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絵本の日に

毎年11月30日は「絵本の日」だそうです。初めて知りました。大好きな作品を振り返る機会を与えてくれる、とても嬉しい記念日です。

自分の小さな絵本コレクションは、恩人がプレゼントしてくれた2冊の本から始まりました。その2冊は、勤務先が決まって、社会人として生活を始めようとしていた時期に届きました。ページをめくった瞬間、自分が子どもの時、絵本作家になりたいと思っていた頃があったのを思い出しました。

内容自体もある意味で衝撃的で、物語の奥行きといい、絵の芸術性といい、その時点までに自分の中にあった「絵本」の概念を更新するような作品でした。しかしこの絵本が届いたタイミングが何より面白かったです(笑)恩人の意図とは別に、本人も知るはずのなかった思い出が掘り起こされたからです。

その2冊がきっかけで次々と色々な作品に出会いました。中には、宝物のような絵本もあります。以前『ライフ』について書いたことがあります。大好きな『きりのなかの はりねずみ』についても一度言及しました。

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「絵本の日」に取り上げるなら何が相応しいかと考えた時、真っ先に思い浮かんだのは『梨の子 ペリーナ』です。この本についてどこかで話す機会を待っていました(笑)

書店で、表紙の絵に惹かれて手に取って開いてみると、絵の美しさに魅了され、その場で購入しました。絵本作家の酒井駒子さんの作風に初めて出会ったきっかけとなりました。

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子どもが登場する物語でもすべての絵は黒い背景に描かれています。闇を背景にしつつも不思議な明るさを放つ絵...  どこか「人間」や「生命」と似通うところがあると感じました。

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物語も、少し変わった昔話です。宝物を探す旅に出る女の子ペリーナは、様々な試練を乗り越えて宝の入った箱を宮殿に持ち帰ります。しかし王さまに宝箱を渡す寸前、箱の内容を知りたくてたまらない好奇心に負けて箱を開いてしまい、そこから宝が逃げ出してしまいます。幸いには、天の助けによって、ペリーナは逃げ出した宝を改めて見つけて王さまに渡します。そして物語はめでたしめでたしで終わります。

物語が完結する直前に意外な事件が起きて、結局どうなるかというサスペンス状態にさせてくれるような展開は、童話ではあまり見かけないような要素でした。

どんなに良心な英雄でも意外なところで失敗することがあります。しかし宇宙は再びチャンスをくれるから、希望を諦めずにできることはやりましょう、というようなメッセージが込めてあるようです。

『梨の子 ペリーナ』を読んで、人間として励まされたような気がしました。

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