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簡単で安価という命題。暗礁に乗り上げた

五感に訴える金属製練り香水ケース試作の第一弾の目的はコンセプトの要となる「音がなるギミック」の実現性確認であった。ギミックの確認を制作パートナーに進めてもらう間、私はケースとともに供する練り香水についてOEMと話を進めていたのだが、ユーザーが利用を開始するまで練り香水の品質を保って「保存可能」でかつ、その処置が「香水OEM工場で作業可能」であるという2要件を満たさないといけないことが明らかになった。

サムネイル及び図1をご覧いただきたい。どちらも第一試作の途中経過の写真である。サムネイルであれば一番右、図1では上段に円柱状の部品が見えるかと思いますが、この部分に写真には写っていない詰替用ケースに充填された練り香水をはめこんで使うことを想定していた。

図1:写真上部の円形部分に練り香水充填用の内ケースを嵌める想定であった

当初の私は音がなるギミックを含め本体ケースにばかりを意識しており、この詰替用ケースには考えが至っていなかった。なんとなく詰替用ケースを提供すれば香水OEMでうまいことシーリングなりしてくれると思っていたのだ。まったく恥ずかしい限りである。
練り香水の表面を空気の接触から防ぐための方法として考えたのは「物理的な機構」と「シール等で覆う」の2種類。

まず物理的な機構、というのは既存の練り香水が多く採用している方式で、ハンドクリームのニベアやペットボトルの蓋のように、スクリューキャップになっているものを指している。この手法は香水OEMの現場で簡単に誰でも作業ができ、密閉も確実である。よし、これで解決!といけばよかったのだが、サイズに問題があった。スクリューキャップのタイプを採用するにあたり、既存のスクリューキャップ式のもので10ml程度の容量を探したのだが、残念なことに手頃なものがなかった。どれだけ小さなものであったとしても、それを嵌め込むと本体の金属製ケースが想定よりも大きくなってしまい片手でもてあそぶのは困難になる。スクリューキャップたらしめているねじ切りの部分が邪魔なのである。
同じく物理的な機構としてミントなどの清涼剤に使われているスライド式も検討したのだが、こちらもサイズとして手頃のものがない。さらにいうならば物理的機構の両方式のものならば、そのまま使えばよく、あえて別のケースを作る意味は?となってしまった。
サイズがないなら自作するか?と思ったが金型の制作含め開発費が嵩み商品に跳ね返ってしまうため却下。

次案として詰替用ケースの上部をフィルム状の何かで覆う事ができないか?と考えた。まず頭に浮かんだのは大学時代に研究室で使っていたパラフィルム。薄いフィルムだが伸縮性が大きく、どのような形にも対応でき、密閉性高く揮発性のものに蓋をするのに非常に重宝した。しかし簡単な作業とはいえ密閉の成否がある程度技量に左右されうることから香水OEMでの作業性に難があるとして却下。
ヨーグルトやヤクルトなどの蓋に使われているようなアルミの蓋を圧着する方法はどうだろうか。決まった形のものを貼るだけなので作業者による品質のブレは少ないのでは?と思ったのだが、圧着用の機器をこちらから香水OEMの現場に提供する必要があるためこちらも断念した。
サイスが一定であるのなら、普通のシールはどうだろうか?安価で大量に作成できるのではないか。シールのOEMに問い合わせして教えてもらったのだが、食品用でないシールは密閉性という観点で試験されていないため、OEM側から保証ができないとのこと。仮に保証しないことに合意するのであれば提供は可能とのことであった。普通のシールの案を香水OEMに投げてみたのだが、前例がないことから香水OEMサイドで却下となった。

上記のように物理的な機構とシール等で覆うという二つのアプローチで、香水OEM現場で作業が容易でかつ練り香水の品質を保ちうる方法を検討したのだがいずれも難点が見つかり、プロジェクト全体が暗礁に乗り上げた。

アイデアが煮詰まったおり、ふと妻に話をしてみたところ、一気に事態は好転する。次回はそれについて書きたいと思います。

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