ、施設見学や初回サービスの体験をしてもらった方が良いと感じましたので、広告をメインに集客を行いました。

結果として、2022年11月に施設をオープンし2022年12月には損益分岐点を超えて黒字化を達成しています。
次の月には会員数が上限になったため新規募集の停止となりました。

今回はその要因とやったこと、失敗したこと、やろうと思ったけれどもやらなかったことについて解説します。

店舗経営をしていたり、これからオープンする方の参考になれば幸いです。

店舗に関する概要

  • 会員向けのスポーツビジネス

  • 店舗自体は無人でサービス提供が可能

  • 1つの予約枠で1会員グループ(3名まで)のみが利用可能で完全貸切

  • 会員種別は6種類として月額8000円台~30000万円台までの8パターン

  • 30代後半以上の主に男性がターゲット

  • ギア類は無料貸出をしており手ぶらで利用可能

  • 室内スペースは広めなのでビジネス打ち合わせ利用も可能

  • 店舗があるのは人口50万人ほどの中核市

  • 駅からはあまり近くない

  • 周囲のロケーション的にスポーツ施設があるようには見えない

ざっと箇条書きにすると上記のような状況です。
類似する形態のサービスは全国に多くあります。

施策として行ったこと

ここからはオープン前に行ったことからオープン後の施策まで解説します。

ティザーサイトやSNSでの告知

オープン2ヶ月以上前からSNSアカウントの開設をしてもらいました。
また公式サイトのドメインを取得し、この段階でサイトのワイヤーフレームを完成させています。

ティザーサイトやSNSでは完成までの様子や内装、施設周辺についての投稿を行ってもらっています。

SNSに関しては地域名+業種名のハッシュタグをつけて投稿するなどして、SNSで検索された際に表示される可能性も考慮しています。

Googleビジネスプロフィールの作成

Googleビジネスプロフィールは開業日を設定すると開業の90日前から表示されるようになります。

日付を入力してビジネスのオーナー確認を行うと、開業日の 90 日前から Google にプロフィールが表示されるようになります。

引用:開業日を追加する

開業日は決まっていたので設定し、住所や電話番号、サービス詳細については入力しておきました。
オープン前である事を画像などで説明し、ユーザーが現地へ来たけれども施設オープンしていない、という状況にだけは注意しました。

Googleビジネスプロフィールはオープン後にジワジワ効いています。
こういう点は早めに作成し適度に作り込んで管理しておいた方が良いです。

SNSでの投稿内容について

今回サポートした店舗については私の居住地と離れていたので現地でのサポートが難しい状況でした。
InstagramやTwitter、Facebookのアカウント開設はしたものの、写真を撮影して投稿してもらうのは事業主やスタッフになりそうでした。

ティザーを作って色々な写真や投稿をしてもらい慣れてもらう目的もあったので、色々な写真を撮影し投稿してもらって、事後に反応を見ながらアドバイスする、という運用スタイルになっていました。

オープン後も日課のように投稿してくれたりコメントへの返信をしてくれるようになったので慣れてもらえて良かった、と思っています。

公式サイトの作成

公式サイトを施設オープン前に完成させました。
私のサポート期間が3ヶ月と決まっていたので、構成は非常にシンプルなものにして管理しやすく、複雑ではないものにしています。

構成は

  • サイトトップページ

  • 会社概要

  • 利用規約

  • プライバシーポリシー

  • 特定商取引法

  • お問い合わせ

  • 利用方法関連や予約方法などの案内

  • 施設利用の流れ

としています。

サイトトップページに利用者の声、SNSの投稿の埋込、最新情報などが表示されるようにしています。

オープン前にティザーサイトとして利用していた時には、工事風景や設備が入った後に実際に設備利用風景をスタッフに体験してもらっているところをアップしています。

施設はスタッフが無人でも稼働するように、hacomonoと契約し、ネット上予約や施設利用が完結するようにしました。

今現在もhacomonoで稼働しておりますが、無料体験から会員管理まで全くトラブルはありません。

チラシ投函による告知用のチラシ内容決定

A4のカラーの縦型のチラシを作成しました。
ニューオープンであることが分かることや施設の特徴や強み、料金や利用シーンなどを安っぽすぎないような印象で作成しています。

早期入会特典や会員数に制限があること、各種SNSやGoogleビジネスプロフィール、公式サイトへのQRコードも掲載しました。

オープン1週間前に近隣住宅に数万枚の配布を行いました。
配布後、1週間~3週間ほどは指名検索が増えるだろう、という狙いもありました。

広告アカウントの開設

メインの集客手段はネットになりそうでしたので広告アカウントの開設を行いました。
広告予算は多くても月額10万円くらいでしたので、出稿するプラットフォームは1つに絞りました。

今回の店舗ではGoogleのみにしています。
チューニングして詳細な調整を行って、ようやく集客が成立する状態で運営を続けることはできないので、スマートアシストキャンペーンによるアカウントの設定をしました。

負荷の少ない運用で成立するように他の部分で数字を合わせなければいけません。

店舗オープン1週間前のチラシ投函に合わせて広告配信をスタートしています。

広告に関しては、CPA7,000円から徐々に下がり最終的に5,000円を切るくらいになりました。
最も低い月額プランで8,000円以上ですので1ヶ月以上の継続利用で黒字になります。

LTVはまだオープンしたばかりで分からないので、少しでも低いCPAでの獲得が可能なように広告の訴求やLPの内容は狭く深いものにしています。

店舗のプレオープン期間を2週間ほど設定し関係者などをご招待

店舗オープンの2週間ほど前にプレオープンパーティを行い、そこで関係者や知人友人をご招待、実際に施設を体験してもらいました。

SNSへの投稿をしてもらえるだろう、といった目論見もあり(笑)、実際にしてくれていました。
投稿を促した訳ではありませんが嬉しいものですw

そこから2週間は新規会員獲得のために施設体験の受付し、施設に興味がある方の予約と施設説明を行う期間としました。

ここまでが店舗の本番オープンまでに行ったことです。

オープン後はLPの改善と広告文の改善がメイン

スマートアシストキャンペーンは非常に優秀で、学習終了前からそこそこの数字を出してくれていました。
特にマップ、ディスプレイに関してはかなり良い反応が出ておりましたので、広告文の別パターンをちょっと追加してみたりする程度にしています。

LPに関しては、(当初の予想より)体験申込の申し込み率があまり高くなかったので詳細な説明の追加を行いました。

ヒートマップを見て、読まれていない要素の入れ替えや比較表の追加などを行い数字の変化を追っていきました。

体験後の本申込み率の差の調整

Webで計測できるCVは体験申し込みまでです。
契約に至るためには体験→本申込みが必要です。

定期的に体験申込と本申込みの状況については確認していたのですが、スタッフによって本申込み率に大きな乖離がありました。

  • 対応したお客様の90%以上が本申込するスタッフ

  • 対応したお客様の10%以下が本申込するスタッフ

のような状況です。

チャットで体験と本申込みの数字のみ定期的に聞いていたので、この本申し込み率の乖離に気づいたのは、半月ほど経過した後でした。

この段階でようやく体験申込者への対応方法をマニュアル化しました。

これから店舗ビジネスを行う方は、気をつけてください。
本申込率が高いスタッフの接客スキルや対応について、マニュアル化ができるところは行っておいた方が良いです。

簡易的なマニュアルとレクチャーを行ったことで本申込率は安定化し、ここから一気に入会者が増えました。

上手くいかなかった施策

色々と行ってきましたが、すべての施策がうまくいった訳ではありません。

すべてを完璧に行えないので施策ごとに取捨選択して行っていますが、結果としてそれがボトルネックを作ることにもなってしまいました。
それらについてもまとめておきます。

マニュアル化の遅れ

スタッフへのマニュアル化を当初から実施しなかった理由は「オーナーがメインで接客するみたいだし大丈夫だろ」と思っていたからです。

これは結果的に失敗でした。

オーナーが接客したお客さまは100%近い申込み率でしたが、スタッフが接客した場合と大幅な申込みの乖離になっていました。
こういった知見は早い段階でマニュアル化した方が良かったと思っています。

競合他社につられたLPの改善と低い顧客解像度

LPとhacomonoの接続が良くないという仮説があったので、体験予約ページへ進む前に、hacomono利用方法のマニュアルページを設けるようにしました。

これが大失敗でした。
導線が悪くなってしまい、申し込み率が大きく下がりました。
というより以下の改善もセットで逆効果となり申込みがゼロになりました。

1週間ほど様子を見ましたが、元に戻す結果となりました。

ターゲットとなる顧客層は「ネットに疎い中高年だろう」という雑な想像をしていたため、サイトが使いにくいと感じていそう、という思い込みをしてかなり丁寧な使い方ページを作成しました。

実際には申込みに戸惑う方はほぼおらず、息子にやってもらうといったこともあった様子で問題なかった様でした。

それ以外に、体験してくれた方の写真などのLPへ掲載していたのですが、それを削除しました。
代わりに他社LPを参考にして施設の特徴や他サービスとの比較表を掲載してみましたが、こちらもCVを大きく引き下げました。

利用シーンや、情緒的な価値を伝えられるような表現を見せた方が体験申込みにつながっていました。

この点は大きく反省しています。

思い込みと競合他社のみを参考にした改善を行い結果として数字の悪化を招いてしまいました。
中高年はネットに疎い、といった雑な顧客理解をしようとしたことも失敗の一因となっています。

競合他社よりも目の前のお客様の理解の方が遥かに売上に寄与すると改めて思い知らされました。
考えなしに競合の真似をしても失敗確率を上げるだけです。

SNSや広告、Search Consoleなど各種の状況
色々とありましたが12月末で無事にプロジェクトも終了し2023年1月現在もトラブルなく施設運営を続けてくれています。

SNS各種の数字

InstagramもTwitterもフォロー数は80名くらいです。
あまり多くありません。

全然公開できないInstagramの数字
全然公開できないTwitterの数字

ただ、オープン前まではこれくらいの数字でも全く問題なく会員や興味のある方とのコミュニケーションの起点となってくれました。

メインは既存会員さんとのやり取りは、会員の方からの投稿によるUGCの創出です。
あとはサービスに興味のある方とのコミュニケーションや地場の企業さんとの繋がりやコラボなどのきっかけになってくれたらOKです。

フォロワー数を追いにいっておかしくなったり、運用負荷が増えてしまっては本末転倒ですからね。

Google広告

月額5万円以下の運用でスマートアシストキャンペーンを作成しましたが、オープン1ヶ月で黒字化を達成し、次の月には新規会員申込みを停止するような状況となりました。

チラシと広告がメインの集客経路になりましたが、今回の事例では十分な成果を出してくれました。

さすがに見せられる数字が少ないGoogle広告

自然検索

一応右肩上がりのグラフにはなっています。

Search Consoleはグラフの動きで雰囲気を感じ取って頂ければ

一般名詞+地域名で1ページ目マップだと3位以内くらいには表示されるような状況にはなりました。
広告を止めても、それなりに集客には繋がっているので、この状態まで持っていけたら十分かな、と思います。

ほぼ欲しいキーワードで順位がついていて、キーワードによっては上位表示しています。
店舗ビジネスの場合は商圏周りで評価されていれば自然検索からの流入としては十分です。

LP=サイトトップページでしたので、広告でも自然検索にも大いに役立ってくれました。

指名検索も増えており、チラシ配布のタイミングでスパイクができています。
実はPRタイムスでプレスリリースも配信しており、そのページも指名検索で上位に出して自社で発信した情報で上位を埋め尽くす、といった事も考えていました。
こちらは成功しています。

※書き忘れていましたがオープン数日前にプレスリリースの配信をしています

SEOについては本当に少しだけしか行っていません。
オープン後に時間が経過することで成果が出やすくなるようにした事と、欲しいキーワードで評価されやすいように文章を調整したくらいです。

Googleビジネスプロフィールの管理と他メディアへの掲載や取材がされてくれたら、このサイトに関してはSEOはあまり難しいことをする必要はありません。

成功の要因は何なのか?

1ヶ月ちょっとで黒字化を達成し無事に終了しました。
成功要因は何だったのでしょうか?

個人的にこれが大きかったと感じる要素について書き出してみます。

固定費の低さ

人件費や家賃が低いこともあり黒字化ラインが高くありませんでした。
店舗がある場所は、大都市圏でもないですし駅から近くもありません。
無人で運営可能なサービスなので固定費が低く抑えられていました。

競合他社が近隣にいない

駅チカや繁華街は競合他社がいそうですが「何でここに?」みたいな場所に店舗を構えたこともあり、競合他社はありませんでした。
微妙に競合するサービスはありましたが、うまく棲み分けされています。

かなり緊密に数字や状況を共有しながら進められた

特にWebでの集客施策についてはかなりやりやすかったです。
ほぼ好きにやらせてもらえていましたし、店舗内装工事の遅れ、やって欲しいことへの対応などは本当に早く対応してくれました。

遠隔でも緊密な連携と素早いレスポンスがあったので短時間でサクサク施策が形になっていきました。
この点は本当に感謝しています。

ティザーから情報発信を経験してもらえた

期間制限のあるプロジェクトでしたので、私が離れても継続して運用してもらう必要があります。
そういった点も考慮しシンプルに、だけど何かしらの発信は継続してもらえる体制は必要でした。

ティザーから楽しんで情報発信してくれたお陰でユーザーとのコミュニケーションは上手に行ってくれています。

徐々にSNSも盛り上がってくれたら嬉しいです。
いつか誰かとコラボとかしているのが見られるのを楽しみにしています。

物凄い速さでマニュアル化してくれた

最終CVを担うスタッフの方々へ簡易的なマニュアルの作成とその浸透までを行ってくれました。
店舗運営やスタッフワークは、さすがはプロという感じでした。
こういった部分に甘えられたのも成功の要因です。

店舗運営やスタッフワークなどは、やはり店舗運営のプロの方が遥かに上手です。
そういう点について短期間で形にしていただけたのは大きな要因でした。

ティザーの段階から数字を見ていたので小さなテストを繰り返せた

少ないながらも投稿した情報への反応が得られたことで、ユーザーの好みや傾向を把握することができました。

施設の写真や体験している風景、設備や動画、比較表や予約状況など、反応がありそうなものを色々と試せたのは大きかったです。

施策として行ったことの殆どは店舗オープン前の準備段階でやっていました。
ここでの手数はそのままテストの数でした。

テストの繰り返しによって勝ち筋や申込みまでの仮説を多く持ち検証できたのは非常に大きかったです。
広告スタート時で、ほぼ訴求内容の変更が不要なほどでした。

そもそもサービスが良かった

体験した人の多くが気に入ってくれて申込みをするほど良いサービスでした。
私も近所に同じ施設があれば入会したいくらいです。

良いサービスを提供している、というのは最大の強みになりました。
Webもマーケティングもそれを伝えるための手段でしかありません。

いろいろな要因があり成功できた

店舗運営自体は今後も続きますが、1ヶ月での黒字化達成、2ヶ月で会員上限に達し申込み停止という状態になりました。
これは大きな成果だと思っています。

成功も失敗もやったことも感じたことも、書ける範囲で出してみました。
店舗ビジネスなどを営まれていたり、これから経営される予定の方の参考になれば幸いです。

「何でこれやってないの?」「ここのやり方雑じゃない?」「もっと最適なできそうだけど」と思われたマーケターやプロフェッショナルの方もいらっしゃるかも知れません。

このプロジェクトは限られたリソースの中で、Webやマーケティングの専門家がいなくても運営可能な状態を作る、というのがゴールです。
取捨選択の結果、より良い状況を追求せずに”あえて”やめたています。

これ以上ないほどの最適化をすることも、重箱の隅を突くような改善を繰り返すことも顧客が求めることではありません。

彼らのビジネスが継続できるように運用負荷も考えてマーケティングの構築をするのがプロとして私に与えられたミッションでした。

クライアントはSEOやマーケティングのためにビジネスをしている訳ではありません。
あくまでも事業のためにマーケティングが存在する、という形を目指しました。

今回の施策の全ては大きなコストもかかっていませんし、技術的に高度なものは活用していません。

ぜひとも真似できそうなところや私が失敗した注意点などを、お役立てください!


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