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リフィルケース問題、ついに解決

五感で楽しむ金属製ケースを長く利用してもらう仕組みの一つとして、練り香水部分は取り外し可能で、香水がなくなったら新しいものに交換できる仕様を目指していた。
そのためには、交換用の練り香水を別途用意する必要がある。保存が効いて、誰でも簡単に蓋を閉められて、コストが抑えられる方法、という3重の課題があったのだが神ならぬ妻のひらめきに助けられ「化粧品のリフィルケース」にたどり着いた(サムネイル参照)。

前述の3重課題をクリアしたと思っていたところ、新たに二つの課題が持ち上がった。一つは「リフィルケースへの練り香水充填方法」、もう一つは「磁性」である。

まず一つ目の充填方法について。
図1が通常ファンデーションなどの化粧品が充填される金皿と呼ばれるものであるが、この金皿に練り香水を充填するのが3重課題解決のアイデアであった。香水OEMの担当者もお墨付きをくれて安心していたのだが、最終確認として金皿の図面を送ったところ充填工程からNGが出た。金皿が浅すぎる、というのだ。話を進めていた香水OEMは練り香水の充填を機械で行っている。その機会が金皿をハンドリングするのに深さ方向に一定の長さが必要なのだが、残念ながら今回たどり着いた金皿は浅すぎたのだ。別案として厚みのある化粧品のリフィルケースを探したのだが、金属製ケースを片手でもて遊べるサイズで抑えられて機械充填に対応可能な絶妙な深さを持つ既存ケースを見つける事ができなかった。

図1:香水充填用の金皿。この厚みが鍵になる

香水OEMの担当者の方はプロジェクト発足当初から、香水知識のない私の質問や要望にも丁寧に答えてくださり、多くのことを教えてくださった。間違いなくこのプロジェクトの功労者。しかし同OEMでは金皿への充填が対応できないためお別れをせざるを得なくなった。

気を取り直して新たな香水OEMを探した。何社かにふられながらたどり着いた新たなOEM。同社では機械は使うものの小ロットに対しては人間が作業を一部行う半自動化工程をとっているとのこと。金皿の図面を送って確認してもらったところ、なんと問題ない!との回答。これはとても嬉しかった。

残すは「磁性」である。
既製品で存在する金皿は全てプラスチック。金皿に合わせて香水金属ケースの設計を調整したのだが(図2)、同金属ケースには裏表がある。練り香水が露出している面を地面方向に向けると中の金皿が脱落してしまう。片手でもて遊ぶのに、金皿の脱落を気にしないといけないなんて誰も使いたくない。金属ケースに物理的なギミックをつけて中の金皿が脱落しないようにすることも考えたが、部品が増える=金型が増える=コスト増になるので却下。磁石の力を借りることにした。香水金属ケース本体の金皿と接する部分に磁石を仕込んで、金皿に磁性を与えれば磁力で脱落を防ぐ事ができる。

図2:何らかの策を講じないと中の金皿が脱落してしまう

既存のプラスチック金皿に磁性を持たせる方法として考えたのが「磁石テープ」と「磁性塗料」の2つ。前者は磁性を持ったシールを金皿の底面と同じサイズに切って貼る方法。こちらは安価で作業も簡単。ただ格好良くないので保留。二つ目の塗料案は、鉄が含まれた塗料を塗布して対象が磁石に対応できるようにするもの。学校の黒板に使われるようだ。アイデアとしては面白いのだけれど、作業にムラが出る事が予想される。品質管理が難しいので却下。
金属加工パートナー企業といろいろアイデアを出し合っていたところ、「うちにある金型でこの金皿つくれそうです!」と奇跡的な報告があったのだ。つまり新たな金型コストをかける事なく磁性材料を用いてリフィルケースに合致する金皿を作れるとのこと。これはありがたい!
早速試作を金属加工パートナー企業にお願いし、試作品を新たな香水OEMパートナーに送って充填試験を行ってもらった。結果を待つ日々の長かったこと!
図3が充填完了した金皿。もちろん磁性材料で出来ている。リフィルケースに収まってちゃんと蓋もできて保存もバッチリ(図4)。化粧品として販売するため認可を得た香水OEMが合格と言わなければ商品化出来ないのだが、これに関してはお墨付きを得た。ついに克服できたのだ。

図3:磁性材料で作った金皿に練り香水が充填されたところ
図4:詰替用練り香水が完成

このリフィルケース問題に取り組む中で、何度も気持ちが沈んで辞めたいと思ったこともありました。特に日常にないと困る必需品ではないし、誰かが買ってくれるかもわからない…。
しかし、課題はハッキリしている。もう少しだけやってみよう、アイデアをひねってみよう。そうやって続けて、周りの人に色々助けられて何とか解決できた。ありがたいありがたい。

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